パラメトリックイコライザー試作基板
突然ですがパラメトリックイコライザーの試作基板を動かしてみました。
というのも、今度の日曜日(4/30)浅草にて開催されるイベント「ポタオーディオ蚤の市」にてミニスピーカーを鳴らそうと思ったのです。
でも低音がうす過ぎてイコライザーを作るしかない。と思い立ったからです。
Stereo2016年8月号 メタルコーンスピーカー M800
基板はこんな感じです。
操作ボリュームは、「ゲイン」「周波数」「Q」が3セットあります。
ボリュームつまみを買い忘れていたので、このまま操作します。
AnalogDiscoveryにて周波数特性を測ってみました。 想定通りの動き。
Qは富士山のように立っている線でほぼ最大です。もう少しQを高くしても良いかもしれませんね。広くする方はもう少し広げられます。
ステレオ分用意するとつまみ多くて操作しにくいです。 けど、ま、いいか。これらのつまみは頻繁に操作しないので基板としてコンパクトな方がいいです。
実際に音を聞きながら操作してみるとQを最大にすることは殆どなく、むしろ裾野が広い緩やかな方がスピーカー補正には無理がないように感じました。あくまでも耳で聞いた感覚で調整したときの話です。マイクで測定しながらキッチリ補正するなら鋭い山での補正が必要になるかもしれません。
これでミニスピーカーでの低域不足はばっちり対策できました。
LOW,MID,HIGHの3バンドですがMIDを100Hzまで移動できるため、例えばLOWを60Hz、MIDを100Hz という「ふたコブ山」低域補正もできます。
回路説明
このパラメトリックイコライザーの回路構成は、グラフィックイコライザーの回路形式に近く、信号が通過するOPAMPは2個のみです。
グラフィックイコライザーの詳細は「An audio circuit collection, Part 3」というTI社の資料をご覧ください。
ナショセミのOPAMPのデータシート(例えばLME49720など)にも10バンドグラフィックイコライザーの回路例が載っていたりします。
R2,C2,Rs,Lの部分をバンド数分並列に接続していくとグラフィックイコライザーになります。実際にはVinの前に入力バッファを配置するので、信号が通過するOPAMPは2個になります。
C2,Rs,LがBPFを構成する部品です。周波数が低いとLのサイズが大きくなるため一般にはLを使わずOPAMP回路で作るシミュレーテッド・インダクタという回路が使われます。
このひと塊(C2,Rs,L,可変抵抗R2)が5並列で5バンドグライコ、31並列なら31バンドグライコという具合。いくら並列にしても信号が通過するOPAMPの数は変わらず2個のみです。
BPFを周波数可変 かつ Q可変にしたのが今回のパラメトリックイコライザー基板です。
1decade以上という広い可変周波数とQも可変なBPFです。アナログ式のシンセサイザーで有名なmoogのパラメトリックイコライザー回路を参考にしています。
オーディオ製品でのパラメトリックイコライザーはテクニクスのSH-9010Eなどがありますね。
あの回路も調べたのですが、フェーダー(ゲイン)はセンタータップが必要(入手しにくい)で、回路がもっと複雑だったりしています。
可能な限りシンプル化して作りやすくできたかな。と思います。
この基板の入出力OPAMP(U1)を実装しない基板を追加すると、6バンド、9バンドと増やせます。回路図を見ての通り、周波数範囲が違う3バンドのうち定数が違うのはC5,C6などのコンデンサだけなので、3バンド全てを低域に変更するなども簡単です。
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チョット基板欲しくなりました。実はお気楽さんの“FESP5142-Do(PEQ) DIGITAL PARAMETRIC EQUALIZER”も作って持っているのですが、回路と操作がアナログで手軽に使えそうなのがいいですね。かなり昔にアクティブバンドパスフィルターを使用した10素子グラフィックEQを計画し部品集めだけで頓挫していました。低音部の増加以外にも高域の気になるピーク(クセ)を抑えるとかに良さそうです。小生のサブシステムには格好のアクセサリーかな?
投稿: onajinn | 2023年4月25日 (火) 03時07分
あれ、信号が通過する部分のオペアンプは2個で済むと本文にはありながらも、写真の基板上には4個のオペアンプ。🙀
このカラクリを教えて下さいませ。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2023年4月25日 (火) 15時49分
三毛にゃんジェロさん
横から失礼いたします。
回路図をご覧になるとわかると思いますが、1chあたり6個のオペアンプ(2個入り×3)が使用されております。
直接信号が通過するのが前後の2個で、あとはたぶん可変トラップフィルター用です。信号を扱ってはいますが。
因みに小生が昔計画(雑誌記事の丸写し)したのはトラップ型のフィルターではなく中間に通過型のバンドパスフィルターが10個パラになっていまして大げさでした。
投稿: onajinn | 2023年4月25日 (火) 18時51分
前投稿の訂正
誤:1chあたり6個のオペアンプ(2個入り×3)
正:1chあたり8個のオペアンプ(2個入り×4)
申し訳ありません。
投稿: onajinn | 2023年4月25日 (火) 18時56分
onajinn さん
お気楽さんのデジタルイコライザーですね。 アナログ化する前に処理できるならその方がいいですね。
この回路はアナログなので、ソースはLPでもラジオでもCDでもハイレゾでもDSDでも関係なく機能しますが、アバウトなところもあります。
三毛にゃんジェロさん
ちょっと書き方が良くありませんでした。 信号が通過するOPAMPと、LをシミュレーションしているOPAMPとがあります。
BPF部はonajinn さんが書いてくださっている通り、信号をGNDへと落とす役目なので、OUTPUTに出てきません(それを通過していないというかは捉え方次第です)
Figure 4 の図が分かりやすいですね。 C,R,Lの先がGNDになっています。
投稿: たかじん | 2023年4月25日 (火) 20時32分
たかじんさん
あ、なるほど。
1バンド当たり2個のオペアンプが必要だという意味だったんですね。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2023年4月25日 (火) 23時55分
三毛にゃんジェロさん
色んな解釈がありますね。
一時期、CDプレーヤのLPFに採用されたGICフィルターは信号が抵抗しか通らないという宣伝が一般的でした。
これも、GNDに対して信号を捨てるトラップ式でOPAMPを4chくらい使用しています。またLPFのOUTはインピーダンスが高めになるので出力バッファも必須です。
それでも「信号は抵抗しか通らない」シンプルさを売りにしていました。
OUTPUT側から見ると宣伝文句が正しいとも言えますし、いやいやOPAMP沢山使ってるじゃん、とも言えますね。
31バンドグライコがもし信号を直列に通す回路だったら流石に厳しい音になると思うけど、OPAMP 2個しか通過しないこの回路は案外平気なのです。
投稿: たかじん | 2023年4月26日 (水) 08時06分
たかじんさん
何年か前にBehringerの安くてコンパクトなステレオグラフィックイコライザー(6ないし7バンド)を見つけて、何かの折に使うかもしれないと購入候補に入れてたんですが、購入する前に終息。🙀
近所にあったジャンク屋さんでVictorの1980年前後と思しきグラフィックイコライザーを見かけたこともありましたが、これは流石にデカくて邪魔だと入手することはありませんでした。😹
LME49720やLME49860のデータシートには実用的な応用例が載っているてので、参考になりますよね。😻
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2023年4月26日 (水) 16時00分
三毛にゃんジェロさん
ベリンガーは安くて良さそうな機器を色々作っていますよね。
グライコというと、ミニコンポにはよく搭載されていたので「ピュアオーディオ」とは違った路線の製品という雰囲気があります。
でも80年代だと真面目に作っていた製品が多いかと思います。
そうそうデータシートの応用回路例は参考になりますよね。
投稿: たかじん | 2023年4月29日 (土) 13時53分