ZOSAN-HPA15 HPA16 試聴とファームウェア調整
2022年3月にラズパイ PicoによるUSB-DDCの記事を書いておりました。
その時のファームウェア(バイナリ)を利用したUSB接続ポータブルヘッドホンアンプをZOSANKIBANさんが作ったということで、ちょうど10月号のトラ技の執筆でMCLKを追加&ジッターを低減したところだったので、新ファームウェアを案内しました。
ところが、ジッター低減したはずの新ファームウェアの音がよろしくないとの連絡が・・・
RaspberryPi Pico を使ったUSB-DDCによるI2S出力の比較です。オリジナルはFs48kHzでは揺れが少ないが、Fs44.1kHzでは揺れが出ていました。今回MCLKを追加してジッター低減しました。
— Takazine (@TakazineZone) August 5, 2024
上から順に、MCLK、BCK、LRCK、DATAです。(無音なのでDATAは0のまま) pic.twitter.com/HSR70189IE
元々のファームウェアはサンプリング周波数48kHzでは平気だけど、44.1kHzでクロック生成のPLLで時々ずれを修正する「うるう秒」みたいな動作が入ってクロックがガクンと揺れます。本来のジッターとは少し違うのですが、ここではジッターと簡易的に呼ぶことにします。
トラ技原稿の締め切りが迫るなか256fsのMCLKを出すところで難儀して時間を喰ってしまったので44.1kのジッターは無視しようかと思ったのですが、インターフェス誌にPico DAC記事を執筆して基板も作っていらっしゃる「geachlab」さんのことを思い出して、208.8MHzオーバークロックを試したところ44.1kHzのジッターがオシロで見えなくなったので完了にしました。
geachlabさんのPico DAC基板と部品セットが秋月電子で売っていたので私も買って音は聴いていました。 1980年代のCDのデジタル臭さを感じる音で懐かしい感じがしました。 けっこう音が尖っていて鮮烈なのです。
208.8MHzオーバークロックは48kHz系と44.1kHz系ともPico内部DIVでキレイに割り切れる周波数ということを何かの記事に書かれていたと思います。
そんな208.8MHzオーバークロックの新ファームウェアをZOSANさんに送ったあとの返答が、
「ステージが狭く感じた」
「ボーカル、バンド演奏がすべて頭の中心付近」
わたし、オシロでI2S波形しか見ていませんでした。
ジッターが明らかに減っている新ファームウェアの音が以前より悪くなるハズはない。。。 と思うのは甘いですよね。
オーディオは奥が深いものです。 波形や測定器の値をみても実際の音質と一致しないことはよくあります。
ZOSANKIBANさんにデモ機をお借りできるか頼んでみたところ快諾して頂けました。
ありがとうございます。
ということで我が家にやってきたもの
< ZOSAN-HPA15 USB接続NOSDACヘッドホンアンプ >
左右対称的に部品が配置されて、いかにも良さそうなアンプです。
基本的に基板単体をヤフオクで頒布されていらっしゃって、部品を自分でかき集めて製作するヘッドホンアンプです。USB接続というのとNOS-DACというのが魅力ですね。単4電池4本駆動です。ニッケル水素でもOKです。
出力バッファ部はトランジスタを使われています。
< ZOSAN-HPA16 トランス式USB NOSDACヘッドホンアンプ >
こちらはST-45トランスを出力に使ったタイプです。実はこちらの記事を参考にされたとのこと。もう10年以上まえだったのか・・
USB接続かつNOS-DAC、そしてポータブルなST-45トランス式USBヘッドホンアンプをこのような形で日の目を見るとは感慨深いです。
と、懐かしんでいる場合ではありません。
早速オリジナルファームと208.8MHzファームとの試聴比較です。
Fs=48kHzではどちらもジッターが少ないのが分かっているため、44.1k、48kとをちゃんと確認しながら新旧ファームウェアを聴いてみます。
AndroidやiOSではソフトやソースによってどちらの周波数で出力されているか把握しにくいためWindowsPCで強制的に固定しました。
44.1kソースを44.1k出力: ふわっと広がる
44.1kソースを48k出力 : どんよりした雰囲気
48kソースを48k出力 :広がりと奥行きがしっかりでる
48kソースを44.1k出力 :少し落ち着かない広がり感
44.1kと48k間の変換はWindowsのSRCの品質によるものと思われます。
96kHz以上のハイレゾから44.1k、48kのダウンコンバートの方はまだマシなようです。
全般的に44.1kは妙な広がり感があるようで若干嘘くささが漂います。スピーカーで聴くと定位がゆるい感じ。
ジッターが減ったことで、ビシっと定位したならそれは正しい音になるわけですな。
とひとしきりフラグを立てたあと
208.8MHzオーバークロック新ファームウェアに切替えました。
こっ
これは無いな
伸びやかさがなく左右も奥行きも狭い。 Fs=48kHzも音が硬く残響感がタイト。 ギスギスした雰囲気。
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