OPAMP TESTER アナログディスカバリ用基板
オペアンプの偽物が沢山売られているのを見て、それらを簡単に判別ができないか、昨年あたりからボーっと考えていました。
そんなとき、キーサイトのwebサイトでオープンループゲインを簡単に測定する方法が紹介されているのを発見しました。
https://www.youtube.com/watch?v=2ar9b0b85IA
非常に簡単な回路でオープンループゲインを測っていたので、基板を起こしてみました。
完成した基板は、こんな感じです。
DUALチャンネルのオペアンプのch-1とch-2、SINGLE チャンネルのオペアンプを測定できるようにしています。挿すのは一度に1箇所だけです。
アナログディスカバリとの接続は「サイド型の30pinソケット」なのですが、手持ちでなかったのでこの写真のように配線が必要なところだけソケットを付けて実験してみました。
結果は、こんな感じ。NJM2114のGB積の高さが際立ちますね。
本来、低域のオープンループゲインは100dBを超えるくらいまで到達するハズですが、おそらくアナログディスカバリの14bit ADCの分解能の制約で80dBちょっとくらいで頭打ちしているのだろうと思います。
それでも、GB積に相当する斜め線ははっきりと見えていて各オペアンプの差をとらえることが出来ています。
またアナログディスカバリから供給できる電源が±5Vなのでオペアンプのスペックシート通りの数値とは違います。外部から±15Vを供給すればカタログスペックと同様の観測が可能になると思います。
オープンループゲインの他、クローズドループゲイン、スルーレートなどを測定することができます。GB積も画面を見て計算すればOK。
偽物が多く出回っているOPA627、OPA637も測ってみました。 先ほどのNJM2114と比べるとOPA637の異常さが分かりますね。
こちらが回路図です。クローズドゲインを40dB(100倍)にしているので、通常のオペアンプならC1(10pF)は付けなくても発振しないと思います。
ユニバーサル基板でも製作可能な基板ですが「この基板が欲しい」というリクエストが多数ありましたら頒布してもいいかもしれません。
NE5532オープンループゲイン対決!!
— Takazine (@TakazineZone) July 16, 2022
各社で僅かに違いがあるみたい。
個人的な感想ではNJMはぶっとい音、TIはキラキラ透明、philipsは繊細ナチュラル。
あとNJMは発振しにくい。 pic.twitter.com/kWvJJwTtXv
こちらはオフセットも調整して最大限ダイナミックレンジをとらえるようにして測定した物です。最大94dBまで見ることが出来ました。
=== 部品関係(秋月電子)============
OPAMPソケット 2227MC-08-03
1kΩ 1%金属皮膜抵抗 MFS25F1KB
100kΩ 1%金属皮膜抵抗 MFS25F100KB
10uF25V X7R セラコン GRM31CR71E106KA12
L字2列ピンソケット 30p FH-2x15RG
=== 関連記事 =================
AnalogDiscovery OPAMP TESTER基板の使い方のコツ
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面白そうですね。
偽物探しとしてではなく、OPAMPの品番別の差異を可視化できることに興味を持ちました。
だから何が出来るのか、という想像が働かないのが技術のない残念さなのですが、それでもなんとなく面白そうですねぇ。
例示されているチャートで
2114が示すカーブの意味はどういう風に解釈されるのか、
そのあたりも理解できると楽しいのかも?
でも、ANALOG DISCOVERY持っていないから、なぁ。
投稿: sawanoriichi | 2022年7月18日 (月) 17時15分
是非、頒布してください。
できれば、正負両電源を外部から供給できるような回路だと嬉しいんですが。やはり、±12Vや±15Vの特性を見てみたいもの。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2022年7月18日 (月) 17時43分
sawanoriichi さん
OPAMPの特性をこんなに簡単に測定できるのは、アナログディスカバリの凄いところです。
ただ、価格やが安くないので、テスターを買うような勢いでは難しいですね。
2114のカーブは2ポール位相補償です。 高域でステップダウンフィルタが入っているような形状で、発振しやすい領域の位相を持ち上げる効果があります。
投稿: たかじん | 2022年7月19日 (火) 19時53分
三毛にゃんジェロさん
外部電源を使うことで、アナログディスカバリの手軽さを少しスポイルしてしまいますが、絶縁DC/DCの±12V、15Vあたりのモジュールを使うならアリですね。
USB-Cのコネクタから5Vを供給すれば良いですし。まあ、DCDCのスイッチングのノイズ影響がどこまででるか、というのは試してみないと分かりません。 スイッチング周波数である100k~300kHzあたりに変な特性が出る可能性は捨てきれません。
投稿: たかじん | 2022年7月19日 (火) 20時24分
たかじんさん
単電源DC30Vでもいいんですが、やはりオペアンプが最高の性能を発揮するとされる電源電圧に近い状態での特性が知りたいですね。
流石に±5VでMUSES01の本当の実力を測れるとは思わないので。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2022年7月19日 (火) 20時39分
三毛にゃんジェロさん
MUSES01は利得帯域幅(GB積)が3.3MHz、ユニティゲイン周波数が3MHzというスペックです。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/MUSES01_J.pdf
こちらからの数値。
上の測定結果のグラフをみると、ユニティゲインは直読可能で3MHz。
GB積は10kHz で 52dB(398倍)なので、10k x 398倍 = 3.98MHz となります。
つまりスペックシートの数値は出ていることになります。あとはSRを測定するとどうでるか? という部分ですね。
それと、電源は±9V~±16Vと謳っているため、バラツキなどにより±5Vだと特性がでない個体もでてくるかもしれません。
投稿: たかじん | 2022年7月19日 (火) 22時52分
最近のいくつかの記事を拝見し、ANALOG DISCOVERY2が休眠状態にあることを思い出しました。
メルカリで未使用品を買ったものの、何年も前ですっかり忘れていました。
MIX-10ESで20個位、電圧的に駆動できる手持ちのOPアンプを聴き比べしたのですが、はっきりとわかった5532のNJMとTIの違いをもたらす要因の一つはここなのでしょうね。
(MIX-10ESのほうも、その違いが判別できる性能ということですね!)
上の方がおっしゃられているように、他も含めて、ぜひ音の違いの可視化をこの基板でやってみたいです。
投稿: たーきー | 2022年7月20日 (水) 02時32分
たーきーさん
ANALOG DISCOVERY2は供給できる電圧の調整が可能で、電流も増えているらしいですね。
おっしゃるようにオペアンプの音質を可視化できると嬉しいのですが、そこは非常に難しい課題だと思います。
とはいえ、特性の差が与える音への印象というのは、何か傾向がつかめるかもしれません。
投稿: たかじん | 2022年7月20日 (水) 20時50分
たかじんさん
ユニバーサル基板で回路図のものを何とか作って、入力に対し100倍された波形が取れ(SC1_Pのところ)喜んでいるところです(笑)
正負電源入力端子もつけてみました。
ユニバーサル基板でノイズの影響を受けないか心配ですが、、、
ほんと素人質問で、間違った理解をしていたらすみません。R2を切り離さないとオープンループゲインの測定はできないのでは?と思ったのですが、実際の基板ではなにか仕組みが入っているのでしょうか?
投稿: たーきー | 2022年8月 2日 (火) 18時58分
たーきーさん
おぉ、ユニバーサルで自作されましたか。
そうそう、クローズループのままオープンループが測れるっていうと不思議に思いますよね。
詳しくは上の方のyoutubeのリンク先をご覧になると良いのですが、マイナス入力端子の信号を計測することでフィードバック量が分かるため計測時の40dBと足してオープンループを計算するという原理になっています。
ソフトのセッティングに少し癖があるので、後日まとめてみます。
投稿: たかじん | 2022年8月 2日 (火) 21時19分
たかじんさん
ありがとうございます。
動画を見て、入力を足すことでオープンループを測定する時と同等の測定になることに気が付きました。(合っているでしょうか?)
ユニバーサル基板は最初すぐできるかな?と思い作り始めると、実態配線図や、実際のはんだ付けも、桐井研究室さんの「LM1972を使った電子ボリューム」と同じ位と感じるようになり、考えてみるとICソケットが三つあり、信号や電圧の入力端子、出力端子、その他部品数など同じくらいの規模でした。
投稿: たーきー | 2022年8月 2日 (火) 23時31分
たーきーさん
そうです。正解です。 クローズドループゲイン+NFB量でオープンループゲインを算出しています。
この規模の回路でしたら、空中配線も使って最短+クロストーク低減してあげれば、さほどシビアに考えることなく作ることができると思います。
ICソケット3つで、それぞれに測定誤差が出ないようにするところはちょっとだけ気を使いました。
桐井研究室さんも良い配線ですね。しかも分かりやすいですし。
投稿: たかじん | 2022年8月 4日 (木) 22時50分
ANALOG DISCOVERYとANALOG DISCOVERY2
の違いはどのくらい影響がありますでしょうか?
記事を拝見して、試してみたいと思いました。
ANALOG DISCOVERY PROは流石に手が届きませんが、
ANALOG DISCOVERY2もかなり勇気が要ります。
ANALOG DISCOVERYなら何とかと思っています。
よろしくお願いいたします。
投稿: QUA | 2022年8月 8日 (月) 01時35分
QUA さん
ANALOG DISCOVERYの1(無印)と2との測定能力の差は、殆ど無いと言えます。
供給できる電源が±5Vが可変(でも最大が±5V)になって、供給電流が50mAから250mAまで増えたところが大きな違いです。(この機能自体、あまり使わないと思います)
価格差が2~3千円くらいなら2をおすすめしますが、現状の価格なら1で十分と思います。
特にオシロ目的であれば、5万円だすなら1Gsps、4chの物が買えますし。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/2021/12/post-111eec.html
投稿: たかじん | 2022年8月11日 (木) 15時42分
ようやくコロナ禍も落ち着いて秋葉原に行く機会ができたので
DISCOVERY(無印)を買おうと秋月に行きましたが、姿を消していました。
通販で買っておけばよかったかなと。
でも現物を見て店員さんから買いたい派なので仕方ありません。
2は結構高いし、オシロは持っていますので、今回は縁が無かったということで。
投稿: QUA | 2022年11月16日 (水) 00時24分
QUA さん
ついに無印のAnalogDiscoveryが売り切れてしまったのですね。
オシロスコープがあるなら、そちらでOKと思います。 普通に波形をみたいときは、圧倒的にオシロの方が見やすいと思います。
投稿: たかじん | 2022年11月20日 (日) 09時29分
たかじんさん、そう言っていただけて安堵です。
ちなみに2SA1494はまだありましたが、
2SC3858はもう無くなったようです。
投稿: QUA | 2022年11月21日 (月) 01時11分
この基板の在庫はまだあるでしょうか。
あれば1枚購入したいと思うのですが。
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2023年11月24日 (金) 20時12分
三毛にゃんジェロさん
基板、まだ残っていました。 大丈夫です。よろしくお願いいたします。
投稿: たかじん | 2023年11月26日 (日) 15時43分
たかじんさん
秋月に2x15のL型ソケットピンがあるのを見つけ、Analog Discoveryと基板を同一平面上に置けることがわかったので決断しました。😹
投稿: 三毛にゃんジェロ | 2023年11月26日 (日) 16時04分
三毛にゃんジェロさん
L字ソケットありますね。 私も買いました。
投稿: たかじん | 2023年11月26日 (日) 22時04分