DAC特性比較「ES9023」「PCM5122」「PCM2704」
ちょっと前にツイッターにて、各種DACのインパルス応答などをオシロで観察している方がいらっしゃいました。
そのツイートで
ESS社のES9023の波形が激しくクリップ(オーバーフロー)していたので、いやいや、そんなハズないだろという事で、私もチラっと波形をとってみました。 基板設計時に確認していたのだけれど再確認です。
いやー、偽物って怖いですね。。。どうも、中国から仕入れたES9023が偽物だったようで、これがOPAMPやトランジスタだったら見分けられないかもしれません。(偽物ではなく、検査で不良品として落ちたモノかもしれません。)
SabreberryDAC ZERO
まずは、ESSのES9023を載せたSabreberryDAC ZEROの波形から見ていきましょう。
500Hzの方形波応答
1kHz -60dBサイン波
1kHz -90dBサイン波
まずまずの波形です。当然ならが偽物チップとちがって激しいクリップなどは発生しません。 2mVほどDCオフセットが出ているのは、出力にヘッドホンアンプをつけているためと思われます。
波形はefuさんのWaveGeneを使って生成したWAVファイルを再生しています。
昔、どこかのオーディオ誌にも-90dBサイン波を掲載していましたね。 しかし、1bit DACが主流になってからはノイズだらけで波形が見えなくなって止めてしまいました。
こういった波形を見ると、マルチビットDACの方が高域ノイズが少なくて優秀に感じてしまいます。しかし、市場はあっという間に1bit DACに占有されていったので音質的な部分は1bitの方が優れていたのかもしれません。
AVIOT DAC 01
つづいて、PCM5122を載せたAVIOTのDAC 01です。
測定データを掲載しても良いとの承諾を得ております。 (2月くらいの話ですけども)
500Hzの方形波応答(ノーマル)
1kHz -60dBサイン波
1kHz -90dBサイン波
さすがに-90dBの波形は見えないくらいのノイズがあります。
DAC 01は、マスタークロックを持ちマスターモードで動作させることができます。また、デジタルフィルタの特性を5パターンくらい切り替えることができます。上の写真はノーマルのフィルタです。
下の波形はローレイテンシフィルタの応答です。
<< ローレイテンシ フィルタ >>
DAC 01の音はPCM5122らしくない、パワフルでダイナミックな音調が特徴です。 JAZZやロックなどが楽しく聴けます。また、ローレイテンシフィルタにすると、女性ボーカルがきれいで高域までヌケがよく澄んだ声になります。好みに応じてデジタルフィルタを選択することができるのも特徴ですね。
AKI DAC-U2704
最後に 秋月電子のUSB-DACである AKI DAC-U2704 です。 TIのPCM2704を搭載しています。
500Hzの方形波応答(電圧レンジが他のDACと違うので注意)
1kHz -60dBサイン波
-60dBで既にノイズまみれなので-90dBは掲載しませんが-60ddBと変わらないノイズだけの波形でした。
PCM2704は、USBに直接繋げる便利で簡単なDAC-ICですが、出力レベルが一般的なDACの半分程度しかありません。それなのにフロアノイズが高いのでソフトウェアボリュームで絞って使うにはちょっと不利です。
この波形から想像すると、S/N比で60dBも無いFM放送以下に思えてしまいますが、実際にはそんなにひどくない音です。ですが、やはり上位のPCM51XXシリーズの音を聴いてしまうと戻れないという人は多いのではないでしょうか。
所感
ここに載せたDAC-ICは、デジキーやRSコンポーネンツなどで調べると単価はバレますから書いてしまいますが、ざっくり500円くらいのローコスト製品の比較です。(ローエンドではありません)
しかし、ローコストDAC-ICも電源やポストフィルタの設計次第で中級クラスのオーディオ機器にも使えるほどの音がでます。さすがに高級機(100万円クラス)に採用されているのは見たことありません。
例えば、ラックスマンからはPCM5102A(PCM5122とアナログ変換部が一緒のチップ)を採用したCDプレーヤーが30万円くらいで出ています。このCDプレーヤは、おなじDAC-ICを使った3000円の中華DAC基板と同じ音かどうかは聴いてみると分かると思います。雲泥の差です。
<< PCM5102Aを使っているのに・・・ >>
最終的な音質は「DAC-ICを如何に使いこなすか。」 という部分が大きいと常々感じます。
DACなどを自作される方々のwebサイトも拝見することがありますが、作って音がでてイイ音だ。 と満足して終わってしまう人と。。。 完成後も延々と周辺部品や電源などをとっかえひっかえして検討されるとがいらっしゃいます。
後者は、自作オーディオの醍醐味を最大限に味わっていますね。
無事に音が出たところがスタート地点。 実は、そこからが楽しいところです。
メーカー製のオーディオ製品は、改造してしまうと保証が受けられなくなるため、安易に改造するのはおススメできませんが、もともと自作した機器なら、何でもアリです(笑
例えばトランジスタの動作電流を1.0mAから1.2mA、1.5mAへと変えてみると、別の世界が見えてくる。 そこを体験できるのが自作オーディオの面白い部分だと思うのです。
「部品や電源で音が変わる」 という事に興味のある方、みんなに楽しんでもらえればと思います。
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sabreberry DAC ZEROでは、-90dBの信号まで、再現出来ていて、素晴らしいですね。
この測定では、測定用のフィルターは、無いのでしょうか?
sabreberry 32購入者としてはこの特性も気になります。
投稿: SS | 2018年6月19日 (火) 05時48分
こんばんは~。
>DAC 01の音はPCM5122らしくない、パワフルでダイナミックな音調が特徴です。
PCM51XX系って、結構ダイナミックな音質と認識してたんですが、認識違いしてたのかな?今まで聞いてたメーカーのアプローチが、たまたま似ていただけかも知れませんね。現状、自分の環境では、PCM5102のDACに禁断ののヘッドフォンアンプを組み合わせて常用してるのですがこの組み合わせが結構ドンピシャで聴けてます。ESS系の硬くて繊細な音質も、アプローチ次第ではしっとりでダイナミックな音に出来るんでしょうか?チェンジニアリングしてて一番悩むのは、例えば、オペアンプの持つ特徴を伸ばしてやるのか、抑える方向にもっていくのか、苦手な部分を補っていくのかと言う点です。色々なジャンルに対応出来るようバランスを取るように持って行くようにはしていますが、究極にバランスのいいチューニング=モニター系のつまらない?音になっていきますし難しいです(w ピーキーなチューニングをしても、曲によってはドンピシャだったり、行き着くところは、曲に合わせたアンプという事になりますかね(w
>「部品や電源で音が変わる」 という事に興味のある方、みんなに楽しんでもらえればと思います。
こうやって、チェンジニアリング難民が増えていくんですね(w まぁ~、悩んでいる自体、楽しんでいるってことですからね(w どうか、これからも、悩める僕たちを導いてくださいますようお願い致します。
投稿: ScrapHearts | 2018年6月20日 (水) 04時23分
ScrapHearts さん
DACの音は、DAC-ICの後のポストフィルタ部でも印象が変わりますし、電源でも変わりますね。
私が聴いているのも一部の製品なので、人によって異なる印象がでても不思議はありません。
せっかく自作するなら、チェンジニアもその一部に加えると楽しみは倍増します。
色々試していると、そのうち、このコンデンサの音が好み! って感じで自分の好みの音に仕上げられるようになってくると思います。
私もいつも悩んでいますが、そこがまた楽しいですね。
10万、20万円のメーカー製の製品はそうそう買い替えできませんが、自作した回路のコンデンサや抵抗なら、わりと気軽に変えられます。
そして、あまり高価な部品を使わなくても楽しめますし。
投稿: たかじん | 2018年6月22日 (金) 21時05分
SS さん
オシロで直接測っているため、フィルタはない状態です。 20MHzの帯域制限をかけても、波形は殆ど違いが見えませんでした。
DAC後のポストフィルタがあるので、20MHzを超えるようなノイズまではあまり漏れていないためと思います。
人に聴こえるとされる20kHzのフィルタを通した波形で比較するのが適切な気もしますが、ハイレゾDACとして100kHzくらいまでは見える状態で表示するのも、差をみるという意味では良いのではないでしょうか。
ひとつ言えることは、ノイズが低い方が音が良いとも限らないということです。
波形比較は、あくまでも波形比較であって、音質ではありません。
投稿: たかじん | 2018年6月22日 (金) 21時12分