MDR-M1ST レビュー
8月末にソニーMDR-M1STを購入しました。
スタジオ向けモニターヘッドホンとしてはMDR-CD900STが超有名で、どこのスタジオにも置いてあるという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ヘッドホンを試聴できる売り場でも、かなり高い比率でCD900STは置いていますね。実際に聴いたことがある人も多いと思います。
その「ST」シリーズの最新版がこのM1STです。藤本健さんが開発経緯や設計思想をインタビューしていますので興味のある方はこちらをどうぞ。
届いた箱がこれ。 サイズも小さく簡素なパッケージです。
外観と構造をみてみる
実は、M1STはセミ・オープン型構造になっています。
小さな穴が見えますかね?ダイヤフラムと耳との間の空間のエアーを外に逃がす穴です。
分かりにくいですが、ドライバユニットの周囲に長穴があり、そこに「目の細かい布」が貼ってあって音圧が抜けるようになっています。ここだけ見るとオープン型のような構造です。ユニットが斜めに傾けているのは、耳に少しでも近づけるためらしいです。
こちらが、外側から見た穴。スリット状の凹みの中に小さな穴があるのはハウジングのエア抜き(リアバスレフポート?)で、そのさらに左に見える小さな穴がダイヤフラムと耳の間へとつながる穴になります。
カタログには密閉ダイナミック型と書いてあるのですが、CD900STのように完全に密閉しているものとは構造が違うことがわかりますね。遮音性を確保しつつも鼓膜にかかる圧力を適度に抜いてくれるのが特徴と思います。
そのおかげで、低音域が沢山入っている曲でも、鼓膜に不快な圧力がかからず変な聞き疲れがありません。
掛け心地と音質
全体的な音は、高域の抜けが良くてCD900STと同様に音源に混じったノイズなどを聞き分けやすいと思います。低音はそれなりに量感はあるのですが「ふくよか」というほどではなく僅かにタイトでベースラインの音程がしっかりと把握できます。また超低音域も伸びがあり、きっちり聞こえます。ボーカルの息づかいの生々しさがヤバイです。
この辺は流石のソニー。期待を裏切らない完成度の高さです。
帯域のどこかにピークやディップは一切感じられずフラット。音の立ち上がりの速さは圧倒的。それでいてCD900STのような高域が突き刺さるなんてのは皆無です。ガラスのような透明度で音源に含まれる音をダイレクトに耳に伝達してくれます。
1点、気を付ける部分があります。それは、
ヘッドホンをかけるときの位置をしっかり調整することです。ヘッドバンドの長さ(高さ)ももちろんですが、耳へ被せる前後位置も少しずれると音質が変化します。ベストなポジションを見つける楽しさがあるとも言えますね。
イヤーパッドは、CD900STよりも厚みがあるとされていますが、一般的なリスニング向けのヘッドホンよりも薄いです。リスニング目的で使うのであればイヤーパッドを交換するのも手です。ただ、音色やバランスが変わってしまう恐れがあるのでどこまで許容できるかは個人によります。
無理やりSHURE SRH940のイヤーパッドを被せてみたところ、耳あたりがよくて蒸れないので長時間聴いていても心地よいのですが、ハイエンドの伸びと低域が薄くなって「かまぼこ型」に変化してしまいました。これじゃぁM1STの良さが活かされず3.4万円を無駄にしてしまいます。純正イヤーパッドが音づくりに貢献していることを体感できますね。
ドライブするアンプ
インピーダンスが24Ωと低めで、尚且つ感度が高いため非常に小さな電圧で駆動が可能です。ポータブル機器でも十分な音圧が得られます。
CD900STも63Ωながら比較的そういう傾向があってOPAMP出力でも十分楽しめる音が聴けたのですが、M1STはドライブアンプの素質をモロに出すヘッドホンのようで、粗がすぐにばれてしまいます。OPAMP出力だと出力電流が多くなってひずみが増えてしまうのかもしれません。
同じSTシリーズの最新版だからといってCD900STをM1STに、無条件で入れ替えとはいかないと思われます。M1STの音が今ひとつさえないなぁ なんて思っている人は鳴らしているアンプのせいかもしれません。
ショップの試聴コーナーで置いてある多チャンネル駆動アンプにも注意が必要かも。
私は、このヘッドホンに触発されて新たなヘッドホンアンプの着手に踏み切りました。
低歪で終段無帰還、低インピーダンス駆動、低オフセット電圧を実現する回路を搭載してます。シミュレーションだけは昨年から行っていたのですが、作るのに何かのきっかけが欲しかったんですよね。
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コメント
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おおおっ! HPA-1000A、HPA-12から一気に番号飛びましたね!
異次元の音かな? 終段無帰還など新技術も加わり、とても楽しみです!
投稿: kontiki | 2019年9月 8日 (日) 21時50分
モノブロック構成でSPも駆動できそうなアンプという点も食指をそそりますね。今秋中にできるかな。背景の回路図を見ると入手の難しそうなTR番号(セカンドソース品?)があるところも…。実機試作の経過などレポートが待ちどおしいです。
投稿: onajinn | 2019年9月 9日 (月) 16時22分
kontiki さん
番号は適当です(笑
でも、せっかく作るのですから、それなりのものに仕上げたいですね。
電源部は、4Ω40W出せるVFA-01/ALX-03と共通にしようと思っています。ヘッドホンアンプには明らかに過剰スペックですが、その余裕度でどうなるかが楽しみです。
onajinn さん
さすが鋭いですね。 基本的に秋月と千石で購入できる部品で作ろうとしています。
オンセミのC1845/A992の音が結構いいんですよ。
投稿: たかじん | 2019年9月 9日 (月) 23時28分
想像力
初段が差動で、2段目がバッファー、3段目がカスコード、4段目がドライバー、終段が6パラ?
初段にCobの小さいトランジスタ使って、エミッター抵抗大きくして初段のゲイン下げ、ミラー効果の影響を少なくし、2段目にバッファーを入れて電圧増幅段からのCobの影響を防止、3段目のカスコードでミラー効果の影響の低減、この段の負荷は抵抗負荷かな?
投稿: Hi-Fi | 2019年9月10日 (火) 17時40分
Hi-Fi さん
よくわかりましたね。この画像だけで。
どんな音になるかは、実際に作ってみないと分かりません。納得できなかったら、回路構成を変える可能性もあります。
投稿: たかじん | 2019年9月11日 (水) 20時59分
たかじんさん
愛用の、モニターヘッドホンらしからぬ耽美な音質のATH-M50xは、HPA-12のお陰で音楽的で素晴らしい音を奏でています。
特性ではMDR-M1STと異なりますが、こちらのヘッドホンアンプと組み合わせた時の音がどうなるか気になっています。
投稿: ターキー | 2019年9月14日 (土) 07時17分
ターキーさん
HPA-12は私も純A級版を愛用中です。MDR-M1STもHPA-12でかなり良い雰囲気でなっています。
ただ、0dB HyCAAだと、あれれ? となるんです。中音域のアラが強調されるような感じです。
その差がどこで線引きされているのか不思議です。
テクニカのATH-M50xは、もやは名機ですね。ATH-ADX5000を聴いたときはぶっ飛びましたけど(笑 あまりに良すぎです。
投稿: たかじん | 2019年9月14日 (土) 19時47分