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2022年9月 2日 (金)

スロースタート回路(ソフトスタート回路)を追加する方法

本日は、大型トロイダル/Rコアトランスの大きな突入電流(励磁突入電流)によりヒューズが切れてしまうのを防止するスロースタート回路のお話です。ソフトスタートと呼ぶこともあります。

トランスのインラッシュ電流の発生原理については以下をご覧ください。

励磁突入電流とはどのような現象ですか?

Slows_00

300VAのトロイダルトランスを使ってバラック状態で検証しました。このようなバラック状態は危険なので真似しないでください。

回路図にすると以下のようになります。

Slows_01

      < スロースタート回路例 >

R1の抵抗値は電源電圧に応じた計算が必要。R2はわりと適当ですが実測すると良いでしょう。

 

 

抵抗値の計算

PRT-02 rev2基板はリレーコイルを駆動する端子(J6)があり、そこからR1を通して24Vリレーのコイルへ繋いています。

  R1 =(±電源電圧 - 24V)÷ リレーコイル電流

電源電圧が±30Vの場合で計算すると、+電源と-電源を合わせた60Vからリレーの24Vを引いた分をR1が受け持つことになり、

60 - 24V = 36V

リレーのコイル電流は、G5G-1Aの仕様から20.8mAなので、36V÷20.8mA=1.731kΩ となります。

近似値として、少し電流が低くなる方で1.8kΩを使用します。

 

R1の許容電力は、36V^2 ÷ 1.8kΩ =0.72W  ディレーティングを考慮して2W品、もしくは3W品を使います。

つまり R1 は 1.8kΩ 3W (±30V電源時)

 

R2はトランスに依存しますが、500VAクラスであれば10~22Ω。5~10Wのセメント抵抗を使用します。

実際のインラッシュ電流を見て、R2抵抗値とヒューズを決めるのが確実です。

目安としてはヒューズをトランスの定格の1.2~1.5倍程度にできればOKと思います。

 

 

 

インラッシュ電流の実測

300VAトロイダルトランスの1次側ケーブルに電流プローブを付けて電流を観測してみました。
(ウチにある最大のトランスが300VAでした)

本来300VA以下のトロイダルトランスならスロースタート回路は必要ありません。500VA以上のトロイダル/Rコアトランスの場合は入れた方がヒューズ(CPなども)を選びやすくなります。

 

Slows_02
     < スロースタート回路なし >

間隔をあけて30回くらい電源ONを繰り返した中で最も大きかったインラッシュ電流は約60Aでした。寒い冬などに行えばもう少し流れるかもしれません。1発目の電流だけが飛びぬけて大きいのが突入電流の特徴です。この1発でヒューズを切ってしまう誤動作が起きます。

300VAトランスは定格電流が3Aなので、その2倍の6Aヒューズを使ったとしても、さすがに60A流せば切れる可能性があります。

500VAのトロイダルなら100Aを優に超えると思われます。 

 

 

 

次は、スロースタート回路を入れた場合。

Slows_03
   < スロースタート R2=20Ωを使った場合 >

こちらも30回程度繰り返しONした時に最も大きな電流が流れたもの。上のオシロ画面と縦軸ディビジョンが10倍違う点に注意してください。

ピーク電流で6Aに達しません。

約150ms後にリレーがONして、二つ目のピーク電流が見えます。高い時で3A程度でした。

これなら6Aヒューズはインラッシュ電流で切れる心配はありませんね。5Aや4AヒューズでもOKと思います。

 

ヒューズは、万一、故障が起きたときに速やかに切れてくれるのが正しい使い方(部品選択)です。インラッシュ電流に耐えるドでかい容量を入れておくと、万一の時にヒューズが切れないという本末転倒なことになってしまいます。

可能な限り小さい電流のを使い、尚且つ、インラッシュ電流で切れないのが理想です。

そのバランスをとるのがスロースタート回路の最大の目的、役割りです。

 

 

 

使用部品

秋月・千石で部品が揃います。部品は200円くらいです。

K1 16A/250V パワーリレー G5G-1A 60円

D1 ダイオード 1N4007 10円

R2 セメント抵抗 10W20Ω 50円

R1 酸化金属皮膜抵抗  計算して下さい。20~40円  秋月 千石

リレー端子用のファストン端子 #187 10円 x2個

 

組む時は、コンセントの100Vである点に注意して絶縁距離、縁面距離をしっかりとって配線して下さい。

 

 

使用した電流プローブ

 

 

※)近年ではDC/DCコンバータやAC/DCコンバータでデカップリングコンデンサへの突入電流を抑えるために出力電流を制限しながら立ち上げる回路のことをソフトスタートと呼ぶ事が多くなり、ネット検索してもトランス1次側の励磁突入電流を制限することに関して書いてあることは稀です。

 

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パワーアンプ」カテゴリの記事

コメント

私もALX-03に500VAのトロイダルトランスを使っていてインラッシュカレント対策をどうしようかと悩んでいました。整流ダイオードとケミコンの間に10W10Ωのセメント抵抗をいれることにしました。その抵抗を短絡させるために、スピーカー保護リレーが使えないかといろいろ探しているとアマゾンで中華製のものを見つけてそれを使っています。
スピーカー保護用ですのでDC検出やリレー制御にNECのμPC1237HAというICを使っていて、リレーはオムロンG2R-2です。接点容量は2極を並列になっており10Aまで大丈夫のようです。遅延時間は3ケ買いましたが3~5秒でした。
基板がコンパクトで70ミリ×56ミリ、価格が2000円ちょっとと安価です。使う場合はスピーカーDC検出用のパターンをカットする必要があります。
使い勝手は良好で問題とすればリレーが密閉型ではないのでいずれ交換が必要ですので予備を購入しています。
参考まで。

マイペースさん

2次側に入れてもトランス自体の励磁突入電流には効果がありません。市販されているオーディオアンプでも1kVAを超えるトランス搭載のパワーアンプの多くに1次側へリレーを入れているのは、励磁突入電流対策のためです。

ただし、巨大な整流コンデンサ容量に対してダイオードのサージカレントが少ないSiC SBDを使用する場合にはとても効果的です。

2次側は1次側に対して数倍大きな電流が流れるため、リレーの電流容量は大きなものが必要になるのと、接点不良になった場合の危険性を考慮しておく必要があります。 
市販アンプではこのように寿命問題がでてしまうので、通常は2次側整流部にリレーを挿入しないのですが、自作ならではですね。 痛む前の定期交換が良いかと思います。 3個購入とのことで、その辺もご配慮されているのですね。 さすがです。

たかじんさん

記事をありがとうございます。 
どうやったら記事にあるようにオシロに表示させられるのでしょうか。 そのあたりを教えていただけないでしょうか。 

専用のプローブなどがあるのでしょうか。

よろしくお願いします。

たかじんさん

2次側に抵抗を入れてもトランスのラッシュカレントを防げないということですが、何か問題になることはありますか。着磁するとか・・・・
メーカーのカタログなどを読んでみましたが、インラッシュカレント対策をどうしているのかが分かりませんでした。入力側にたかじんさんの記事にょうなソフトスタート回路があるのかもしれません。ずっと悩んでいたところ、どなたかのブログで2次側に抵抗を入れているとの記事があり実行してみました。

n'Guinさん

電流プローブはこちらを使いました。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/2018/07/post-c6df.html
バラック状態の写真の左の方にちらっとだけ水色のプローブが写っています。以前より価格が上がってしまいました。それでもテクトロやキーサイトなど一流メーカーの電流プローブより圧倒的に安価です。
帯域はDCから20kHzと狭いですが、AF帯域のオーディオアンプ検討には十分です。


マイペースさん

突入電流が問題になるのは記事に書いている通り、ヒューズを最適なものにできないという点です。 安全のために入れているヒューズなのに、突入で切れないような大容量をつかってしまうと、万が一のときに切れないというのは、何の意味もありません。

市販アンプの回路を見てみたいと思ったら、海外サイトのマニュアルを検索すると良いですよ。 例えばデンオンPOA-3000、サンスイB-2201、パイオニア(エクスクルーシブ)M5など。
https://www.hifiengine.com/
あたりが有名かと思います。

たかじんさん

海外のサイトの紹介、ありがとうございます。勉強になります。

市販のオーディオ機器は購入した人の自宅で機器が燃えないこと。感電しないこと。など安全面は必ず守っています。それは音質云々よりも優先されます。
また、寿命が短いと数年後には営業しにくくなり、結果的に自分の首を絞める行為になりかねません。

それらの意味も含めて市販製品の構成を見てみると良いと思います。

PCBと比較するとものすごいサイズのトランスですが、二次側30V5Aとかでしょうか。
未だにACアダプターな私には異界のようですが(汗)

天 婦羅夫さん

そうですね。300VAでもそこそこの大きさがあります。 25V-6A が2回路です。 整流後で37Vを超えていて8Ω60Wくらいでると思います。

ACアダプターでも羊羹型のもので音の良いものもありますね。PC用のアダプタが19Vで3Aなんてのが秋葉原で売っていたりしますね。 中古が安く出ていたりするとねらい目かも。

電源電圧が低いとアイドリング電流を上げやすいというメリットもありますし。

ケースに収まった姿も圧倒されますね。重量も6~7キロはありますか。
PC用の流用も出来ますね。20Vのがあった気が…

たかじんさん、みなさん

電流プローブの紹介をありがとうございました。
もう一点、教えてください。

たぶんトリガーのかけかたかと思うのですが、電源オンの瞬間をどうやって表示させるのでしょうか。 参考になる本とか、ウェブページを教えていただけないでしょうか。 検索のかけかたが悪いのだと思うのですが、よくわかりません。

よろしくお願いいたします。

天 婦羅夫さん

トランス単体で3キロくらいあると思います。問題は電圧がちょっと高すぎることです。 自宅用だとパワーが欲しい訳ではなく、アイドリング電流を増やしたいのですが。。。 37Vもあると250mA流しただけですぐにアチチになってしまう。 ほんとは500mA流したかったんですけどね。

古いノートPC用の12V品が0dBHyCAAで使って良い音がしていました。 ノートPCが30万円以上していた頃、ACアダプタにもお金がかかっていたのかもしれません。


n'Guinさん

トリガーは普通にレベルで掛けてます。この場合電流値で。 トリガモードはシングルかノーマルモードを使います。 AUTOだと、捉えた次の瞬間に流れていってしまいます。

https://www.techeyesonline.com/article/tech-column/detail/Basic-Topics-040/
こんな感じです。

ヒストリ機能があるオシロだと、トリガーがかかった画像を複数枚とっておいて、巻き戻しして見ることができます。

たかじんさん

ご教示ありがとうございます。
自分もやってみます。
いつもながら、感謝です。

本日スイッチサイエンスさんから在庫(PRT-01)復活のメールがあったので注文いたしました。納品ありがとうございました。Rev2ですよね?画像および回路図、部品表のリンクがRev1のままですけど。

onajinn さん

大変遅くなってしまいました。 PRT-01はNEWバージョンになっているはずです。
回路図、部品表は直リンクになっているので古いものになっています。 そちらを消すと旧タイプを持っている方が困ってしまうため残してあります。

サポートページのみのリンクにして、写真を入れ替えてもらうように依頼してみます。
その他にも登録してもらいたい基板もありますし。

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