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2018年7月 5日 (木)

スーパーリニアサーキットは、本当にスーパーな直線増幅だったのか?

30~25年ほど昔でしょうか。 オーディオ御三家の1社「パイオニア」がアンプに使っていた技術にスーパーリニアサーキットと言うものがありました。

無料の回路シミュレータがある今は、回路構成さえ判れば誰でも簡単に解析できてしまいます。

最初に書いておきますが、この解析は当時のパイオニアの回路定数ではありませんし、トランジスタのデバイスモデルも違います。あくまでも基本回路の解析です。

Superl1

<< エミッタ接地回路|スーパーリニアサーキット >>

比較として、エミッタに抵抗を入れたエミッタ接地回路とスーパーリニアサーキットを並べています。

入力:0.1V -> 出力:1V   の10倍の増幅率で比較します。

 

少しだけ回路の説明をいたします。

左側のエミッタ接地回路は、エミッタの抵抗とコレクタの抵抗を1対10にすることで10倍の増幅率を得ています。これは、いわゆる自己帰還(電流帰還)というフィードバックにより直線性が良くなる回路です。オーバーオールNFBではないため、non-NFBアンプといっても差し支えありません。信号は反転します。

 

一方のスーパーリニアサーキットは、この回路図のQ2とQ6の上部にカレントミラー回路を加えることでQ2とQ6のコレクタ電流(Ic)を強制的に等しくなるようにしてあります。そうすることでQ2とQ6のVbeも等しくなります。つまり、Q2のベース電圧が全く相違なくQ6のエミッタへと現われ、R6を駆動しているのです。そのR6に流れた電流も上部のカレントミラーにより折り返してR7にも流れてR7の両端に電圧が発生します。よってR6とR7の抵抗の比率が増幅率となります。ここでは1対10にすることで10倍の増幅にしました。信号は反転しません。

 

Superl2

<< エミッタ接地回路|スーパーリニアサーキット >>

FFT比較するとご覧のとおり。 一目瞭然。 私もびっくりしました。スーパーリニアサーキットの方は、いっさい高調波(ひずみ)が見えません。

 

  完璧な回路じゃないですか!

 

 

ところが、シミュレーションのトランジスタのデバイスモデルがNPN、PNP名称のままで理想トランジスタモデルでした。

ということで、LTspiceの標準モデルに入っているBC547BとBC557Bという小信号のコンプリメンタリペアをアサインしてみました。

回路図は以下のようになります。

Superl3

上のシミュレーションもですが、歪率が最小になるように信号源のバイアス電圧を調整しています。 理想トランジスタのときとBC547B/BC557Bとは若干電圧が違います。(大きくは変わりません)

 

FFTの結果は以下のとおり。

Superl4

あれれ? 

共に最低ひずみになるようにバイアスを調整してみた結果、エミッタ接地回路に10dB以上負けている。。。

 

Superl6

念のため、THD(Total Harmonic Distortion)の数値もみてみるとこんな感じです。

上側のV(out)がエミッタ接地回路。下側のV(out2)がスパーリニアサーキット。

 

 うーん。

NPNとPNPのコンプリメンタリのペア特性の相違から発生するひずみと思われます。 これだけの回路数(トランジスタ数)でフィードバックなしとしてはひずみは少ないとは思います。

また、ペア特性がもっと優れたトランジスタを使う事で、もう少し良い特性が得られていた可能性もあります。

原理的に優れていても、理想的なデバイスが入手できなければ1石トランジスタの自己帰還に負けてしまうという結果が垣間見えましたね。

更に高度な超スーパーリニアサーキットへと展開されていくわけでもなく、ある時期を境にスパーリニアサーキットが消えてしまったのはそういう理由もあったからでしょうか。

 

個人的な記憶では、80年代のパイオニアのアンプの音は他社と一線を画する雰囲気があったと思います。おそらく好みの分かれる音で、私は、同様に少々クセが感じられるサンスイの音の方が好みでした。

ただ、あの当時のパイオニアのスピーカーでバーチカルツインという構成のS-1000 twinにはシビれるほど感動しました。ほんとに素晴らしかったです。

 

 

 

 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

こんばんは、オーシャンです
パイオニアとトリオは別会社ですよ
後にトリオは、KENWOODに改名します

こうした新回路はシミレーション計算から生まれた回路なんですね
けれど、実際のデバイスは理想動作からかけ離れているので結果は一致しない
ただ、さらにデバイスパラメータの精度を上げると一致するのでしょうか?

オーシャンさん

ほんとだ。 ボケてました(笑
ご指摘ありがとうございます。

最初、御三家についてコメントを書いてたのですが、長いので削除したら、変なふうに残ってしまいました。。。

おそらく、上のシミュレーションで試したコンプリよりも特性が揃ったトランジスタは当時は存在したのだと思います。記事中では触れていませんが、熱結合も重要だと思います。

物性に頼った回路技術と、フィードバックに頼った回路技術。 どちらも奥が深いですね。

お世話になっております。IGです。

私もスーパーリニアサーキット搭載のパイオニアのアンプの音は他社と一線を画する素晴らしいアンプだと思っています。ただ、温かみが足りなかったので、私も山水のリミテッドアンプに移行しました。
 後にパクーンプロダクツが開発したSATRI回路が更に高度な超スーパーリニアサーキットへと展開されたと思っています。SATRI独特の自然でハイスピードで音場感あふれる音の虜になりました。また、SATRI回路は、抵抗を切り替えることでゲイン変えることができる先駆けのアンプでした。

IGさん

コメントありがとうございます。スーパーリニアサーキットを搭載しなくなっても、ハニカム構造のヒートシンク、短い信号パスのレイアウトなど、パイオニアは革新的なことをやっていましたね。

SATRI回路の詳細は知らないのですが、音を聴いたひとはとても良いと仰る方が多く、興味をそそられます。

カレントミラー回路が沢山使われているらしいというのは感じていましたが、いま見ると「トランジスタでは増幅せず、2本の抵抗の比率でゲインを決定している」というのは、確かにスーパーリニアサーキットと同じですね。

http://www.tachyon.co.jp/~sichoya/bp/amp5511/comment.html

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