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2023年12月29日 (金)

ギターアンプ Fender Pro Junior 特大ノイズの修理

先日書いたギターアンプのノイズを「ある程度のところ」まで減らすことができました。ついでに終段のバイアス調整機能も付けました。

順に追って行きたいと思います。

Tube01a
    < 左の2本が購入したTENの12AX7 >

まずは真空管を購入。 純正と思われるプリ段、差動反転部の12AX7の1本はゲッターが消えていました。

最初は有名な松下もしくは東芝の12AX7を買おうとしたのですが、ヤフオクでも人気で真空管テスターチェック済みの球は1本3000~4000円くらいまで上昇しているようでした。 1本2000円程度の価格で入札したものの落札できませんでした。

仕方ないので少し人気が落ちる「TEN」の球を購入しました。 とは言っても真空管テスターでばっちりエミッションが出る球です。

TENは、富士通テンの前身の会社でカーステレオが有名ですね。いまはデンソー・テンという会社名に変わったようです。

 

TENは日本のメーカーですが、やっぱり古い真空管ですから、テスターでチェック済みの球を狙いました。 以前、秋葉原で古い12AU7をジャンクコーナーから買ったら動かなかったってこともありましたので。

 

 

 

次は基板の半田不良チェックです。

Pcb01a
       < ソケット基板 >

ルーペで見ても問題なさそうですが、念のため新しい半田で追いハンダしてみます。

 

 

Pcb01b
       < メイン基板 >

こちらは、ソケット基板へ配線を出しているリボンケーブルの付け根にトラッキング現象的な跡がありました。埃が入りやすい構造ではないのですけどね。 追いハンダと同時にアルコール清掃もしておきます。 回路図からすると300V以上かかる端子があるハズなのでリボンケーブルのピッチが狭いように感じました。

 

 

ここまでの作業で一旦、戻して確認しました。

バリバリっ、バチバチっと鳴っていたノイズはほぼ解消しました。球の足を磨いたのも効果あったと思います。

真空管はTENと純正とを色々挿し変えてみました。 不思議なことにゲッターが透明の球でも音が出ます。というかゲインが低いのか差動反転部に使うとノイズが一番小さくなります(笑)

正直、透明球を使うのはナシと思うのでそれ以外の組み合わせでやっていこうと思います。

 

 

でも、でも、

バリバリ音が無くなったことで今度はハムノイズが気になります。通常のブーンという100Hzのハム音の上にジーという高調波ハムが乗っていて非常に耳障りなのです。

これについては海外のフォーラムで対策できるよというコメントを見ていたので試しました。

Pcb01c

上が最初の状態、下が対策した配線。

緑配線の取り回し変更です。 この緑配線はヒーター配線です。交流点火なので整流回路も何もないシンプルなものです。B電源配線(赤配線)から整流ダイオードのスイッチングノイズが乗るので90度で交差させると良いとのこと。 赤配線によじってあるので、一度ソケット基板から緑配線を半田で抜いてから引き直しました。

これは効果ありました。 ジーというハムノイズに同期した耳障りな音がほぼ解消しました。

真空管のヒーターからノイズが乗ってくるということなんですね。AC点火ではなくDC点火にするとブーンと唸っているハムも消えるでしょうか。オーディオ用の真空管アンプの殆どはDC点火だと思います。

 

 

 

終段のバイアス調整機能追加

ギターアンプ修理をされている国内のサイトでPro Juniorの終段に「バイアス調整を付けた」というというのもみました。

Pcb02

OPT(出力トランス)の一次側巻線を測ると直流抵抗は98Ωでした。回路図に記入されている電圧から逆算するとアイドリング電流は30mAほど流しているようです。ただしバイアス調整機能がないため球のバラつきで過大な電流になる可能性もあります。

実際に電圧を測ってみると一次巻き線間が3.8V、つまり38mA流れているようでした。

 315Vx38mA=11.97W になります。

EL84/6BQ5の許容プレート損失は14Wなのでギリギリですね。というかアイドリング時でギリギリってどうなの? と思います。

https://shop.ehx.com/catalog/tubes-specs/EL84-6BQ5.pdf

 

R29のところに20kΩの半固定抵抗を挿入してバイアス電圧を可変できるようにしました。

アイドリング電流によって音質が変わると思うので最終的に何mAに調整するか未定ですが、今はとりあえず発熱を下げるため25mAに調整しておきました。

 324Vx25mA=8.1W

アイドリング電流によってB電圧は10Vくらい変動します。真空管を抜いてアイドリング電流をゼロにするとB電圧は350Vを超えます。電解コンデンサの耐圧は450V品なので余裕ある設計になっていますね。

12AX7/EL84ともプレート電圧の最大定格は300Vです。

 

 

 

さて、ここまでで当初よりも「随分と実用的なところまで来た」かなっと思ったのですが、10分くらい鳴らしていると残ったノイズがやっぱり気になります。

そう、純正の球よりもTENの12AX7は外来ノイズを拾いやすいみたいなのです。

 ・マイクロフォニックノイズ

 ・RFのビートダウンノイズ

透明ではない純正球をプリ段に使うと外来ノイズは減るのですが、ゴーーという1/fノイズが大きめに出ます。 TENと純正、どっちもどっちって感じです。

 

ちなみに12AX7などプリ管の寿命は通常の使い方なら1万時間程度あるとの情報も。透明球はさておき、生きている純正球の方はまだまだ大丈夫な感じがします。

 

 

 

続きはまた今度。

オーディオアンプでは見かけない「スタンバイスイッチの謎」に迫ります!?

 

 

 

 

おまけ写真

透明なのでゲッター材を入れていたお皿がまる見えです。 東芝などはリング状でした。 getter flashing で検索すると動画で処理の様子が見られます。興味のある方は検索してみてください。

Tube01b

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コメント

私も実際に音創りをやってみるまでギターアンプではプッシュプル出力段のバイアスを流しすぎるとダメなんだという事が理解できませんでした。特に出力段でクリップしかけてるレベルまで使って演奏する時のピッキングから音が消えるまでの過程での音色と音量的な時間変化に想像以上の影響がありました。

 真空管ギターアンプといえば、真空管にアルミのカバーが被せられている物も多く見るのですが、それはなかったのでしょうか。オーディオアンプとは異なり、ギターアンプは筐体が金属ではないので、アルミカバーで機械的な破損防止と外来ノイズ防止を兼ねていると想像しているのですが。

HILO@町田さん

OCTAVIAでのギターアンプシミュレータ、すごいですね。 上下非対称な頭打ち波形までは何となく想像できましたが、プッシュプル出力段のB級領域までも再現。さらに終段クリップで演奏とは。。。

フェンダーPro Juniorは15Wもあるので、自宅でクリップするような音量まで上げるのは殆ど無理な感じです。 ユニットの能率も高いようです。


三毛にゃんジェロさん

さすが鋭いですね。 あれこれ調べてみると Pro Junior 4 では真空管を囲うように金属の板と格子が追加されています。 3まではシールド無しです。
https://guitarmagazine.jp/news/2022-0721-fender-pro-junior-iv-se/

機械的な保護という意味では、裏板(パーチクルボード)が真空管の部分をカバーするようになっています。 上の写真はその裏板を外したところです。

まだ記事にUPしておりませんが、外来ノイズ対策としてアルミテープで囲ってみまたところ、RF飛び込みビートダウンノイズはかなり減りました。

うちの自宅は、何かの電波塔が近所にあって「チーチチチチ、チチーチ、チー」という感じのバースト状ノイズが入るんですよ。。。やれやれ。

たかじんさん

 外来ノイズが多い環境だと、シングルコイルピックアップだとさらにノイズの影響をうけてたかもしれませんね。
 たかじんさんでも不明ということは、アマチュア無線のアンテナでもなさそうですね。

三毛にゃんジェロさん

ピックアップコイルも受信しやすいかもしれませんね。 AMのバーアンテナのようでもありますし。

アマチュア無線的な個人宅のアンテナではなく、小高い丘の森のてっぺんに電波塔が立っているんです。 パラボラアンテナが東京湾方向(横浜港)へ向いているので船舶用ビーコンとか、何かの中継局か、、携帯の基地局の親分? 用途がわかりません。

真空管本体が受信しちゃうくらいなので、ちょっとした放送局並みの出力(数kW)を出している可能性もあります。

アンプのひずみ率測定でもRF飛び込みが影響するので、厄介なんですよね。

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