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ダイヤモンドバッファの解説

ブログで記事が散らばっていたので、下記にまとめました。
回路図が重複していますのは、そのためです。


ダイヤモンドバッファの駆動力

巷で流行っているヘッドホンアンプの出力バッファに、ちょくちょくダイヤモンドバッファと呼ばれるバッファ回路がつかわれます。

一見すると、最終段のコンプリメンタリ出力のバイアス(Vbe電圧)生成とダーリントン接続による電流増幅の増大が一度に可能になる、すばらしい回路に思えます。

Diamond_1

実際、ダーリントン接続の一種として教科書的なものでも挙げられていたりします。
ダーリントン接続というのは、一段目のエミッター出力が次段のベースに入って、2つのトランジスタがあたかも増幅率の上がった1つのトランジスタとして動作する回路のことを指すらしいです。

図のQ1、Q2のエミッタに入れてある100Ωは、無くても、ダイオードに置き換わっていても、回路の動作としては一緒と考えます。 バイアス電圧の作り方がちょっと違っているだけです。

トランジスタひとつひとつに注目すると、コレクタ接地回路であるこが、すぐに判ると思います。 
接地というのは、GNDや電源のことを指します。 コレクタがVBへ直結しているので、コレクタ接地です。(エミッタ接地とベース接地では、接地部に抵抗を入れたりしますので、ぱっと見分かりにくいこともあります。)

バッファなどに使うコレクタ接地は、エミッタフォロアとも言います。 

 

■エミッタフォロア回路の特徴

 

  ・入力インピーダンスが高い。
  ・出力インピーダンスが低い。
  ・電圧増幅率はほぼ1倍。

ここで、1段目の出力電流を、2段目のベースへ流し込むことが出来れば、電流増幅率は1段目hfe×2段目hfeとなるのですが、残念なことに、PNPとNPNの極性の違いで、2段目のベースに流しこむ電流は、1段目の負荷抵抗の1.5kΩの抵抗からの供給となっています。

Diamond_1_1_3

とても大雑把に言いますと、1段目は単にレベルシフタとしてしか機能していない。
2段目をドライブしているのはアクティブ素子というより、単なる抵抗(パッシブ素子)に近い状態。

ダイヤモンドバッファの駆動力は、2段目のトランジスタのhfeと、1段目の負荷抵抗の値で決まってしまいそうです。
ヘッドホンアンプ用で言えばコレクタ電流が500mA以上で、なるべくhfeの大きい種類ランクを選べばよいということになります。

もう少し、追ってみましょう。

■1段目
1段目の負荷抵抗は、小さくし過ぎると1段目の負荷が重くなり直線性が悪くなってしまいます。 ですので、抵抗値は高いほうが良いでしょう。 そうすることで、入力インピーダンスも高くできて、初段差動回路での歪み発生を最小限に抑えることができます。 

■2段目
2段目にとって1段目の負荷抵抗値はIb(ベース電流)の供給元であります。 
抵抗値が高いと十分なIbがとれず、出力に非直線成分が出てしまいます。 つまり2段目にとっては、抵抗値は小さいほうがよいという事になります。

■総合的にみると
1段目の負荷抵抗は、高すぎても低すぎても良くない。 バランスが大切ということになります。 最良の妥協点を見つける作業となります。 ちなみに、負荷抵抗を定電流回路に置き換えて、十分な電流と高いインピーダンスを両立することも可能ですが、有効な振幅電圧が減ってしまいますので、今回のような12V単一電源には向きません。

以上をまとめると、ダイヤモンドバッファの駆動力は、2段ダーリントンとしての駆動力はなく、1段コンプリメンタリバッファと同等の駆動力といえます。
ただし、入力インピーダンスは、相当に高く、前段に与える負荷はとても軽いです。 

 


ダイヤモンドバッファの怪

ヘッドホン用のアンプでは、時折使われることがあるダイヤモンドバッファですが、スピーカーをドライブするアンプの出力段ではほとんど使われません。 

その理由は何でしょうか? 

先日、解析したように出力インピーダンスは十分に低い値となりますが、その条件は限定的です。 実は、出力の振幅が小さい時にはインピーダンスが低く、振幅が大きくなるにしたがってインピーダンスが上がっていくのです。 

Diamond_1_1_2 

(出力電流が増える)振幅が大くなったときこそ、出力インピーダンスが低い必要がある
のですが、ダイヤモンドバッファはそこが弱いのです。 

それは、最終段トランジスタのベース電流(Ib)への供給がパッシブ(単なる抵抗)だからです。 この抵抗にはオームの法則が成り立ち、出力電圧が高くなると、Ibへの供給元電流が減ってしまうのです。

上の回路図の1.5kΩの抵抗に流れる電流を計算してみましょう。

■振幅が無いとき、または小さい時  
  ±VBが6Vのとき、6-0.6=5.4vが1.5kΩにかかっています。(100Ωは無視しています)

   電流 = 5.4÷1.5k = 3.6mA

■2Vrms振幅があった場合
 振幅電圧 2×1.41= 2.82V ほど電圧が上昇しますから、その瞬間は

   電流 = (5.4-2.82)÷1.5k =1.72mA

これだけで、電流が約半分になっています。   
ですが、バッファの負荷に流れる電流は、電圧増加に比例して多く必要なのです。
hfeが100ですと、17.2mAしか電流が流せない状態となってしまいます。

負荷抵抗が30Ωの場合、振幅が2.82Vの瞬間は
   
   電流 = 2.82 ÷30 = 94mA    も流れる計算ですが、上記の回路では電流制限がかかり流せません。

hfeが200なら34mA、hfeが400なら68mA 、 hfeが800なら137mAまで流せます。

ダイヤモンドバッファの出力トランジスタはhfe命という理由は、このことから判ります。

ヘッドホンアンプの出力は0.5~1Vrmsですから、悪影響はそれほと顕著ではなく、一般に問題ないレベルに仕上げることができるようです。 

パッシブ抵抗から定電流回路にしたとしても、定電流回路が十分に定電流を流すには、その回路の両端電圧が最低でも2~3V程度必要になるので、VB、すなわち電源電圧を高く設定する必要が出てきます。

 


ダイヤモンドバッファの解析

数値的なものは、なるべく書かないようにしてきたのですが、ちゃんと説明するためにも欲しくなってきたので、ざっくり計算してみることにしました。 

Diamond_1

この回路の入出力インピーダンスを計算してみましょう。
エミッタフォロアはコレクタ接地なので計算式はこちらで見ていただくとして、wikipediaコレクタ接地回路

■1段目の入力インピーダンス

Zin = rπ+(β0+1)RE   これだと分かりにくい。  

   rπ=hfe/gm    β0=hfe=100    gm=40 x Ic 
   動作条件   Ic=3mA    RE=1.5kΩ  で計算してみましょう。

  Zin = 833+150K = 約150kΩ ですね。

上下で2つになりますが、初段の差動回路の負荷抵抗と比較して十分に軽い(抵抗値が高い)ので悪影響はなさそうです。

■2段目の入力インピーダンス

   計算式は、同様に
   動作条件   Ic=20mA    RE=30Ω  で計算してみましょう。

  Zin = 125+3k  = 約3kΩ です。

こちらは、1段目の負荷1.5kに対して影響力はありますが、とりあえず気にしないでおきます。

気になる方は、1.5k//3k = 1kΩ で、もう一度、1段目の入力インピーダンスを再計算してみてください。 んまあ、hfeが150とか200とかになってしまえば、この抵抗値の違いは誤差のようなもの。 
こいういう計算は、ばらつきの大きいhfeの影に隠れてしまうものと判かった時点でやめてしまって大丈夫なんです。 抵抗も5%品をつかって全く問題の無い箇所といえます。

さてさて気になる出力インピーダンスの方を計算していきます。

■1段目の出力インピーダンス

Zout = (1/gm)+(Rg/β0)

   gm=40 x Ic   β0=hfe=100

   動作条件 Rg=2.2k   Ic=3mA で計算してみます。

  Zout = 8.3+22 = 30.3Ω 

なかなか低いですね。

■2段目の出力インピーダンス

   動作条件 Rg=1.5k//(30.3+100)=120   Ic=20mA で計算してみます。
  
  Zout = 1.25+1.2 = 2.45Ω 

おお、これも結構低い値です。

コレクタ電流 Icを50mAへ増やした場合では

  Zout = 0.5+1.2 = 1.7Ω 

ここまできて、前回のダイヤモンドバッファは2段ダーリントンとしての駆動力はないといったのはひどく言いすぎだったようです。
ベース電流を強制的に流しこめる回路ではないですが、十分に低いインピーダンスで出力できる回路です。

電源電圧に対して振幅があまり大きくないアンプでは、十分実用的なバッファと言えます。

 

コメント

1段目のエミッター抵抗(1.5K)は2段目トランジスターのバイアス供給と同時に、1段目の増幅に対する負帰還の役割を果たしています。
計測用アンプなどで、極微量の電圧を増幅するならば、このエミッター抵抗の負帰還がゲインを下げてしまうので問題にされますが、オーディオ回路では御呈示の回路の入力信号は、ある程度の電圧増幅が掛けられているので、エミッター抵抗による負帰還が無いと出力がクリップします。
ダイヤモンド回路=スピーカー駆動には不向き と決め付けるのは科学的ではないと思います。

すしんどアキローさん

非科学的(=オカルト?)なことを述べようとしている訳ではありませんでした。

世間一般に出回っているアンプの出力バッファ回路として、なぜダイヤモンドバッファを採用している例が極端に少ないのか?
というのを解き明かそうとしているだけです。

同じく4つのトランジスタを使ったとして、2段ダーリントンの通常バッファと比較すると、大振幅時にドライブ能力が落ちてしまうという(歪が増大する)ことを書きたかったのだと思います。

音がでるかでないかというレベルの話であれば、おっしゃる通り、大丈夫です。 電源電圧に制限される(クリップする)まで、直線的に振幅できるかどうかを焦点にしていました。

文章能力が足りなくてすみません。

ちなみに、一部で前段2段、後段2段に拡張したダイヤモンドバッファ(?)を採用している例はあったようです。

まあ、このままでは出力電流を多く取れませんので、
スピーカー駆動には向きませんね。
エミッターフォロワーのドライバー段を追加し、
出力段はパラレルプッシュプル構成にする。
パワーMOSFETでも面白いかもしれません。
そして、相応の電源容量と大型ヒートシンクも必要。
ここまでやれば100W級のバッファアンプも可能でしょう。

スコッチさん

その通りですね。
2段ダーリントン(TR4個+バイアスTR)でも100Wオーバーのアンプも沢山あります。

でもダイヤモンドバッファ(TR4個)で100Wのアンプは厳しいですね。

ダイアモンド回路の考察、参考になりました。
製作したのですが、ミスで壊してしまいました。
今はSpiceなどでシミュレーションしています。

池田哲夫さん

そうですね。シミュレーションすれば雰囲気はわかると思います。

>hfeが100ですと、17.2mAしか電流が流せない状態となってしまいます。
ここは172mAの間違いでしょうか?

naka さん

仰る通りですね。 172mA流せるため電流制限はかかりません。
R=1.5kではなく10kくらいで計算すると電流制限がかかってくると思われます。

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