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2023年4月 7日 (金)

バランス入出力アンプの検証(3)

先日の検証の続きになります。

CMRRの信号漏れ(コモンモードを除去できなかった残り)がHOT側とCOLD側で差が大きい原因を探っていました。

 

下のオシロ画面は黄色が入力信号(HOT/COLDとも)で、水色がHOT出力、紫がCOLD出力です。電圧レンジが異なる点に注意してみてください。

Bba_kai00

100kHz時の波形で、とりあえず半分くらいまで差が縮まりました。同相で1Vpp入力して0.4~0.9mVくらいの漏れです。

 

 

初段差動トランジスタはHOT/COLD共通なので関係ないですし、別件でhfe選別を前回やっていました。

今回はカレントミラーのトランジスタのhfeを揃え、カレントミラー部のエミッタ抵抗、初段のエミッタ抵抗と負荷抵抗も値が揃っていることを確認しました。それでもなお差が縮まらないので、これは基板の銅箔パターンかなっと。

Bba_kai02

修正したのは、COLD側の2段目へ繋いでいるパターンです。HOT側と同じような取り回しにしてみました。

そうすると以前よりも解消してきました。

 

前回のCMRR周波数特性がこちら。

Bba2_08

高域になるとHOTとCOLDの差が10dB以上に広がってしまう。バランス回路なのにアンバランスなところがある証拠です。何となく気持ち悪いですよね。

 

パターン改造後のCMRR周波数特性が下図。

Bba_kai01

まだ完全ではありませんが6dBくらいまで差は小さくなりました。

この6dBの差は銅箔パターンとUEW(ポリウレタン銅線)ジャンパーとの違いかもしれません。完全一致まで行きませんでしたが、とりあえずこれで原因究明ということにします。次回の基板パターンのこの部分は完全に同一になるように気を付けて設計しようと思います。

 

 

そうそう、

「入力信号に対して出力信号に位相差がある」ように見えるとのご質問がありました。たしかに一見すると遅延が発生しているようにも見えますね。

以下のオシロ波形は入力信号を方形波にしたものです。

黄色:入力信号(100kHz方形波)
水色:HOT出力
紫色:COLD出力

Bba_kai03

何が出力されているのかこれでお分かり頂けますでしょうか。

そう、微分波形になっているのです。これは通常の信号入力ではなく同相信号を差動回路に入れているので、コモンモード信号を除去できなかった残りカスみたいなものと考えても良いのですね。通常のNFBがかかった差動のアンプでも初段の負荷抵抗端に現れるのは+入力端子と-入力端子の差分(=信号の変化分)で方形波をいれると微分波形になっているのが分かります。

HOTとCOLDの出力の信号の位相が揃っている点にも注目です。バランス受けすればこの漏れ信号の多くは相殺されるハズです。

 

 

 

 ひずみ率 

次にひずみ率を測ってみました。

シミュレーションでは0.002%程度と非常に小さい値になっていたのですが現実はそんなにうまくはいきません。

Bba_thd1

差動出力で1Vrms時に0.00674% とかろうじて0.01%は切っていますが。。。

 

Bba_thd2

差動出力で2Vrms時には0.01%を超えてきました。 ヘッドホンアンプ用なら出力レベルが小さいとひずみが小さいので問題なさそうな気もしているのですが、DACのポストアンプ用としてはDAC最大出力の2Vrmsが常時使うレベルとなるので、改善したいところです。

 

Bba_thd3

もっと言うならば、アンバランス出力で2Vrmsなので差動出力として4Vrmsになるのが正解。 そうすると0.0697%となります。

これはちょっと考えモノですね。

ただし、10kHz時でも20kHz時でも全く変わらず0.06%程度となっていて周波数依存がないのは良いと感じました。

このひずみはノイズではなく第2高調波と第3高調波が主な成分でした。その点においてはシミュレーションと一致しているように思います。

Balance6

 < 以前やったシミュレーション >

 

 

 

 残留ノイズ 

最後に残留ノイズです。ノイズを測るときはA-waitという聴感補正カーブをかけます。

Bba_noise01

17.8uV という結果。

VFA-01(ゲイン27dB)が16uVだったことを考えると、ゲイン10dBのこのバランスアンプは少し劣っていると考えられますが、ひどいというほど悪くもないという結果になりました。改善できる要素があるとしたら初段と2段目のゲイン配分を変えるくらいですけど、音質の方とのからみもあるので要検討ということにしておきます。

初段を2SC2240など低ノイズトランジスタに変更するという手もありますね。(この回路、初段がノイズ源ではない可能性もありますが。。。)

 

 

 

さしあたっての改善項目は高出力時のひずみでしょうか。そもそも無帰還回路なのでOPAMP並みの数値には届きませんが、やはり0.01%を切りたい所です。

 

続きはまた今度。 気長にお付き合いくだされば幸いです。

 

 

続きはこちらに書きました。

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バランスアンプ」カテゴリの記事

コメント

たかじんさん、ありがとうございます。

矩形波みたいな急峻な変化するヤツだとわかりやすいですね。

いや〜、流石としか言いようがありません。🙀👍

禁断シリーズ、基板実装の未熟者がユニバーサル基板で組んだら、とんでもなく特性の悪いアンプになりそうで怖い。😿

たかじんさん

大変興味深く読ませていただきました。 こういう地道な取り組み方が大切だと良くわかりました。

今のバランスプリのフラットアンプは、HPA-12 × 2で構成されていますが、これって CMRR 0dB だと気がついて青くなってます。
何か改善策はないでしょうか? 
なんちゃってバランスプリと名前を変更しないと(・_・、)

天 婦羅夫さん

そうなんですよ。正弦波の変化分だと位相がずれてるのか遅延しているのか、見た目ではわからないですからね。


三毛にゃんジェロさん

私も思っていた以上に特性に現れるのでびっくりしました。やっぱりパターンって大事ですね。 電源など帯域が広くない場合はユニバーサルで組むと配線が太くできるメリットがありますよ。


n'Guin さん

まあ、回路検証は地道といえば地道ですね(笑)
HPA-12 x 2構成で直接ヘッドホンをバランス駆動するならヘッドホン自体でコモンモードがキャンセルされるので何も問題ないのですが、プリアンプとなると、多少はコモンモードを除去したいような気もしますね。

MUSES72323を2個使ったバランスボリュームも独立した回路を2系統なのでコモンモードは素通りしていますので一緒です。

パワーアンプ側でコモンモード信号をキャンセルしてもらいましょう。

たかじんさん

ぱっと考えたのは、HPA-12の出力にバランス-バランスのトランスをいれてしまう。 ちょうどタムラの TDP-1W が手元にあります。 このトランスは小型のトランスなので、本気でやるなら新しくトランスを入手しないと駄目でしょう。

禁断の ClassAA をフラットアンプにしているほうは、スペースがないので、ラインレシーバを追加するなんてところでしょうか。 SSM2142 というのがあるようです。 

しかしながら、それら自体が音質に影響することを考えると、どうするのがよいやら。

バランス入出力は外来ノイズに強いという思い込みで、バランス入出力アンプを作っていた自分が恥ずかしいです。 

すみません。 前の書き込み、型番が間違っていました。

(誤) SSM2142
(正) SSM2141

フルバランス環境、面白いですよね。
うちでは モノラルDAC>PGA2311 電子ボリューム基板>HYPER PULSE CONVERTERを独立二系統で構成し、オペアンプを外して差動信号を直接入力、信号系のコモンモードノイズ対策はTPA3255に任せていました。

たかじんさんの新DAC、バランス型と聞いて楽しみにしております。

n'Guin さん

タムラのトランスは素晴らしいものが多いので、いい案ですね。

ただ、トランスの音に支配されがちになる可能性もあります。 信号レベルが大きくなると低域側のひずみが多くなる傾向があるので、プリの出力側というのがベストな場所だと思います。

SSM2141などのラインレシーバーは使ったことがないですが、性能を保証するという意味で良い選択だと思います。 TIからもいくつか製品があったと思いますが、秋月などでの取り扱いが絞られたので入手性が悪いです。


降霜さん

ありがとうございます。バランス型アンプは、ちょっと特性の確保に手こずっていますが、ストレスフリーな音は出ているので、(スペック的な)着地点をどこに持っていくか悩み中です。

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