平面磁界駆動型のヘッドホン(2)HIFIMAN Arya
HIFIMANは、ここ10年くらいで出てきた中国の高級ヘッドホンメーカーで、AryaはフラッグシップモデルのHE-1000からフィードバックされた低価格モデルです。
超大型の極薄フィルム振動板、かつ、開口率の大きな開放型のためヘッドホンをしていても外の音が普通に聞こえます。ここまで外の音が違和感なく聞こえるのも珍しいです。
音の方は、まだエージングが済んだとは言えない状況ですのでご了承ください。小音量で50時間程度です。
帯域バランス
高域から低音域まで一聴して帯域感が広く、かなりフラットです。やや低音にふくよかさがあるかなという感じですがダブつきは感しません。ゆっくりとだら下がりながら極低音までしっかり伸びている印象です。また、高域のピークも感じられず曲を選ばないオールラウンダーな予感がします。ただし、能率が低いためアンプの駆動力が必要です。
中域~低音域
空気感が軽く心地いい。後付けされた響きがないタイトさでエレキベースの音階表現が秀逸です。ドラムの高速TAM回しも一切あいまいにならず分解しきっているのは素晴らしい。平井堅やゴスペラーズなど男性ボーカルの喉ごし(?)感がリアルで鳥肌がたちますね。1mくらいの距離でゴスペラーズ5人に囲まれた感じ。なんだこれ。怖いくらいリアル。
高域
解像度が高くハッキリしているけど、JPOPなどを聴いても決してキツイ音にならないギリギリの所で踏みとどまるのがなんとも絶妙。ですが、滑らか、ツヤやかというよりは、ちょい派手目で雑味を感じます。ここはエージングで落ち着くことを願ってます。
アタックは僅かに優しい
音量を上げても破綻しにくいのですが、通常のダイナミック型のMDR-CD3000やAH-D7000よりは、バスドラのドンと来るパンチ力は少なめです。スネアのリムショットなど鋭い音は高域のキレがあるので問題なし。イメージ的な表現になりますが、コンデンサ型とダイナミック型の中間のような印象ですかね。アタック感で押すよりも、音場の雰囲気で表現する方が得意なようです。
開放感と空間の広さ
MDR-CD3000は、空間の広さで定評があるヘッドホンですが、Aryaはそれよりもさらに広く開放的でスピーカーで聴いた感じに近い雰囲気です。あくまでも左右のセパレーションはヘッドホンのそれなのですが、耳に入ってくる空気の振動がスピーカーで聴いているような負担の少なさというのでしょうか。語彙が足りずうまく伝えきれません。Aryaの開放感に浸っていると密閉型に戻れなくなってしまいそうです。
イヤーパッドの押しつけ圧がきつい
重量が重いので仕方ないのですが、イヤーパッドが頭をはさみ込む力が強めです。面積の大きなイヤーパッドは圧力を分散する目的もあると思いますが、それでも強い。30分くらいかけていると、耳の下、あごのつけ根あたりが痛くなってきます。眼鏡のツルの部分は意外と平気。そういえばDT900 proも同様にきつかったのでヘッドバンドをグイグイとまっすぐになるくらい広げて圧を弱めました。Aryaもやるか。。。
クラシックよりもロック、ポップス系
中高域のキレと解像感が十分あるので、派手目なジャズ、フュージョン、ロック、EDMが得意なようです。アニソン、シンセ・打ち込み系も良いです。もちろんクラシックでもド派手な禿山の一夜、惑星なんかも聴きごたえあります。でも、女性ボーカルのやわらかさ、みずみずしさ、透明感を重視するのでしたらフォーカルやSTAXを選んだ方が良いと思われます。なんというか余韻を後付けする感じが一切なく響きがタイトなんですよね。でも、つまらない音ではなくドラマチックな表現をするのがすごい。ちなみに弦楽器を聴くと、なぜか滑らかさが際立つ不思議さもあります。
Arya総括
帯域が広く、空間も広く、解像度も高く、音が濃い。音の籠りが一切なく、抜けが最高。というのは他の方もレビューしている通りですが、いろんな曲を聴いていくなかでAryaが特筆して良いと感じた部分があります。それはJPOPなどで音圧を上げまくった音源のこなし具合(いなし具合?)です。情報量が多いのに、刺激を抑えつつも高域がしっかり伸びていて、どこまでも開放的で空気が軽い。なんというか、包容力の大きさが他のヘッドホンとは違います。ごくわずかに中音域の粗さ、雑味が気になりますがエージングでどうなっていくのか楽しみでもあります。同社の製品でもっと低価格なHE-400S/SUNDARA/DAVA あたりでどのくらいの音がでるのか興味がでてきました。試聴機ないかな。。。
平面磁界駆動ヘッドホンの音
合計3種類のヘッドホンの音を聴いた(購入した)訳ですが、平面磁界駆動特有の音があるのか、というと明確に違う部分があるようには感じませんでした。ダイナミック型でもAKG K702のように優しく透き通った美音なものもあるし、T50RPmk3gのようにドライブ力があってドンシャリで派手な音を出す平面磁界駆動型もある。
それに、振動板が平らだったとしても、その前に構造物(磁石やリブ)があると、音波は平面のまま耳に届いているはずもありません。
平面磁界駆動型の選択は目的地へ行くための手段であって結果そのものではない。ユニットの構造、材料、磁石、ハウジング、容積、強度、重さ、イヤーパッド、ケーブルに至るまで様々な要素が絡んで出てくる音が決ります。作り手がどういう目標・理想郷をもって製品を作っているのかが最も重要だと思うようになってきました。最後は設計者の思想とこだわりなのかな。と。
ただ、平面磁界駆動というと何かカッコよさ、ロマンみたいのはあると思います。
※)平面磁界駆動型はインピーダンス特性が完全にフラットだという情報もありますので、アンプへの負担が帯域によらず一定で、位相の乱れが発生しない可能性はあります。
まとめ
私がここで言えることは、製品の価格に関係なく、1万円のモノでも、2万円でも5万円でもヘッドホンを買うときは試聴してから購入する方が良いってことです。MDR-M1STを皮切りに、ここ1年で散財してきたのはディスクリートヘッドホンアンプHPA-1000の完成度を高めるという目的もあったのですが、ネット通販でぽちっと買うのは勇気が要りますし、想像と違っていたなんて事もありました。
アンプのドライブ能力や特性の伸びがあったとしても、最終的に音が出る部分の存在をなかったものにして電気信号そのままを空気振動へと変換することはできません。アンプよりもスピーカーやヘッドホンの方が音への影響力が大きいというのは紛れもない事実です。
アンプさえ良ければどんなスピーカー/ヘッドホンでも音が良く聴こえるなんてのは幻想です。3千円のヘッドホンが3万円の音になったり、5万円のヘッドホンが50万円の音に拮抗するなんてことは起こりません。逆に、台無しにすることはできます。。
アンプは、スピーカーやヘッドホンの得意とするところを引き立ててあげる「縁の下の力持ち」的存在なのだと思います。やっぱり主役はスピーカー/ヘッドホンです。
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