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2020年4月13日 (月)

黒田式トランスリニア・バイアス回路の起源?

ところで「トランス・リニア・バイアス」って何???
という方も多いと思います。

 

故 上條信一氏がトランスリニア・バイアス回路について、分かりやすく説明していらっしゃいました。

トランス・リニア・バイアスによるパワーアンプ

トランスリニア回路とはバイポーラトランジスタの指数特性を利用した回路です。

トランスリニアとは transconductance linear with current の意、ギルバートセルで有名なバリー・ギルバート氏 の発明です。

トランスリニア原理によると、下図のようにVbeの和が等しい回路のIcの積は等しい。この原理から乗算、除算、諸々の回路に応用されてます。

 

こんな回路例を載せて説明している部分は非常に分かりやすいと思います。

tlb

1段だけにするとカレントミラー的な要素も見えますね。2段・3段にしたとき、それぞれのIcを掛ける点が面白いです。

 

黒田徹氏が設計したアンプ(トラ技2018年7月号)は、上図で3段構成にしていたところを1段のみとして最もシンプルに構成したバイアス回路を搭載したアンプと言えます。

ひとつ注意しなければならないのは、トランジスタの指数特性が維持される領域は限られている、つまり物理限界があるという事です。10A流せるトランジスタが10Aまで指数特性を維持できるのではなく、1~2Aを超えたあたりから徐々に乖離していきます。

 

その点を踏まえて、、、

トランスリニア原理を使って何がしたいのか?

というと、

 

出力段のSEPP回路をノンスイッチング動作にしたいのです。SEPPのノンスイッチング動作というと、まずA級アンプが思い浮かびますね。

異論はあるかもしれませんが、オーディオ用パワーアンプにおけるトランスリニア・バイアス回路は擬似A級アンプの一種です。

 

AB級のアイドリング電流で低発熱としながらも、A級アンプと同じくクロスオーバー歪、スイッチングノイズを発生さない低歪なアンプの実現を目的としている。と思います。

この「目的」が何よりも大切ですね。

 

トランスリニア原理を利用して正確な乗算や除算をしたい訳ではありません。なので指数特性から多少ズレた領域を使ったり、抵抗をぶら下げて動作電流を補正していたりします。

 

以前にも記事を書いた通り、擬似A級アンプはこれまでに色々な回路方式が考案されました。

はっきりとトランリニア原理を使っているのはヤマハのHyperbolic Conversion Amplification(HCA)回路です。その他にもあるかもしれませんが、バイアス回路の動作の詳細を説明してるメーカーは意外と少なかったようで、多くのメーカーのノンスイッチングバイアスの原理は謎です。

 

Kuroda1

黒田徹氏のゼロディストーションパワーアンプは、このようにシンプルにトランスリニア動作させたバイアス回路です。Q16,Q17はダイオード接続していて、ウィルソン型カレントミラー回路が上下でくっついたようにも見えますね。

カレントミラーもトランスリニア原理の応用として考えると納得です。

上下の定電流源が、例えば50mA流していたとすると、ダイオード接続のQ16にも50mAが流れ、結果的にQ15にも50mAが流れ続けます。この仕組みで電流が枯れないノンスイッチングが実現できます。R5,R6は、トランスリニア動作の指数特性からずれる分の補正と思われます。また、最終段をより低歪みで使用するために意図的にアイドリング電流を増やす役目もあります。

 

 

オーディオ業界では1980年代後半に超低歪戦争が勃発して、各社難解で複雑な回路が考案されましたが、その殆どは現存していません。
今のオーディオは歪率よりも実際に聴いて音楽がより音楽らしく再生する方向へと向かっていると思います。真空管アンプや、アナログディスク、DSDフォーマットがもてはやされるのはそのためではないでしょうか。

 

それでも

録音された信号のまま、ノイズや歪を一切加えることなく音楽を鳴らしてみたいという技術的な興味は尽きませんね。

 

黒田氏のパワーアンプの詳細は以下に掲載されています。

https://toragi.cqpub.co.jp/tabid/909/Default.aspx

 

 

 

さて、

 

似たような感じで、出力段のエミッタ部にダイオードを噛ました回路がありました。

オーディオアンプの奇才設計師 ネルソン・パス氏が、1975年に発売したThreshold Model800Aというアンプです。

https://elektrotanya.com/threshold_800a_sch.pdf/download.html

一部抜粋

800a_ba

 

800a_1b

これがシミュレーションした回路です。

耐電圧をカバーする3段積みのSEPPはシングルにしています。

800a_2b

40Vpp(100W)出力時の結果です。

見事にノンスイッチングが実現できています。当時、回路シミュレーションなんてものは存在せず、このようなアイデアの回路を実現できていたのは本当にスゴイことだと思います。

効果を分かりやすくするためにA級ではなくアイドリング電流200mA程度のAB級に設定してシミュレーションしています。(R1,R5に流れる電流を3倍表示にして負荷電流I(R19)とスケールを合わせています。) 実際のModel800Aがどの程度アイドリング電流を流していたのかは不明です。

 

ちなみに、出力段のエミッタ部に挿入されたダイオードがミソです。定数を変えず、そのままバイアス回路を通常のタイプにしても電流が枯れません。

800a_1c

先ほどの回路からバイアス部を交換。よくあるバイアス生成回路に。。。

 

800a_2c

アイドリング電流を200mAに設定してみた結果です。

 

いかがでしょうか。

エミッタ部へのダイオード挿入は、見た目の気持ち悪さとはうら腹に、効果の高い飛び道具だと思います。

不思議に思ったら、ぜひシミュレーションしてみてください。

800a_3

エミッタ部のダイオードを取るとこのように、電流が枯れているのが判ります。

 

 

 

 

 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

失礼ながら、内容に誤りがあると思います。passさんの特許を読んでみてください。
https://patents.google.com/patent/US3995228A

ダンベルカールさん

さすがですね。じっくり読ませていただきました。おっしゃる通り、私の解釈が間違っており、電流リミッター+ダイナミックバイアスの組み合わせのようです。そのダイナミックバイアスを使わなくても電流が枯れない動作をしている部分は面白いなっと思い再度シミュレーションしてみました。

エミッタ抵抗レスで終段のVbeとバイアス生成部のVbeを1対1にすると、おのずとトランスリニア原理になり電流が枯れないのはご存じだと思います。エミッタ抵抗を入れるとそこで発生する電圧でバイアス不足になり電流が枯れますね。

2段ダーリントンにして、Vbeが2段ならバイアスの方もVbeを2倍増すると同じ。3段もしかり。

興味深いのは、エミッタ抵抗部にダイオードを入れてVbeを嵩上げすると、エミッタ抵抗で発生する電流ー電圧特性がリニアではなくなり、バイアス不足になりにくく、ノンスイッチングが容易に得られるという部分。パス氏は、そこをうまく使っていると思います。特許のバイアス回路に限らず電流が枯れにくくなりますが、特許のバイアス回路を使ってもエミッタ抵抗ダイオードを入れないバージョン(特許のFig-4まで)ではかなり電流を流さないと枯れてしまうことがシミュレーションすると判ります。

いずれにしても、擬似A級という名称すらない時代にA級のノンスイッチング動作とAB級の発熱の少なさの両立を図ったアンプを生産・販売できた事実は素晴らしいとしかいようがありません。

今回のたかじんさんのシミュレーションではD7D8にシリコンダイオードを使っているため可変バイアスの動作範囲が狭くなっています。
またバイアススプレッダー両端からGNDにCが接続されているため可変バイアスの応答速度、スルーレートが著しく小さくなっています。

特許ではD7D8はゲルマニウムダイオードを使うか、削除する場合はQ15Q16はQ13Q14よりVbeの大きいものを選別して使うと書かれています。
私もたかじんさんのシミュレーションをいくらか変更してシミュレーションしてみました。
D7D8を削除、R22を3分割してQ15Q16のベースを分割した点に接続しわずかに電流が流れるように抵抗値を調整、入力のC1を削除しV1を電流信号源にすると上手く動作したようでした。
特許ではD1D2の機能は大電流時に可変バイアスの動作範囲を大きくなり過ぎないようにしていると書かれていますが、たかじんさんのおっしゃるように対数圧縮でバイアス電圧を曲げる機能はあるのだと思います。

thresholdの後現れたJVCのスーパーAではΔVbeをバイアス電圧に加算するだけだと歪みが大きいと対数圧縮を利用した利点をPRしていました。
スーパーAでは対数圧縮回路を出力周辺ではなく可変バイアス部分にもってきておりthresholdより少ないアイドリング電流でも対数圧縮が利用できる利点があったようです。またΔVfの分の歪みも少なくなると思います。

対数圧縮なんて、オペアンプの応用で見た記憶がおぼろげにあるのみで理解していないのですが…

ダンベルカールさん

なるほど。ダイナミックバイアスの動作をC1,C2で封じ込めてしまっていたのですね。ゲルマニウムダイオードがシミュレーションモデルになかったので合わなかようです。納得です。しかしD1,D2を省略するとうまく動作させることが出来ませんでした。
それはそれとして、A級200Wというとてつもないアンプを擬似A級という言葉もない時代に作った功績は素晴らしいものと思います。

熱暴走とエミフォロ発振対策のために入れるエミッタ抵抗は、電流が増えるとその両端に電圧が発生し、リニアにバイアス電圧が食われて電流が枯れますよね。 そこにD1,D2のダイオードを入れると、リニアではなく圧縮(限定的な対数圧縮?)されて電流が増えてもエミッタ抵抗部の電圧が増えにくくなりますね。そうすることでバイアスが固定でもノンスイッチングを低いアイドリング電流で実現できます。

ただ、おっしゃるようにスイッチングさせないことで回避できるのはスイッチングノイズの発生です。クロスオーバー歪は、NPNとPNPのVbe-Ic特性の不一致によるものと微小電流領域の非直線成分によるものが支配的ですから、本当に低歪を求めるなら、ある程度のアイドリング電流は結局必要になってきます。ここはデバイス依存性がありそうですけども。

確かにOPAMP+バイポーラトランジスタによるLOGアンプ、対数アンプというのもありますね。レベルメーターなんかに使われているのを見たことがあります。

黒田さんとお知り合いのようなので、すでにご存じかもしれませんが、古い話を。
黒田徹さん、エミッタにショットキーダイオードを入れたアンプを1981年ラジオ技術12月号で発表なさっています。ドライブ段にMOS-FET(2SK213/2SJ76)を使用し、熱安定度を確保、フィードバック安定度(2段ソースフォロワで、小FETなので入力容量小)も良好というものです。
その後も、エミッタのダイオードの採用は続き、1982年4月号(なんとZDR付)、1983年4月号(電源歪打消し)、と立て続けに採用されています。そしてついに、1983年7月号にいたり、ショットキーダイオードをエミッタから追放することに成功し、ショットキーはベースへ移動しています。すなわち出力Trのエミッタと出力端子の直結に成功されています。
ベース側にショットキーを入れ、適切な値(0.4uH程度)の寄生インダクタンスの追加により400kHzにおいてもスイッチングノイズがないというすばらしいものです。この7月号では実験記事でしたが、1983年9月号には、アンプ記事としてまとめられていらっしゃいます。
★CQ出版でも、アイエー出版でもよいですが、この頃の記事を一冊にまとめて、
 黒田徹アンプ作品集としてもらえないでしょうかね?

黒田徹ファンさん

ZDRの記事は読んだ覚えがありますが、エミッタやベースへショットキーを入れたものは知りませんでした。1981年の時点でダイオード挿入をしていたとは驚きです。
ラジオ技術の連載をまとめて出版して欲しいですよね。まず、私が買います。
こういった回路技術は、何年経っても色あせないアイデアですよね。

賛同いただけて、恐縮です。作品集だしてくれると、日本のアナログ設計力も上がると思います。大げさでしょうか?
アイデアからシミュレーションはできますが、シミュレーションからアイデアは生まれませんから。
調子にのって、もう少し当時の記事を紹介しますと、黒田さんはスイッチング歪対策にはずっと熱心で、ダイオードを使わない方式は、1979年から記事にしていらっしゃいます。
1979年6月号では、テクニクスのニュークラスAの解説からはじまり、ご自身の75Wアンプに新バイアスを採用し、10kHzで0.0018%@12.5Wと21世紀の今でも、一流の特性を発表されています。1kHzの歪率にいたっては0.0003%を切っています。(歪さえ低ければいいというものではないのは理解しています)
今読んでも、古臭いどころはまったくないどころか、非常に勉強になります。
そしてトドメに、記事の最後には、「作った。鳴った」式の自作アンプから抜け出すべし」ともと書かれていて、他の自作記事とは一線を画しています。

黒田徹ファンさん

ますます読んでみたくなりました。
実は80年代の最後あたりに発売になった高速型のパワートランジスタはスイッチング歪の出方がとても小さくなったため、神経質にならなくてもひどい波形は出てこなくなりました。
そういう意味で、誌上からもノンスイッチング技術があまり見当たらなくなってしまった可能性があります。 今となってはとても貴重な資料となると思いますので、書籍化してほしいものです。

アイエー出版には知人がいませんがトラ技編集長とは何度もお会いしているので、機会がありましたら話をしてみようと思います。
他社の連載記事をCQ出版で書籍化した例があったような記憶がありますので、不可能ではないと思います。その際のライセンスや権利などのことは、、うーん、判りません。

たかじんさん、ありがとうございます。そしてよろしくお願いいたします。

>高速型のパワートランジスタは
はい。前回のコメントの「作った、鳴った」方式から抜け出すべしの前提として、(高速トランジスタの)スイッチング歪は小さいので、低歪率を測定できる環境(腕前を含めて)をアマチュアといえども整えるべしとの説明に続くものです。

>他社の連載記事をCQ出版社で
これこそまさに、黒田さんの連載記事のことだと思います。CQ出版社の解析OPアンプ&トランジスタ活用の4~7章は、ラジオ技術で連載していた黒田さんの「実験トランジスタアンプ設計講座」を抜粋したものです。ぜひ、製作集編が欲しいところです。
黒田さんの製作記事の素晴らしいところは、アンプにとどまらず、測定器の製作、ΔΣDAC(当時1bitDACと呼んでいました)の製作記事まであります。設計資産の宝です。

当時の黒田さんの表現は、信念(自信)にあふれておられます。

1)何もかも(パワー系、信号系)の一点アースを「愚直」
2)定電流負荷に抵抗を追加を「糊塗策」:低周波の低歪率を(オープンループゲイン低下で)悪化させ、高周波歪率と同じ程度の値とすることで、あたかも高周波の歪率がよくなったかのように見せる方法を揶揄して。
3)チェンジニアへの皮肉として、プラナリア:切っても切っても元の部品の音が残ることから?

わかる人には、「ああ、あの人のあのアンプのことか」というコメントだと思います。
トゲがあるのですが、品(インテリジェンス)のある表現ですね。

黒田徹ファンさん

「解析OPアンプ&トランジスタ活用」でしたか。黒田氏の本は全て持っていると思うのですが、どれだったか覚えておりませんでした。

ふと思ったのですが、今のアイエー出版は、ラジオ技術社時代の古い原版(?)を持っているのでしょうか。今の時代とは異なり電子化された版ではないと思うので、どうなるのでしょうか。本当はアイエー出版さんが書籍化をするのが早いんでしょうね。

全くおっしゃる通りです。アイエー出版さんで出版していただけるのが、正当だと思います。何年か前に黒田さんが倒れられ、復帰された折に、アイエー出版に電話でお願いもしてみましたが。。。結果は、ご存知の通りです。
原版(電子データ)の件ですが、いまのラジオ技術に復刻シリーズというページが毎月掲載されており、昔のアンプの記事が掲載されています(たいていは球アンプの記事)ので、黒田アンプ復刻集もやれないはずはないと思うのです。
原版をpdfにして売ってもらえるといいですよね。素晴らしい設計資産です。

黒田徹ファンさん

電話で直談判ですか。そういう読者が沢山いらしたら考えるのかもしれませんね。

黒田徹ファンさんは関東にご住まいでしょうか?
もしそうでしたら、私だけが編集長に話すよりも一緒に伺った方が説得力が増すと思います。

もし宜しければ、下記までメールをください。

new_western_electric@yahoo.co.jp
よろしくお願いします。

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