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2022年8月28日 (日)

アンプの出力Lの影響 音質劣化していた?

オーディオアンプの出力に空芯コイルを入れるのは、C負荷からアンプの発振を防止するためです。

詳しい説明はここでは行いませんが、先日のインピーダンス測定で気になったところがあったので検証してみました。

Coil6t_00

直径12mmで10T(ターン)を標準にしてきましたが、おおよそ半分のインダクタンスの6Tを作って実機検証です。

 

そもそも気になったのは下記の測定結果です。

Remotes_04

リモートセンシングしていないノーマル時の特性で、3kHz以上の高域でインピーダンスが上昇していますね。これがNFB量の低下によるものなのか空芯コイル自体のインピーダンスなのかが気になりました。

Opamp_tester_14

NFB量が低下する高域では出力インピーダンスが高くなっていきます。というか、NFBにより出力インピーダンスを下げているともいえる。NFB量による改善効果は歪に関しても同様で、可聴帯域におけるNFB量を一定にするのが良いという思想が昔からあります。

 

Coil6t_01

LCRメーターで計測したところ10Tは0.66uH、6Tは0.32uHでした。

Φ12, 10Tで1uH狙いだったのですが少し小さめにできているみたいです。

 

 

 

実際に載せてみる

Coil6t_02 
 < 10Tの空芯コイルを搭載していました >

 

Coil6t_03
    < 6Tの空芯コイルに変更 >

 

 

測定

Ultra-Low Impedance Analyzer基板で測定してみました。

Coil6t_10

6Tの方が高域のインピーダンス上昇が抑えられているのがわかります。つまりアンプのNFB量低下によるものではなくコイルの影響が出ていたということです。

空芯コイルは可聴帯域を遥かに超えた高周波領域でしか効いていないと思っていたのですが、もろに可聴帯域に影響を及ぼしているみたいです。

計算もせず勝手な想像で20年以上思考停止していました。これは反省しないとですね。

 

 

 

という訳で、コイルのインダクタンスも計測したので理論値をエクセルで計算させてみました。コイル単体も実測しています。

コイルのインピーダンスは Z = ωLで求めます。

Coil6t_11

上の2本は10Tと6Tコイルを搭載した時のアンプの出力インピーダンス特性で、上のグラフと一緒です。

点線:コイルのインダクタンスから計算した理論値。
実線:「6T coil」「10T coil」はコイル単体を測定結果。

この二つは1kHz以上の高域で実測と完全一致しており、1kHzより低域側では銅線の直流抵抗により底打ちして理論値から乖離しています。

出力インピーダンスが高域でコイルのインピーダンスと重ならないのは、アンプ基板からアンプの出力端子までの配線や、出力リレー、コネクタ接点の抵抗性分と思われます。

 

 

 

音質への影響は

さてさて、肝心の音の感想ですが、

 

なんと、コイルを6Tにしただけでぐっと音ヌケがよくなりました。リモートセンシングで出力インピーダンスが激減した時は差は僅かだったのですが、こちらの方が音に影響を及ぼしているとは。。。

ボーカルまでの距離感が近くなったような。全体的に空気が軽くなって余韻がキレイになりました。エミッタ抵抗をデールNS-B2に交換したほどではありませんが、ちょっと驚きの変化です。

人の耳ってどこをどうやって聞き分けているのでしょう。不思議です。

10Tコイルは音質劣化を引き起こしていたのでしょうか。落ち着いた雰囲気といえば少し擁護しすぎな気がするくらいです。

 

 

ただヤミ雲にコイルを小さく(削除)しても良いものなのかと言うと、入れている理由を考えると、それは違います。

 

 

C負荷安定度は

そもそも、この空芯コイルはC負荷に安定度を確保するためのものなのでインダクタンス半減でどうなるか気になりますね。音を聴く前に、こちらを検証すべきです。

 

まずは、10T時の安定性からみてみましょう。10kHzの2V方形波(4Vpp)で評価しています。

8Ω負荷。8Ω//0.47uF並列。0.47uFのみ。

L10t_r8L10t_r8_c474L10t_c474

 

同様に6Tコイルの場合の8Ω負荷。8Ω//0.47uF並列。0.47uFのみ。

L6t_r8L6t_r8_c474L6t_c474

どちらもキレイに収束していて発振の予兆はありません。細かく観察すると6Tの方が共振周波数が高くなっています。

 

6Tの空芯コイル(0.33uH)でもSMR-01は安定しているという事がわかりました。 C負荷の安定性はアンプの位相余裕やNFB量も影響するため、他のアンプ全てが空芯コイル6TでOKという訳ではありませんのでご注意ください。

 

終段無帰還のHPA-1000では、出力コイルなしでも問題ありませんでした。

反転増幅を採用して安定度抜群のSMR-01は、もう少しコイルを小さくしても問題ないかもしれません。

 

 

 

※ まじめにC負荷安定度を見るのでしたら、3300pF、0.01uF、0.033uF、0.1uF、0.33uF、1uFくらいを切換えられるC負荷BOXを作って検証するのが良いです。

 

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パワーアンプ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
ALX-03でも同じことですかね。早速、
ここのLの値は雑誌の製作記事やメーカーのカタログなどで音質に関係しているという情報は聞いたことがありませんでした。トライして価値がありそうなのでやってみます。

マイペースさん

ALX-03は使用するOPAMPで位相余裕が違う可能性がるため、Lを減らすときは発振にお気を付けください。

メーカー製のアンプでも出力コイルを取り除いたアンプというのがあったと思います。型名など思い出せないのですが、危険なことをすると驚いた記憶があります。 とはいえ、きっちりと検証して出荷しているハズです。

エミッタ抵抗を省いたというアンプも存在します。こちらも動作安定度をどうやって確保するのか工夫が必要なはずです。

> 可聴帯域におけるNFB量を一定にするのが良いという思想

イコライザ・アンプの場合は、そのような主張を聞いたことがありますが、パワーアンプもですか。
パワーアンプの場合、ゲイン交差周波数を高く取ることができないので、結構きつい条件となりそうです。この「一定」の評価の仕方にも依りますが、非理想的な特性をどの程度に抑制されるかといった指標で考えてみます。
一巡伝達関数(NFB量)をLとしたとき、その値は1/(1+L)となります(感度関数)。素晴らしいアンプでもゲイン交差周波数は300kHz程度なので、15kHzにおいては、その値は0.05程度となります。150Hzにおいて、その値が0.003程度とすると、その差は0.047程度となり、15kHzでの感度関数の値(およそフィードバック量の逆数)に近い値となります。
したがって、可聴域の高域におけるフィードバック量を高く取ることが、差を小さくする上で効果的だと思われます。

ところで、空芯コイルについて、以前から少し気になっていることがあります。
というのは、トロイダルコアに数ターンだけコイルを巻いてフルデジタルアンプの出力LCに使用したことがあるのですが、その際はコイルをコアに接着剤で固定すると、音が変わった経験があります。空芯コイルの場合は、流れる電流によるコイルの変形の影響はあまりないのでしょうか。それとも、コイルを巻く際に密着するように配慮する必要があるのでしょうか。

VFA-01を今作っていますが、同じ出力コイルで気になったのが
普通に巻いただけでは巻線が固定されておらず指で弾くと
ビンビン鳴るのと、巻いた後に力が加わると簡単に変形してしまうと
いうところです。
そこで9mmのアルミ棒にガッチリ巻いてから引き抜き整形した後に
コイル用ワニス(オヤイデさんで売ってるもの)に漬けてそのまま
引き上げて乾燥させたらいい感じに固まりました。

・・・ただこのプロジェクトは抵抗のハンダ付けの際にコンデンサを
避けるのを忘れて修復不能に陥り基板を買いなおそうと思ったら
在庫なしでストップしています(笑)

フルデジタルさん

イコライザのNFB量は低域で不足しがちなので、そこを増やすって話ですよね。 考え方としては一緒と思います。

真空管アンプの時代から、局部帰還にて特性を伸ばしてオーバーオールNFBは適量(せいぜい10~15dB)にするという手法が多く取られてきました。
半導体アンプの世代でも同様に局部帰還をかけてオーバーオールNFBを適量にする手法がある一方、オープンループ特性を伸ばしてNFBを広域で多量に掛けるという設計手法もあり、どちらも可聴帯域で一定のNFBを掛けています。ただ、根本的にNFB量が異なり狙っているところは違います。

SMR-01は後者の多量NFB一定で設計していて、オープンループゲインを約100dB、1stポールは約10kHzとしています。フルデジタルさんほどのお方でしたら、回路図を見ると大体把握できるかと思いますが、2段目の励振段に位相補償をいれておらず、増幅帯域を極限まで伸ばしています。仕上がりゲインを27dBとするとゲイン交点は10MHzくらいになります。

そのままでは発振するため進相位相補償(C3)でグッと帯域を制限しています。
進相位相補償は高域のNFBを深くかけることになるため高域のNFB量が減っている訳ではありません。
シミュレーションのボーデ線図を載せておきます。
https://i.postimg.cc/mk67Ln6Q/2022-08-31-182119.png

空芯コイルのダンプというか固定は、もしかしたら効果あるかもしれませんね。 密着させずに巻くと、インダクタンスが目減りします。


levi さん

おっしゃる通り、コイルは固定した方が良い可能性がありますね。

今、基板上のコイルを指ではじいてみたのですが、コツ、コツといった感じでビンビンに鳴く感じではありません。 とは言っても大電流を流した時に振動する可能性は高いと思います。

VFA-01基板、リピート製造しないと在庫ありません。 しばらくお待ちください。

たかじんさん、皆さん

記事を読んで、複雑な気持ちです。 VFA-01BTLをいじってみたい気持ちと怖い気持ちと。

高域安定性とのトレードオフですので。荘でなくても安定性の悪いBTLですので。 改善するつもりが、発振させて壊してしまいかねません。 安定動作しているだけに。

ふと思ったのは、トランジスタアンプの自作は、だいぶ敷居が高い趣味かもしれないということです。 真空管アンプの場合はデッドコピーも、結構安定です。 トランスという周波数制限素子があるからです。 トランジスタアンプはそうはいかないように思います。

そのかわり、オンリーワンも作れるわけで。もちろん私のように基板設計ができない者にとっては、たかじんさん頼りなのですが。 感謝です。

全く関係無いのですが、
今週末のMaker Faire Tokyoにはご出展されますか?

QUA さん

Maker Faire Tokyoには申し込みすらしていませんでした。。。 

n'Guinさん

n'GuinさんのVFA-01 BTLは、やっと安定したので、いじらない方が良いかもしれませんね。VFA-01は多量NFBなので、なにかバランスを崩すと発振に至ります。

逆に局部帰還をかけてオーバーオールNFBが少ないアンプは発振しにくい。真空管アンプの多くが低NFB設計、もしくは無帰還なので発振しにくいのだと思います。

> 2段目の励振段に位相補償をいれておらず、増幅帯域を極限まで伸ばしています。

よく回路図を見ずにコメントいたしまして、済みませんでした。
300kHzのポールはR2とC3によるものだったのですね。
そして、Q7, Q8のベース‐コレクタ間容量が位相補償コンデンサとして働かないようにQ5, Q6を入れてあるといった拘りぶり。失礼いたしました。

ところで、写真を見て気になったのですが、10tコイルの方は、エミッタ抵抗と磁気的に干渉していないでしょうか。磁気を考える場合、閉回路で捉える必要があるので、エミッタ抵抗とコイルは、面積にして半分くらい干渉するように思います。エミッタ抵抗には出力電流に対して歪んだ電流が流れるので、磁気的な干渉やコイルに掛かる応力が気になります。問題があるかどうかは、やってみないと判らないところが大きいですが。

フルデジタルさん

おっしゃる通り、コイルとエミッタ抵抗は近いですよね。 直交する向きなので大丈夫かと思って基板を設計したのですが、実物をみるとやっぱり近いなって思います。
写真を撮る時はエミッタ抵抗をまっすぐにしていますが、実際に使うときはパワートランジスタ側へと斜めに倒しています。

私も気になっていたので実験してみたところ、近くても倒しても殆ど差を感じませんでした。倒したくらいの距離では影響を断ち切れない可能性もあります。
このエミッタ抵抗を分解した写真は下記です。無誘導構造で磁力をキャンセルするようになっています。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/2022/05/post-b0bd4b.html

たかじんさん
MFT2022行ってきました。
前回に比べてオリジナルキット等を販売している方は少なかったように思います。
前回、たかじんさんのDACに偶然出会ったような感動はありませんでした。

QUA さん

MFT2022は結局、時間がとれなくて行けませんでした。

審査が非常に厳しくて簡単には展示できないんですよね。 昔から展示しているところが優先されるみたいで、新規枠が特に厳しいように感じます。 実用性を考えない「ド派手でインパクト重視な作例」を持って行くしかないのでしょうね。

以前、展示させていただいたときは、古くから展示されてらっしゃる方のところに間借り状態だったのです。

出展がそれほど難しいとは知りませんでした。
確かにインパクトのある展示が多かった気がします。

MacKit30とMC60を復活させようとしています。
UNITYCAUPLED真空管アンプで2つの6L6GCのPlate端子に、それぞれ1.5uH、2.7uHがつながっています。電圧は440Vかかります。発信防止と考えてよいでしょうか? また、自作できるとしたら、どうしたらよいでしょうか?
オリジナル部品が手に入らず困っています。

MM さん

MacKit30とMC60 ですか。 電圧が高い真空管アンプは危険が伴いますので、どなたか経験豊富な人に相談した方がよいかと思います。

プレート端子に小さいインダクタが付いているのは、見たことありません。
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/cc/fc36cf3e31de6437bfe13ef8f340fed9.jpg
この辺かな?

ALX-03でコイルを6ターンにしてみました。音はたかじんさんのコメント”なんと、コイルを6Tにしただけでぐっと音ヌケがよくなりました”と同じ結果でした。
私のALX-03はオペアンプをMUSES03からディスクリート金田式に変更しています。たぶん特性はそう変わらないと思います。発振はなく音は◎ですので、このまま様子をみてみます。今年の初朗報です、とりあえず報告まで。

マイペースさん

6ターンのコイル。いいですよね。 私もこんなに利いているとは思っていませんでした。
金田式オペアンプですか。 いつもの差動2段の?

このサイズに収めるのは大変そうですが、面白い試みですね。 私もダイヤモンドバッファを組んで8ピンソケットに挿してみようかと思っていたのですが、ずるずると時間が過ぎてタイミングを失っていました。

金田式は例の差動2段です。やなさんから基板が頒布されていましたがディスコンになってしましました。資料はまだ見ることができます。http://yanasoft.jp/yana/k02m.html
やなさんはこの金田式とLH0032の2タイプを作られていました。LH0032タイプも製作しましたが音は今一つでした。

2SK2145などチップ型デュアルFETもありますので、たかじんさんにもディスクリート型オペアンプの開発もお願いしたいところです。プリアンプ、メインアンプ全段、DACIV変換などたくさんの応用が考えられます。部品点数は意外と少ないですが、基板が小さいためはんだ付けには苦労しますが(笑

マイペースさん

やなさんの基板ですか。 確かに金田式ですね。
ALX-03のバッファ部をディスクリートにするなら、単純なダイヤモンドバッファという手もありますし、ちょっとひねったアキュフェーズ方式のバッファも考えられますね。もちろん通常のOPAMPとは互換性がなくなりますが、よりシンプルでプリミティブなカレントフィードバックアンプになると思います。

差動アンプの初段までフィードバックが届くのはアレキさんの良いところなので、そこを普通にしてどうするのとツッコミがありそうですけども。。

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