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2020年11月29日 (日)

SPDIFとHDMI-I2S接続のジッターを比較

20年以上前からカーオーディオ、スピーカー系自作サイトで有名なCyberPit HILOさんのフルデジタルアンプと接続してみました。CyberPit HILOは、電話回線+モデムで接続している時代から時々見ていました。現在も現役で開発記事をUPし続けているところもスゴイですが、内容も技術力もすごい。

今回接続したのは、PCM9211というSPDIF、I2S、ADCを内蔵したICをフロントエンドに使っているTAS6422フルデジタルアンプ基板です。

Hdmi_spdif

ブロック図で表すと以下のようになります。

 NorthFoxDigi基板  -->  HIROさんのフルデジタルアンプ

Spdif_hdmi_a

今回、optical接続は、私の方の基板のミスで接続できませんでしたが、SPDIFの同軸接続とHDMI-I2S(LVDS)の2種類の接続が出来ます。

PCM9211は、SPDIF入力した信号をI2Sへ出力することができ、そこをTAS6422 フルデジタルD級アンプへつなげています。

オシロスコープで観測したのはPCM9211から出力されるI2S信号です。

NorthFoxDigi基板には低位相ノイズの水晶クロックを搭載しているため、NorthFoxDigi基板上で観測しても明確なジッター(波形の揺れ)を見ることはできません。そもそもオシロ内部の「基準クロック」と「低位相ノイズ水晶」のどちらが揺れているのか判別する手段はありません。相対的な揺れを観測しているに過ぎないからです。(50万円以下の低価格オシロでの話です。)

しかし、PLLのように揺れの大きなものはオシロ画面で簡単に観測することが出来ます。

 

オシロ設定のミソは、Triggerの位置(今回は約10ms手前)と残像表示です。テクトロニクスのフォスファ機能と等価な表示方法で、本来、一瞬しかみえない輝線の残像を残し、視覚的に分かりやすくしています。

いかがでしょうか?

 

 

SPDIFの宿命

端的に書いてしまうと、送り出し側のクロックの揺れに、受信側が大きく左右されてしまいます。

 

SPDIFは一方通行の信号なので、必然的に送り出し側が「マスター」、受信側が「スレーブ」になります。

スレーブ側では送り出しに同期して受信するため、バイフェーズマーク変調に存在しない特別な3連続信号(プリアンブル)を捕まえて同期しています。

 

そして、DACやデジタルフィルタで必要になるMCLK(SystemClock)を転送する手段が用意されていないので、PLLにて同期信号を128倍もしくは256逓倍してSystemClockを作り出す必要があります。

 

PLLによる逓倍は、2~4倍程度ならジッターが極端に増えることはありませんが、さすがに256倍は厳しい。シーソーのようなイメージで捉えると理解しやすいかもしれません。下の絵だと16倍くらい。

Pll_teibai

力点から支点までの距離が1。支点から作用点までの距離が逓倍率。

力点の揺れが作用点でどんな動きになるのかを想像すると簡単です。

 

PLLは電子回路なので物理的な重さや重力がない場合を考えていただくとして、力点でのわずかな動きが逓倍率分拡大されてしまうのは一目瞭然ですね。いわば拡大鏡のようなものです。

実際にはPLLループフィルタの定数でどのくらい敏感に反応するかが決まってきますが、PLLロックするまでの時間と安定度のバランスをとる必要があります。(例えるなら支柱のしなり・柔らかさみないな感じ)

PLLロックまでの時間が長くすると安定度は増しますが曲の先頭が切れてしまいます。一例ですが、GPSからの1PPS信号で正確に時計をロックさせるPLLは、受信開始からPLLロックするまでに30分かかるようなループフィルタ定数にしているらしいです。

 

 

ちなみに、PCM9211に内蔵されているSPDIF-DAIは、低ジッタで一世を風靡したDIR9001と同等スペックを誇るものです。

DIR9001のジッター性能については以下が詳しいです。

https://ednjapan.com/edn/articles/0709/01/news016_4.html

 

 

SPDIFの良いところ

SPDIFが発表されてから35年ほど経ち、CDプレーヤー、MD、DAT、パソコン、そしてDACなど多くのデジタルオーディオ機器が搭載しています。対応しているfsさえ守れば殆どのケースで問題なく接続できます。

また、信号が絶縁されているので機器間をRCA端子でアナログ音声信号も接続したままSPDIFをつないでもGNDループは形成されず、ハムノイズを誘発しにくいです。

 

 

HDMI-I2S(LVDS)の良いところ

BCK、LRCK、DATAに加えMCLKをLVDSにて独立して転送できるためSPDIFよりもジッターを増やさずにデータ転送ができます。もちろん、配線の延長やLVDS変換ICが信号経路に入ることでジッターは発振元よりは増えます。が、256逓倍PLLと比べると無いに等しいレベルです。

最もジッターが低いのは発振器の出口。細かくいうと配線を5cm伸ばすだけでも悪化します。なので、DAC-ICのすぐ近くに発振器を置くのがDA変換器として理想です。オーディオメーカーのDAC基板上でDAC-ICと発振器が近くに配置しているのはこういう理由。

 

 

HDMI-I2S(LVDS)の良くないところ

ちゃんと規格化されたわけではなく、PS Audio社あたりが勝手にHDMI端子(とケーブル)を使ってI2SをLVDS化して転送したのが始まりのようです。規格化されていませんから接続相手に互換性があるとは限りません。

ここに各社のアサインがまとまっています。

ざっくり書くと LRCKとDATAの+-極性がPS Audioと反転しているものが存在しています。特に中国系のDACは要注意です。(TOPPINGのD90は極性反転機能があるらしい)

また、MCLKの周波数、DSD信号アサイン、PCM/DSD識別信号の有無、18pin5Vアサインなども各社各様。

 

というわけで量産版のNorthFoxDigiはXOR回路にて極性反転機能を搭載予定です。(回路図、基板は対応ずみ)

それと信号が絶縁されていないため、機器間でループをつくらないようにしないといけません。

 

 

 

音質の差は、思ったよりも軽微?

オシロで見た揺れの幅は10倍くらいあるのですがザっと聴いた感じでは、それほどの差があるようには思えません。 曲によるのかもしれませんしD級アンプのTAS6422がジッターの影響を受けにくいアーキテクチャなのかもしれません。

とは言え、ジッターが原理的に発生しやすい接続よりも、より低ジッターで転送できる方が有利になることは間違いないと思います。

まだまだ研究していく余地がありそうですね。

 

 

< 追記 >===========================

その後メインスピーカーに接続して少し大きめの音で鳴らしていたら、HDMI-I2SとSPDIF接続の音の差を発見しました。

しばらくHDMI-I2Sで聴いたあとにSPDIFに切替えると、中高音域の透明度・明瞭度というのでしょうか、音の粒のちらばり感があいまいになって、何となく平面でつまらなく感じます。ピアノなどのアタック音も幾分優しい印象です。そのため、BGM的に聞き流していると意外と気が付きません。

切替えずに最初からSPDIFだけを聴いていると「優しくて聞きやすい音だなぁ」と、見過ごしてしまう程度ではありますが、一度、この差を認識できてしまうと、SPDIFでは「まだ本領を発揮できていない感」を抱くようになります。

オーディオマニア的な重箱の隅をつつく聴き方をする人であれば、一発で聴き当てるんでしょうね。(違いをはっきり描き分けるオーディオシステムを所有しているという意味も含めて)

私もまだ修行が足りていないようです。。。

 

 

 

 

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コメント

私も同じ構成でやってみました。
NothFixDigi基板の光出力も出せるように改造したので光、同軸、LVDSでジッターの振れ幅を帯域250MHzのPCオシロで観測してみました。
重ね書き表示が出来ないので目視ですが光では±2.1nS、同軸だと±1.6nS、LVDSが±0.15nS程度の揺れが見えました。確かにSPDIFとLVDSでは10倍程も違いがありますね。家で聴く小さな音だとなかなか接続方式による違いが判りにくかったのですが、それなりの音量と環境で聴いたら確かに聴いて判る違いがありました。

HILO@町田さん

光コネクタも搭載されたのですね。 1-3ピンがテレコになっているので基板の裏側に付けると、基板の改造なしで付くのですが、ラズパイに挿しにくくなってしまいます(笑)

250MHzオシロいいですね。私のは50MHz帯域なので、49MHzのクロックなどは限界近く正確な振幅と波形を捉えることが難しい状況です。 BCKやLRCKなら平気、ということで上のような評価方法にしています。
同じような違いがでたようで、安心しました。PCM9211でも光は同軸よりも悪化してしまうのですね。

OPAMPを交換したりDACを入れ替えたりした時のような、音のバランス・音色が変わるわけではないので、腰を据えて評価しないとジッターの大小での差は気が付きにくいですね。

TAS6422アンプでも同じ光トランスミッタを搭載してて手持ちがあったので載せてみました。ジッターに起因する音の変化って物理的にはFM変調に近くてサイドバンドが発生するものが大半なのだろうと思いますが。 聴感的には録音された空間の空気感とか、音の輪郭の背景との相違で感じる音像の見え具合とか、これといってピンポイントでは表現しにくい違いとして感じる事が多いので、帯域別のタイムアライメントがキチンと取れてて普段から逆相感や反射音を感じないような環境でないと判りにくい変化ですね。 エラーなしで同じデータがDACに届いていてもタイミングに違いがあればちゃんと表現されてしまうのを判ってしまうと更なるディープな深みにハマっていってしまいそうですが、実は 知らない 気づかない そのほうが幸せなのかも・・・?

HILO@町田さん

光変換は暗ノイズが多いので、デジタル領域においてもジッターを増やしてしまう原因になりますね。確かにジッターによる悪影響はFM変調と一緒ですね。

ハイレゾ対応で、曲によってfsがコロコロ変わる現代では、PLLの追従性を重視しないと曲の頭欠けが大きくなってしまうという問題が出てしまうため、昔よりも条件が厳しくなっているようにも思います。

SB32+PROというDAC基板でも、fsが変わった時の曲の先頭でポップノイズを出さないようにミュートを入れるタイミングですら苦労しました。


次期 NorthFoxDigiではXORを入れてLRCKとDATAに極性反転機能を入れることにしました。ラズパイのGPIO操作にて切り替えます。
Topping D90 を所有されている方からの情報では、極性反転機能がついているとのことで、送り出し側にはいらないかもしれないのですが、一応、念のため。

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