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2026年5月 4日 (月)

ラックスマン LIFES 回路解析(2)

本日は副アンプ側の帯域制限を解除して普通の差動アンプとして機能させたときの動作を見ていきます。

以下が今回のシミュレーション回路の全体です。

Lifes_04

緑色で囲った部分:副アンプ

青色で囲った部分:1/K アッテネータ

1/K アッテネータは単にフィードバック抵抗ですが、主アンプのゲインと合わせている所が面白い部分です。のちほど詳細を書きます。

 

 

■副アンプは普通の差動アンプと何が違う?

一見すると普通の差動アンプの構成と何ら変わらないように感じますね。 でも実は2段目に見えるトランジスタQ14がエミッタ接地回路ではなくコレクタ接地(エミッタフォロア)回路になっています。

つまり、差動増幅+エミッタ接地回路の2段増幅回路ではなく、差動増幅1段の出力を強化(低インピーダンス出力化)した回路なのです。

 

各JFETの入力に注目すると

 J1入力:アンプ入力信号

 J2入力:アンプの出力信号 ÷ K

なので、アンプ入力出力との差分(=ひずみ成分)を増幅して D点へと出力していることになります。 能動負荷の差動回路のゲインはJFETの品種と動作電流に依存しますがさっくり50~60dBほどになると思います。

 

信号を見てみましょう。

Lifes_05

D点は、DCサーボ化していた時は殆ど振幅しませんでしたが、今度は何か信号が見えてきましたね。

これが入出力の誤差信号になります。

 

 

■誤差を最小に 1/K アッテネータを調整してみる

主アンプの「ゲイン K」に対して「1/K アッテネータ」の比率が等しくないと誤差が大きくなるため  アッテネータの抵抗R12 を .step シミュレーションして最適なポイントを探りました。

Lifes_06

R12 = 2.1kΩ ~ 2.22kΩまで20ΩステップしたときのD点波形です。

何やら、ひずみっぽい波形が見えてきましたね。

 R12 = 2.1kΩ         正弦波に近い
 R12 = 2.16kΩか2.18kΩあたり 最も振幅が小さい

このように 1/K アッテネータを微調整することで副アンプの出力をひずみ成分だけに絞ることができるようです。 ただ、アンプ全体の仕上がりゲインも動いてしまうため、ラックスマンがアッテネータを微調整しているかは何とも言えません。 フィードバック抵抗に半固定抵抗を使うと音への影響が大きいと思うので微調整していないような気がします。

 

 

 

■周波数特性

Lifes_07

A点:主アンプの入力信号

B点:主アンプ2段目の入力信号

C点:2段目出力=アンプ出力信号(8Ω負荷)

D点:副アンプ出力信号

 

D点の周波数カーブだけ不思議な形をしています。

100kHz以上の高域で上昇しているのは高域でひずみを補正する量が増えているのだと考えられます。主アンプと副アンプの高域特性をどう設定するのか、というバランスも重要かもしれません。副アンプの位相補償を大きくしすぎるとアンプ全体のF特が変なカーブを描くことがありました。

10Hz以下の上昇は、主アンプの初段の定電流回路部C6コンデンサの容量で変化しました。 このコンデンサ容量が低域限界を支配していたようです。 10Hz以下なのでスピーカーの再生帯域からすると影響は少ないかもしれませんが、実際の音では変化を感じ取れるかもしれません。

 

 

 

■ひずみ打ち消し効果は

FFT解析でLIFESのひずみ打ち消し効果がどのくらいあるか見てみましょう。

Lifes_08

上は副アンプをDCサーボ化してDCオフセットの補正のみのFFT画像です。 下は普通に副アンプを動作させたときのもの。

2次ひずみ、3次ひずみで40dB以上低減されてるようです。

効果絶大ですね。(あくまでもこの定数でのシミュレーション結果です)

 

 

■まとめ

ODNF、LIFES回路の主アンプは差動回路を使わないエミッタ接地回路2段構成です。

主アンプだけみると、位相補償もなく極端にシンプルな回路で増幅しているというメリットがあります。回路が単純であるほど音の鮮度が高いなんて話も良く聞きますよね。

そこに副アンプを追加することで、DC安定化、ひずみ・ノイズの低減。 現代のメーカー製アンプとして十分な性能に仕上げている点が素晴らしいです。

欠点としては、電源電圧をかなり高めにしておかないと出力振幅を大きくできない所でしょうか。

 

Lifes_block

このブロック図を見てMain部を無くしても普通に差動アンプとして動作するのではないか? と思った人も多いと思います。 その通りです。

Lifes_block_d

Main部を削除し、Q14を逆にしてエミッタ接地回路にすると普通の差動アンプです。普通の差動アンプも1段目の出力は入力と出力の誤差分を増幅しているため「歪だけフィードバック」しているようにも見えます。 

途中に非直線成分(ひずみ)があったり、出力バッファのひずみ成分も含めて補正してくれます。 なので、誤解を招く可能性があるODNFという名称を改めたのかもしれませんね。

 

もしかしたら、今回シミュレーションで実験したように差動アンプ側をDCサーボ化して主アンプの音をそのまま聴けると、LIFES本来の狙いを感じ取れるかもしれません。  副アンプ「DCサーボ <-> LIFES」切替スイッチ的な。

アキュフェーズANCCと違って、小信号領域ではなくパワーアンプでひずみ打消しを実行している点も興味深いです。 ソニーのヘッドホンアンプTA-ZH1ESで搭載されたD.Aハイブリッドアンプは誤差分をCOLD側から出力してヘッドホンのボイスコイルでMIXする手法です。

ラックスマンODNFは1997年に発売しているので、入出力誤差を検出してひずみ打消しする回路の先駆者とも言えます。

 

 

 

<追記>=============================

低ひずみ化技術に興味がありましたら、以下の記事もどうぞ。

トラ技10月号に載っていたONKYOの特許を調べてみました

スーパーリニアサーキットは、本当にスーパーな直線増幅だったのか?

アキュフェーズ ANCC 歪打消し回路シミュレーション

アキュフェーズ ANCC 歪打消し回路シミュレーション(2)

 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

たかじんさん

前記事と併せて拝見いたしました。 自分のレベルからすると、このように解析できること自体が、雲の上の出来事です。 解説内容がわかるだけ、自分が進歩したかなぁ・・・。

さて本題ですが、主アンプが差動回路でないことに驚きました。 PNP+NPN でぺるけさんの トランジスタ式ミニワッターPart2と同じように見えます。 真空管からトランジスタに移り変わる頃によく見られた古典的な回路のようです。 シミュレーション結果で、3次ひずみが -25dB 程度まではねあがっているのは、おおむね妥当に思えます。

もしかすると、主アンプの回路で、いわゆる LUX トーンらしさをつくっているのかなぁ・・・などと思ってしまいました。

P.S.
ゴールデンウィークは、レンタルサーバの移動作業をしていました。 これまではビジネス用のサーバでしたが、一般的な安いところに変更です。 安くあげるためと、これまで使ってきたメールアドレスにやまほどの迷惑メールがくる(必要なメールは1割もない)ので、ドメインも変更するつもりです。 このホームページの掲示板・製作集のアーカイブもアドレスが変わります。 移動作業は一段落しているので、無料の独自ドメインがもらえたら、お知らせいたします。 よろしくお願いします。

n'Guin さん

LTSpiceは無料ですし、WEBで使い方を説明されている方が多いのですぐに使えるようになります。 トランジスタの動作をある程度理解されてくればシミュレータを使ってあれこれ試すのが面白いと思います。

差動回路ではない回路の採用は、私も驚きました。 しかも上下対称でもない。 電流帰還アンプの多くではダイヤモンドバッファが使われていて、差動回路ではないのですが、上下対称な回路になっています。

おっしゃる通り古典回路の一種と思います。 フィードバックループで補正されてしまうため、主アンプが在ろうが無かろうが関係なさそうに見えてしまうのはブロック図だけで、実際にはかなりの影響力を主アンプが支配していると考えています。

この回路の応用で主アンプを真空管で組むとか面白そうですよね。

また、初段を4パラにするところも、MCヘッドアンプ的な発想で面白いです。

レンタルサーバーの移動、お疲れ様です。 ご自分でLinuxOSなどの管理などもされていらっしゃるのでしょうか?  一時期、私も調べていたのですがサーバーの会社によっていろいろあるので、迷いに迷って、レンサバへの移行をしておりません。

ここのブログは容量が2GBなので画像の容量を極小にしながら運用していますが限界が近づいています。 
リンク変更いたしますので、よろしくお願いいたします。

いつも楽しみに読ませていただいています。
今回読んでいて少し気になることがありまして。

> 実は2段目に見えるトランジスタQ14がエミッタ接地回路ではなくエミッタフォロア回路になっています

とあるのですが、これは違うのではないかと。
エミッタフォロワというのは、出力のエミッタの電圧がベースへの入力電圧に追従(フォロー)することからそう呼ばれるようですが、こういう動作をするのは前段が電圧出力になっている場合です。
Q14の出力はエミッタからではありますが、前段の差動アンプの出力はカレントミラーのアクティブロードですから高インピーダンスの電流出力です。電圧を出力しているのではなく、出力点の電圧は負荷に何が繋がるかによって変化します。
では、このアンプに信号が入力されたとき、Q14のエミッタの電位はどう決まるのかと考えると、結局、NFBによって定まるこのアンプ終段の出力電圧に、Q18,Q16のB-E間電圧とR10に発生する電圧を加算した電圧として電位が定まることになると思います(R7,20,26は無視)。さらにQ14のB-E間電圧を加算して初段差動アンプ出力点の電位が定まる訳で、R10の6.8kはその電位が適正値になるように選ばれた値でしょう。
つまるところ、Q14の動作は前段の出力電圧を後に受け渡すフォロワではなく、エミッタの出力インピーダンスも低くはなりません。Q14は見た目にエミッタが接地されてはいませんが、結局ベースの入力電流に応じてコレクタ(エミッタ)の電流が変化するという、通常のエミッタ接地の動作をしていることになります。

というのが私の理解なのですが、素人ゆえ思い違いをしていることもあるかもしれません。もし間違ってましたらゴメンナサイ。

tetsu さん

コメントありがとうございます。
おっしゃること分かります。 エミッタフォロアと書かずコレクタ接地と書いた方が語弊が少なかったかもしれませんね。記事、ちょっと編集しました。

コレクタ接地はコレクタをGND(交流的に電源も可)で共通、入力はベース。エミッタが出力。

通常、トランジスタ1段のコレクタ接地ではエミッタ出力のインピーダンスは入力の1/hfe程度です。 ですので、パワーアンプの出力バッファは2段ダーリントン、3段ダーリントンと複数接続することで低インピーダンス化していますね。

仮にhfeを400として、1段目差動出力のインピーダンスが1MΩなら、ざっと2.5kΩです。

これを低インピーダンスと言って良いか難しいところではありますが、1段目差動出力に比べると明らかに低くなっています。 R10と比較して低いかと言われると微妙なのは、おっしゃる通りです。


さて、

R10(6.8k)、R16(1.8k)はあくまで私が考えた抵抗値ですので、もっと高くして比率を離しているかもしれませんし、逆に近づけているかもしれません。
Q14エミッタ出力とR10抵抗の比率が近ければ抵抗ミックス(電流ミックス)的な感じで機能させているかもしれません。 2.5kと6.8kも十分近いですね。

よく使われる電子回路の定数では、電流と電圧を完全に分けて語ることが出来ませんが、相対的に電流が支配的な場合と電圧が支配的なところがあります。
たとえば電流転送、電圧転送、電流帰還、電圧帰還などなど。 もちろんその中間的な状態もあります。
設計者が狙った動作ならそれで良いかと思いますが、いかがでしょうか。

tetsu さんのご指摘をうけて見直すと、Q14(hfeに依存する)による電流ミックスに見えなくもありません。 通常hfeは非常に大きくばらつくためそれに依存した回路を組むような設計はしないのですけども。。。

たかじんさん
返信ありがとうございます。

なるほど、コレクタ接地とあったなら引っかかることなく読み過ごしていたに違いないですね。
私は体系的にきちんと電子回路を勉強した人間ではありませんので、回路の見方が偏っているかもしれません。アクティブロードを見ると出力電圧がイメージできなくて電流モードばっかりで考えてしまう、みたいな。

このアンプをもし自分で実際に作ってみようとなったら、2段目は5mAくらい流したくなってR16は1.1kくらいにして、R10のところは17V前後のツェナーDもしくはLED数珠繋ぎ、あるいはベースをそのくらいの電圧に固定したPNPトランジスタに置き換えてみる、ような気がします(また何か頓珍漢なことを言っているかもしれません)。

ボルテージフォロワにしたオペアンプの電源ピンを入力信号でブートストラップすると
ゲイン1で同じブロック図となるんですよー。
昔の黒田徹先生の記事です。

tetsu さん

2段目に5mA程度流すのはとても良い設定と思います。 よくある差動2段アンプ等で能動負荷の場合も出力インピーダンスは1~10MΩくらいのインピーダンスになりますが、そこから2段ダーリントン、3段ダーリントンのバッファで十分な低インピーダンスへと変換していますね。

プリアンプなどではダーリントン接続せず1段エミッタフォロアで済ませる場合もあります。 強力にフィードバックがかけると、それでも十分に低インピーダンスな状態になります。

上のシミュレーション回路の差動アンプ部分は、DC安定化のためのDCサーボアンプと割り切って、主アンプの設計をされると古典アンプの良さが出てくるのではないかと思います。

そうすると主アンプは自己帰還のみとなりオーバーオーNFBを掛けていないアンプが出来上がります。


dumbbellcurl さん

えぇっと、それはQ14部のブロック図化ということでしょうか。

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