NL8902とMUSES8921
すっかり見落としておりました日清紡のMUSESシリーズの最新オペアンプ MUSES8921が発表されています。
2025年10月11日現在、入手できるルートはまだ無いようです。 本日は同じくJFET入力のNL8902とスペック比較してみようかと思います。

< プレスリリースから抜粋 >
おそらくNL8902は「高音質オーディオ製品シリーズ エントリーモデル」に属するものと思います。
ざっとスペックの数値を比較すると以下のようになります。
| 項目 | NL8902 | MUSES8921 |
| 入力タイプ | JFET | JFET |
| 雑音 | 10nV/√Hz | 8.0nV/√Hz |
| 歪率 | 0.0004% | 0.0004% |
| スルーレート | 20V/us | 25V/us |
| GBW | 9MHz | 11MHz |
| 消費電流 | 2.6mA(2ch分) | 9.0mA(2ch分) |
| 出力電流 | 50mA | 70~80mA |
いかがでしょうか。
個人的に差を感じた部分は消費電流です。 3.4倍以上の違いがあります。
ポータブル向けとしてはNLの方が優れた数値になるのですが、オーディオ的な観点ではアイドリング時にある程度おおきな電流を流している方が音が良いイメージがあります。(あくまで個人的なイメージです。)
それを踏まえて「ひずみ率カーブ」を見てみます。
数値はどちらも「0.0004%」と記載されているのですが、カーブは全然違っています。
やはりカーブデータの確認は必須ですね。
カーブデータから読み取るひずみ率
出力電圧が0.1Vのポイントで比較するとNLは0.003%、MUSESは0.01%です。 これは測定条件が異なるためですが、同じメーカーで同じ時期に登場した製品としては少々不思議な気がします。MUSESシリーズの方がクラスが上なのに数値が悪くなってしまう条件のようです。(ひずみ率は、LPF、HPF、ウエイト、負荷などの測定条件によって数値が変わります。)
まあ、それは良いとしてNLの方の出力電圧が0.8Vを超えたあたりからカーブが盛り上がっている部分に注目します。
データシートを良くみると歪率を計測するときの負荷はどちらも2kΩなので負荷条件は一緒です。
パワーアンプ回路でこのようなカーブになるケースは、出力段のアイドリング電流が小さいときです。出力段でスイッチング歪、クロスオーバー歪が発生しているものと考えられます。
一方、MUSESの方は変形することなく出力電圧10Vまで直線ですね。
スルーレートの差は大きくないことから、消費電流が多くなっている要因の大部分は出力段のアイドリング電流の違いと考えて良いかと思います。
振幅が大きくなったときでも直線性が良いということから、
ヘッドホンなど負荷が重いものをドライブするならNLよりMUSESの方が適していると考えられます。
最大出力電流はNL:50mAとMUSES:70~80mAで大して変わらないように思えてしまうため「数値」だけ見ていてもこれほど違いがあるとは想像できないですね。
プリアンプなど負荷が軽いところではNL8902で安価に組める。
ヘッドホン駆動など負荷が重いところではMUSES8921が有利。
という事がいえると思います。
MUSES8921はMUSES8920/Aをベースに高音質化をはかっているとのことですので、MUSES8920とNL8902の試聴比較のとき以上にMUSES8921の優等生ぶりを感じ取れるかもしれません。
※NJM8830という超低歪、超低雑音 オペアンプも気になっている方らっしゃいますかね・・・
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コメント
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NJM8830だけでなく、NJM8801も気になっています。
使うことはないと思いますが。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2025年10月27日 (月) 02時37分
三毛にゃんジェロさん
NJM8801なんてのもあったのですね。 NJM8080というのもあったけど。。。
どれがどういう位置づけなのか、整理した方がいいかもしれませんね。
投稿: たかじん | 2025年10月28日 (火) 23時34分
こんばんは。
暫く見ない内に、色々と新しくなっていて、頭の中が混乱しています(笑)
記憶が曖昧なのですが、
8080→バランスタイプ
8068→中低音タイプ
8065→逆かまぼこタイプ
8065は、高音が綺麗なタイプと合わせると、綺麗な音に強烈なアタック感が合わさって中々面白い感じになったと思います。安いオペアンプなんて、何かのついでにポチるのも、秋の夜長には宜しいかと。
8802、8902、8921って、改良し過ぎて収拾付かなくなってる気もしますね(笑)ちゃんと維持してくれるのか不安になって来ました(笑)選択肢が増えるのは嬉しいけれど、、、。
投稿: scraphearts | 2025年11月 8日 (土) 18時25分
MUSESに関しては、MUSES01、MUSES02、MUSES8820Dが生産完了です。
以下の公式資料では2027年9月30日が最終注文日、2028年3月31日が最終出荷日とされています。
https://www.mouser.com/PCN/Nisshinbo_Micro_Devices_NRND_DIP8+TO_220F_3_eng_MNG_2025_0081.pdf
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2025年11月 8日 (土) 21時46分
scraphearts さん
整理していただいて助かります。 確かにNJM80xxシリーズは、なせそんなに? と思うところがありますね。
そして日清紡になってからNL88xx、89xxシリーズへと受け継がれましたが選定に迷ってしまいます。
MUSESシリーズは、明確に高級品になりますね。
三毛にゃんジェロさん
なんと、、、mouserに掲載されたのですね。
MUSES01、02はもう終了するだろうなとは思っていました。 MUSES03だけが生産できないのは逆に不思議ですし。
MUSES8920A、8921Aは新製品ですので、まだ平気そうだとは思うけど、8820はびっくりですね。 やっぱり高級モデルはJFET入力になってくるのでしょうか。
個人的に01と02では、02(バイポーラ入力)の方が好みでした。
投稿: たかじん | 2025年11月 9日 (日) 22時08分
たかじんさん
>NJM80xxシリーズは、なせそんなに? と思うところがありますね。
結構尖ってると思いますね(笑)回路的には4558系みたいなので、新しい素材で古い回路を再現したら、こうなっちゃったみたいな!?勿論それに合わせた調整あっての仕上りなんでしょうが。家ののメインが4556/4556なんで、たまに飛び抜けたのが使いたくなります。モバイルの方で、8065とかを活かせないか遊んでいたのですが、結構、電流の要求が激しいのか、バッテリーの消耗が激しかったです。マンガン電池のモッサリ感がバランスが取れて良い感じだったのか笑えましたが、据置機でどうバランス取るのか悩みどころです。そう言えば、この世代のFET版をチェックしてませんでした。誰か試した方居ますでしょうか?
>MUSESシリーズは、明確に高級品になりますね。
初段のこだわりなんでしょうか?分割になったり、素材にこだわったり。てっきり、Musesのスタンダードはオーディオエントリーに統合するのかと思ってました。それぞれ個性があるだけに、これからの整理が大変そうです。
話は変わるのですが、4556を記事で良く見かけるので(笑)、ADとADDで結構違いがわかるレベルだったので注意が必要です。選別品なんて、計測機で捉えられるレベルの物だと思い込んでました。627の選別品の比較は怖くて出来なかったですが、数十円の差ならと試したら、結構な差があってびっくりでした。後、4556のSOP10個パック内にも低音質な物があったのを思い出しました。バラツキの範囲内なんでしょうが、当たり外れがあるのは何とも言えない所ですね。
投稿: scraphearts | 2025年11月14日 (金) 19時14分
たかじんさん
MUSES8820Dとなっていることから、MUSES8820Eは生産が継続されるものと予想しています。
つまり、今後DIP8のラインナップは消え、SOP8や足のない形状に集約されていくのではないかと。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2025年11月14日 (金) 22時12分
scraphearts さん
三毛にゃんジェロ さん
なるほど。 NJM4558系の新材料によるオペアンプですか。 その可能性ありますね。
回路として4558はひとつの完成形ですしね。 レイセオン RC4558がオリジナルだと思います。
https://www.jas-audio.or.jp/jas-cms/wp-content/uploads/2014/07/015-018.pdf
それにしても、ICのバラつきで音が違うのは知りませんでした。 そういう試聴比較はしたことありませんでした。
低ノイズ選別の「D」は、おそらく低域ノイズだと思います。 いわゆる1/fノイズというヤツで半導体(トランジスタ)のバラつきで発生するものです。
マイクアンプ、フォノアンプなどハイゲインで使うとき以外は影響ないだろうと思っていましたが、考えを改めた方がいいかもしれないですね。
ご存じかとは思いますが、4558の進化の系譜は秋月電子が新日本無線の資料を載せていました。
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g100069
参考資料(4558系オペアンプ系譜図)
DIP品がなくなってしまうのは残念ですね。。。
JFET入力のオペアンプとしてはTL071、072系で日清紡なら、NJM072、082、2082などですかね。
NJM2082は、NJM2068と同じ世代かもしれませんが、4558と比べて線が細く、少し硬めな音調だったように記憶しています。
NJM2068はNJM4558とNJM5532の中間のような存在です。
投稿: たかじん | 2025年11月15日 (土) 14時25分