TI社の300W級 DクラスアンプICを使ったアンプが完成!?
TIのTPA3255をモノラルモード(パラレルBTLモード)で使用したアンプです。全く同一の基板を2枚使ったツインモノラル構成になります。
トランスの2次側巻線を、2枚のアンプ基板へ振り分けて左右の干渉を防ぐことにしました。整流回路をアンプ基板に搭載したので配線がとても簡単です。
< トランスの配線の接続はこんなかんじ >
この構成のメリットはGNDを左右で分離できるところです。電源とGNDを含めて左右間の干渉を少なくすることでセパレーション向上、正確な空間表現を期待しています。
D級アンプは高効率で、これほど大きなヒートシンクにつけるほどの発熱はありません。ですが、回路内に必要な電圧レギュレータをリニア回路にて作っているので、それを放熱する必要がありました。おそらくレギュレータ部だけで片側4Wくらい消費しています。
< モノラルアンプ基板を両サイドのヒートシンクに取付け >
D級アンプというと、小型が売りで「ラズパイの上に乗ってしまいそう」なイメージがある人も多いかもしれませんが、私が作るとこんなに大きくなってしまいます。(下のTIのボードよりは小さい)
音質的に評価の高いTIのリファレンスボード。
<CDケースの1.5倍のサイズのTPA3255EVM Evaluation Board>
トランスから整流した電源につなげると、評判どおり、なかなか良い音が聞けます。それを改造して、もう少し伸びしろがあるところまでは確認してから基板を設計しました。
このICは、歪率が8Ω10W時0.002%と小さいですし出力パワーも大きい。
データシート上のスペック(VCC=53V)では10%THDで4Ω時に315W+315W。
モノラルモードでは2Ω時に600Wに達します。
アホか! というくらいの出力ですね。
そこまでの大出力を目指す訳ではないのですが、出力の電流値がなんと1chあたりmax 17Aも取りだせます。モノラルモードでは2パラですので実質34Aになります。LAPT 2SC2837/2SA1186でも10Aですからね。
経験上、電源や出力段に余裕があるというのは音質的に優れることが多いと思います。
数あるICの中から選択する条件として2Ω負荷に対応できる点も必須です。個人的にパワーアンプは2Ω負荷を許容できるくらいの駆動力がないと、しっかりした低音を支えられないのではないかと思っています。(あくまでも低音マニアの個人的意見です)
こちらはデータシートからの抜粋ですが、歪率カーブも素直でヘンなうねりが無いという部分も安心感がありますね。
ということで
BLOCK社のトロイダルトランスを使ったとき、整流後の電源電圧は約37Vになりました。
推測ですが出力パワーは1%THD時に、
8Ω:77W+77W
4Ω:137W+137W
2Ω:241W+241W
くらいになるかと思います。そのうち実測する予定です。
このくらいのパワーがあれば、OSCの広い部屋でも十分な音量でデモができると思います。
次回のOSC東京が待ち遠しいです。
こんな基板が裏側(ヒートシンクに接する側)に仕込んであって表面実装部品は実装済みです。ただし、ICが1200円x2個で実装費もそれなりにかかるため、この基板だけで割と高くなってしまいます(試作時は5枚で480ドル+関税1800円)
< 日本で作るとメタルマスク1枚で2万円を超えるけど >
ちなみに、このアンプ基板を頒布したら欲しいという方いらっしゃいますでしょうか?
今回作った基板は、改造につぐ改造で切った貼ったが激しいので、改版したものを作るかどうか迷ってます。
業者での実装をやめて、基板+アンプICのセットにすると安くできるかもしれません。
音質的な感想は
ここのブログを良く読まれている方は薄々気がついているとは思いますが、私は「俗に言うD級アンプの音」があまり好きではありません。たとえば「すっきりしてみずみずしい」「解像度が高い」「高域が爽やか(鮮やか)」「低音がパワフル」などなど、聴いていると疲れてしまいます。
D級くさい音のクセをまったく意識しない音調にチューニングできるかが鍵となりました。
音量を上げたJ-ROCKでも聞き疲れせずに楽しく聞ける。
A級、AB級、PWM、ΔΣ なんてことを意識しないで、ただただ音楽を、演奏を楽しみたい。
そんな妄想のもと、空いた時間にテキトウにいじってきました。2月末のOSC東京に間に合わなかったので、もう、時間的な制約がまったくない。
というわけで感想としては、
音量を上げてもうるさくならず、長時間聴いていても疲れない。それでいて音楽に引き込む力がある普通のアンプになったと思います。TIのアンプICは懐が深く優秀ですね。
電源をトランス巻線から左右独立させたため、奥行と左右の広がり感がありつつも定位がしっかりしている雰囲気はあります。それと、低域の量感・厚みがありベースやドラムもしっかり表現できています。ただ、ALX-03と比べると残響感がややタイトな気がします。
残響感は位相補償のコンデンサの容量や種類でわりと大きく変化するので、もう少し改善の余地はあるかもしれません。
最近、10pF~47pFあたりのポリフェニレン サルファイド フィルムコンデンサが入手できるようになってきたので検討を続けたいと思います。
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コメント
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う~ん、ハイパワーですね!
食指が動きますね!!
う~ん。。。
投稿: bunta | 2019年5月 5日 (日) 20時07分
bunta さん
6畳や8畳くらいの普通の部屋で鳴らすには10~20Wくらいあればほとんどの人は足りると思うのです。
しかし、12畳を超える広さで防音設備がちゃんとしていて、かつ、能率が低めなスピーカーを使っていると、50Wは最低ライン、大音量がほしければ100Wでも足りないという状況がありえます。
パワーが大きければ音が良いということではないのですが、どうしてもパワーが欲しいというケースがあるので、ハイパワーなアンプもあっても良いかなと思いますね。
投稿: たかじん | 2019年5月 5日 (日) 23時43分
初のD級ですね!低発熱の夏用アンプとして興味があります。
私の用途では大パワーは必要ないのですが、このアンプのゲインはいくつでしょうか?
投稿: ヨシダ | 2019年5月 8日 (水) 09時52分
たかじんさんの「音の癖をまったく意識しない音調…」 ってどんなところを狙っているのか、是非とも聞いてみたいです。
今使っているメインのアンプは、まさにD級(Hypex NC400+α)です。
投稿: いちあい | 2019年5月 8日 (水) 17時49分
実験機はPBTLモード(Mode Pins=10)とのことですが、他にサポート予定のモードはありますか?
BTLモードに対応するか興味があります。
投稿: いちあい | 2019年5月 8日 (水) 21時18分
ヨシダさん
ゲインは27.5dBです。前段の定数変更で多少変えることも出来ます。
いちあい さん
Hypex は良いモジュールを作っていますね。
TPA3255はそこまでのパワーは出ません。電源電圧を上げても8Ω100Wくらいまでです。
裏に入れた基板(PA-ENGINE)はステレオモード(BTLモード)で使う事も可能です。大きな部品を乗せる基板の方は部品が大きく、2ch分入らなかったのでモノラルにしました。
このケースに入れることを前提にしていたからです。基板サイズの制約がなければBTLモード(2ch)で使用できる基板も作れるかと思います。
投稿: たかじん | 2019年5月 9日 (木) 08時22分
返信ありがとうございました。
NC400は64V(typ)で駆動するので、専用電源(SMPS600)を使っています。
クラスDで、ちゃんとパワーをだそうとすると電源もそれなりに大変な様子で、その辺りをどんなバランスで仕上げたのか興味津々です。
BTL/PBTLの件、了解しました。
必要な電源容量を考えると、実験機の構成は理にかなっているように思えます。
TSSOP 0.65mmピッチなら、なんとか手半田でも対応できそうです(笑)。
投稿: いちあい | 2019年5月 9日 (木) 17時29分
2オームって? と思ったら車載用のウーファーにはあるんですね。
ホーム用だとなんでしょう、ダブルウーファーとか?
投稿: 天 麩羅夫 | 2019年5月10日 (金) 10時54分
いちあいさん
NCOREは、LCフィルタのあとからフィードバックをかけているそうで、D級アンプでは例外的にダンピングファクタも大きく、本当の意味でしっかりとした駆動ができていそうですね。
電源に関してはD級もAB級もかわらず大切なんだと思います。A級になると常時全力で電流を消費していますしね。アンプ部で消費している電流の一部をスピーカー出力として漏らしているくらいなイメージです。
SOP部品のハンダ付けは、放熱器につけることもあって、実装が傾くとまずいです。ちょっと上級者向きかもしれません。
天 麩羅夫さん
公称で4Ωのスピーカーは、低域のインピーダンスが3Ω程度まで下がるというのがたまにあります。
アンプ側からすると、2Ω駆動を保証するというと1Ωくらいまで問題なく(故障することなく)駆動できることが最低限必要になります。
簡単に言って何が違うのか?というと、アンプが出力できる電流の限界値です。
それだけ大きな電流を流しても壊れないという部分。余裕度が大きいともいえます。
例えが良くないかもしれませんが、高速道路を120キロで走るとき、軽自動車のエンジンでもどうにか走れますが、2000cc、3000ccならもっと余裕の状態で走れる。みたいな感じですかね。
2Ωのスピーカーが沢山あるから2Ω対応が必須というのではなく、余裕度が欲しいから。というのが理由です。
投稿: たかじん | 2019年5月11日 (土) 08時25分
たかじんさん
回答ありがとうございました。
現在ALX03と一緒にマルチで使っている自作アンプ(Firstwatt F4 クローン、ゲインはゼロ!)が180wも発熱して夏には厳しいので、低発熱なD級は魅力的です。
定数変更についてはまた質問させて頂くかもしれません、よろしくお願いいたします。
投稿: ヨシダ | 2019年5月11日 (土) 10時03分
ヨシダさん
180Wとはすごい。 ほとんどヒーターですね。
リニア・レギュレータを使っているといっても、アンプ部はD級なので電力はずっと小さいと思います。
投稿: たかじん | 2019年5月11日 (土) 17時24分
ああ、そうですね、4Ωものだとそこまで下がるのか。
8Ωものしか持ってないので気が回りませんでした(笑)
投稿: 天 麩羅夫 | 2019年5月16日 (木) 09時35分
天 麩羅夫さん
8オームなら、全然問題ありません。むしろ高域にピークが出るので高域補正が必要になってくるかも。そのあたりはD級の宿命のようなものです。
能率の低い現代の小型スピーカーは、大パワーなアンプが必要になってきて、うまく鳴らすのが難しいですね。
投稿: たかじん | 2019年5月16日 (木) 18時58分
ちょっと気になったので質問させてください。
本アンプの二枚の基板とシャーシーグラウンドはどうなるんでしょうか。
今は作りッきりでなにもしてませんが…
投稿: 天 婦羅夫 | 2022年2月25日 (金) 20時23分
天 婦羅夫さん
するどい所にきがつきましたね。
シャシーはフローティングです。
2枚の基板のGNDをそれぞれをシャシーに繋げるとGNDループができてハムノイズを誘発します。(トランスがど真ん中に鎮座する配置だと)
シャシーをGNDに落としたい場合は、
L/R分かれていないボリュームのところのGNDをシャシーに繋げるか、2枚別れた基板のGNDから10Ωくらいの抵抗を介してシャシーの繋げると良いかもしれません。
投稿: たかじん | 2022年2月26日 (土) 09時12分
やっぱり浮かしたままなのですね。
ハム問題もないのでこのままにしておきます。
アンプ自体は前段のプリアンプなどでグラウンド共通になってれば、そこで繋がるわけですね。
ありがとうございます。
投稿: 天 婦羅夫 | 2022年2月26日 (土) 11時47分
天 婦羅夫さん
そうです。 GNDの電位という意味では、前段のGNDが共通になりますね。 シャシーをGNDに繋げる最大のメリットは、シャシーをシールド代わりにして外来ノイズの影響を防ぐという部分と思います。 でも、プラスチック筐体のラジカセや古いアンプの一部で箱が木製のモデルは、GNDに落とす金属シャシー自体がありませんでした。 でも問題になるほどハムノイズが聴こえていた訳でもないと思います。
つまり、あまり気にしなくても大丈夫だという事です。
投稿: たかじん | 2022年2月26日 (土) 23時24分
そういうことですか、わかりました。
ありがとうございました。
投稿: 天 婦羅夫 | 2022年2月27日 (日) 10時17分
はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいております。
初心者的な質問で申し訳ございません。
D級アンプの消費電力の計算をどのようにするか… 悩んでいます。
トランスの選択で電流値をどの程度のものを選択するのか…
例えばTPA3255を150-W Stereo into 8 Ω in BTL Configuration にて使用する場合、何A程度電源消費電流を見ておけば良いのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
投稿: ぼんぞー | 2022年4月19日 (火) 13時54分
ぼんぞーさん
何も資料がない状態で厳密に計算するのは困難ですが、メーカーがいう高率を使うと簡単です。 あくまでも概算ですけどね。
例えば効率90%で計算すると、
150Wなら166W相当の消費電力ですので、 I=√(166/8)=4.55Arms ですから、ピークでは6.4Aほど。
実際にはクリップするともっと電流が増えるので、少し余裕をみた方が良いと思います。
投稿: たかじん | 2022年4月19日 (火) 20時33分
たかじんさん
こんにちは。ご回答ありがとうございます。
あくまでも概算で考えていました。計算は必要かとは思いますが、お教えいただいた計算で算出した値+1A程度で、まずは考えるようにします。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: ぼんぞー | 2022年4月25日 (月) 15時11分
ぼんぞーさん
デバイス的にはもっと流せるようなことも書いてありますが、平均的なところで6A~7A流せれば足りると思います。 大きめのデカップリングコンデンサから瞬間的に電流を供給することもできますので、電源回路次第です。
投稿: たかじん | 2022年4月25日 (月) 21時20分
たかじんさん
こんにちは。
時間が経ってしまったのですが、中華アンプAIYIMA Model A07 TPA3255をアマゾンで購入して遊んでいます。
とりあえず電源をDC48V、120W程度で 1kHz入力した時の特性を見ようかと思ったのですが、放熱盤が結構熱くなりますね。
D級なのでそんなに熱くならないと思っていたのですが…
放熱盤の接触温度を測ると90℃!
30×20×60のフィン3つと貧相な放熱盤ですが、そんなものなのでしょうか。
初心者なもので申し訳ございません。
投稿: ぼんぞー | 2022年8月23日 (火) 14時39分
ぼんぞーさん
オーディオ用のパワーアンプは最大出力を連続運転することは想定されていません。
温度上昇試験の条件は、最大出力の1/8の出力です。 それを連続運転して壊れないことを保証しています。 釈然としないとは思いますが、まあ、音楽ソースに準じた実用的な範囲というわけです。 古いEIAJ規格では8波ON、24波OFFというテスト信号で測っていました。
どのくらいの時間を連続で出力できるかは、ヒートシンクの熱容量に依存します。
ですので、最大出力を測る場合は短時間で行います。(大雑把に1~2分以内くらい)
投稿: たかじん | 2022年8月23日 (火) 20時16分
たかじんさん
こんばんは。
せっかくご回答していただいているのにコメント遅くなり申し訳ございません。(遅すぎますね…)
メーカー製のPAもだいたい定格の1/8または1/3出力で記載されていますね。
実際120Wで鳴らし続けるわけでもなく… ありがとうございました。
実は自分でも基板を製作してみようと思い仕事で知り合いの基板屋さんに協力してもらって作成してみました。
基本はTIの評価ボードをベースに設計したのですが…
うまく鳴ってくれません。
D級アンプ初心者が手を出すべきではなかったかなと…
すごく失礼かと思いますが、ご相談に乗っていただけないでしょうか。
申し訳ございません。
ご無理ならお断りいただいて結構です。
OKであればメアドにご連絡いただければ幸いです。
失礼いたします。
投稿: ぼんぞー | 2022年11月21日 (月) 22時39分
ぼんぞーさん
ご自身で設計された基板ですか。素晴らしいですね。
もし宜しければ、こちらの掲示板で回路図や基板パターンの画像を貼ってみるというのはいかがでしょうか。
https://jbbs.shitaraba.net/study/13424/
公開されることになりますが、私以外にもアイデアやコメントを頂けるかもしれませんし、解決出来たらこれから始める他の方の参考にもなると思います。
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投稿: たかじん | 2022年11月21日 (月) 23時49分
たかじんさん
返信ありがとうございます。
いえいえ。回路的にはTIのエボリューションボードを真似てるだけです。
電源込みでなるべく小さく作ってみようとしました。
見事に動作してくれませんでしした 笑
掲示板のご紹介ありがとうございます。
一度やってみます。目も当てられない回路、パターンかも知れませんが
解決および勉強のためやってみます。
色々とありがとうございます。
投稿: ぼんぞー | 2022年11月22日 (火) 12時04分
たかじんさん
おはようございます。お世話になります。
お教えいただきました「掲示板」に書き込みいたしました。
お恥ずかしい回路ですが、???と思った点等ございましたらご教授ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿: ぼんぞー | 2022年11月23日 (水) 10時24分