グランドループによるハムノイズ発生の原理と解決方法
先日、ヘッドホンアンプの記事でちらっと書いたハムノイズの原因のひとつ。グランドループについて書こうと思います。
一筆書きグランド配線のアンプ基板を2枚使った場合、このようにGND配線がループ状になることは先日書いた通りです。じつは解決策は幾つかあります。
と、その前に、ループ状の配線があるとハムノイズが発生する原理を先に説明しておきます。
電源トランスを搭載したオーディオアンプの場合、トランスから漏れる磁界が結構あります。そのため配線がループになっていると、上図のように電流が流れます。まさにファラデーの電磁誘導の法則、レンツの法則ですね。
実際にオシロで見てみましょうか。
標準プローブのワニ口でプローブの先端をつまみます。これで直径5~6cmくらいの輪ができますね。ループ配線の電流は測れませんが、1MΩの入力抵抗を介して電圧変換されたものがオシロに表示されるはずです。
トロイダルトランスに触れそうなくらいの距離に持って行くと。。。
たったコレだけの輪で9.5mVp-pくらいのヒゲ状の波形が見えました。時間間隔は10msなので100Hzになります。
信号配線をトランス近くに引き回さない方が良いってことが判りますね。
波形の途中が太く見えている部分は、エアコンか何かのインバーターのノイズです。部屋の蛍光灯を付けていたときは、この2倍くらいの太さになっていました。コンセントのACラインを伝ってノイズが混入してくることが理解できると思います。
エアコンなどのインバーター(15k~50kHz程度)、AC-DCスイッチング電源(20kHz~200kHz程度)って高速でスイッチングしてノイズを周囲にまき散らすので、オーディオ的に考えるとあまり好ましくありませんね。
ACラインフィルタで、低減は可能かもしれませんが。。。
さて、本題に戻りましょう。
グランドループを断ち切るという対策
信号系のGNDを、ボリュームを起点にして左右のアンプの入力までは持って行きます。ですが、アンプの電源部から電源基板のプラスマイナス電源のセンター部へは直接繋がず、独立した1本の配線をボリューム部から追加してつなぎます。これでループがなくなります。
ボリューム部からのGND配線は長くなりがちなため、太めの配線を使う方が良いです。また、その追加配線の引き回しルートでも誘導ハムを拾うこともあるため、配線を移動しながら最もハムノイズが減るルートで固定します。
別の対策として、
シグナルGNDを1~2.2Ωの抵抗で切るという方法
抵抗値でハムノイズの低減量を調整できます。ただし2.2Ωよりも高くすると音にダイレクト感が薄れて優しい音になってしまいます。
GND配線を追加して引き回さなくて済むという手軽さがあるので、まずはこの方法を試すのが良いです。
それでもハムが消えないとき。
そもそも、グランドループによるハムノイズ(誘導ノイズ)ではない可能性もあります。
片方のアンプだけ電源・グランド配線をつないで(ループを切った状態で)動かしたときにハムノイズが出ていればループ以外の原因があります。
直接配線に飛び込む誘導ノイズの時は「トランスを離す」「磁気シールドを入れる」「トランスの向きを変える」などの対策が必要になります。電源リップルの可能性もありますし、アンプが発振してビートダウンがハムノイズに聞こえているかもしれません。
まあ、そうなったら地道に対策をしていくしかありませんね。オシロスコープの入手も視野に入れていく必要があるかもしれません。
にほんブログ村
ブログランキングに参加中です。 めざせ1位!
もしよろしければ「ぽちっと」お願いします。
« 2020年になりました | トップページ | オーディオ回路のグランド・電源配線の仕方 »
「ヘッドホンアンプ」カテゴリの記事
- Card Rabbit USB(仮)基板がきた(2024.11.02)
- デモ機製作 アルミケースとして買ったのに・・・(2024.10.27)
- 小型の新ヘッドホンアンプ基板(2)(2024.10.05)
- 小型の新ヘッドホンアンプ基板(2024.09.27)
- ASCIIさんに禁断のヘッドホンアンプ S を取り上げて頂きました(2024.09.13)
「電子回路」カテゴリの記事
- アキュフェーズ ANCC 歪打消し回路シミュレーション(2)(2024.09.25)
- アキュフェーズ ANCC 歪打消し回路シミュレーション(2024.09.23)
- トラ技10月号に載っていたONKYOの特許を調べてみました(2024.09.14)
- innocent Key さんがエミッタ抵抗レスバッファの検討をされていました。(2024.07.05)
- あのアンプの入力部について(2024.01.20)
「HPA-1000」カテゴリの記事
- HPA-1000 キット化のお知らせ(2021.01.10)
- HPA-1000のシャシー設計 デモ機完成(2020.08.12)
- TRS-1000が届きました。(2020.07.12)
- NFBはいらない。no-NFBしか聴かない。というあなたへ(2020.07.11)
- HPA-1000 ヘッドホンアンプ基板のstepファイル(2020.07.03)
たかじんさん
いつもお世話になります。
前回投稿にレスをいただいた折に、下記のような記載がありました。
「VFA-01でも聞こえるほどのハムが出ているといるのでしたら、簡単な対策方法があります。近いうちに記事にしようと思います。」
これは、上記の「シグナルGNDを1~2.2Ωの抵抗で切るという方法」のことでしょうか。VFA-01基板ですと、R27に当たりますか?
お時間のある折にレスいただけると、有難いです。宜しくお願いいたします。
投稿: kontiki | 2020年1月13日 (月) 11時59分
kontikiさん
R27ではなく、アンプと電源基板との接続配線のうち、端のGND線に抵抗をかまします。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/files/vfa01_a.pdf
回路図ではS-GNDと書いている方のGNDです。
そもそも、GNDループによるハムか、単に誘導を受けているハムかを切り分けるために、一度、片方のアンプ基板を切り離してみてください。(電源基板との接続の5本すべて抜く)
投稿: たかじん | 2020年1月13日 (月) 17時25分
たかじんさん
お忙しいところ、早速レスをいただき、有難うございます。
なるほど、S-GNDとPRT-01(電源の中点)の間に入れるのですね。
ちなみに、私のアンプは、VFA-01基板を4枚使ったバランスアンプです。しかも、電源の中点を使わないフローティング型ですので、PRT-01は使用していません。ただ、そのままだと、S-GNDとフローティング電源の電圧/2の電圧がずれていくことが判ったので、フローティング電源に1kΩx2で中点を作り、S-GNDに接続してます。
2台のトロイダル・トランスを使っており、LとRは完全に分離しています。入力に何も接続しない状態では、片ch2台の間にグラウンド・ループはできない構造になってますが、それでもハム音は聞こえます。
オシロで見ると、数mV程度の120Hzが出ており、スピーカーに近づくと、はっきりハム音が聞こえます。離れると聞こえませんが、やはり気になります。^^;
「NEWヘッドホンアンプ ハムノイズの行方」のコメントに、トロイダルの周囲15cmに磁界の影響があるという貴重な実験結果が記載してありますね。これが原因かも知れません。もしかして、トロイダル・トランスを囲ってやる必要があるかもですね。また、どなたかがバランスアンプでハムが目立つと投稿されていますね。アンバランスのALX-03アンプは、全くハム音が聞こえませんので、バランスアンプ特有の問題かもしれません。
たかじんさんのHPは貴重な情報が満載で、本当に参考になります。現在、たかじんさんのHPでは、ハム対策を中心に制作いただいているので、HP記事を参考に気長にハム対策を「楽しんで」いきたいと思います。^^
本当に有難うございます。 m__m
投稿: kontiki | 2020年1月13日 (月) 22時33分
kontiki さん
フローティング電源でBTL、しかもL/Rトランスですか。私も経験ありません。
中点を作る抵抗の抵抗値でも変化がありそうです。ハムと音質に。
片方の電源を入れず(100V側を切断)していてもハムが出ているようでしたら、トランスから誘導を受けているか、電源リップルの影響という可能性が高いです。
トランスの磁束漏れは、100円ショップのネオジム磁石を指でつまみながらトランスに近づけると分かる裏ワザを発見しました。トランスの種類によって結構な差があります。
また、トランスの向きでも漏れる量がちがうことがありました(トロイダルなのに)
磁束漏れなら、磁気シールドを入れる必要が出てくるかもしれませんね。一般的には珪素鋼板を使うのですが、板だけで売っているのを見かけません。鉄板でも効果あると思います。
効果が高そうなのはパーマロイテープですが、ネットでみると、すごく高いです。3万円とかしています。それなら磁束漏れの少ないトランスを買った方がいい?
なかなか悩ましいです。
投稿: たかじん | 2020年1月15日 (水) 21時18分