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2018年5月12日 (土)

ALX-03 MOS-FETバージョンの歪率を計測

随分と時間があいてしまいましたが、ALX-03 MOS-FETバージョンの歪率を計測してみました。

OPAMPもいくつか変更して残留ノイズの比較もしています。

Alx03_dist00

当初のALX-03と各所の定数が変わってきたので、特性にどう変化が現われるのかも興味ありますね。

まず歪率です。

THD+N 」といってアンプの歪とノイズの両方を計測する値です。 THDは「トータル・ハーモニック・ディストーション」の略です。 Nは「ノイズ」です。

計測の原理は、計測信号の周波数にノッチフィルタを入れて見えなくして、その他のレベルを計測するという方法です。一般的な歪率計の計測原理です。

Alx03_dist01

結果は、ごらんのとおり。 20kHzのカーブが違うのはMOS-FETの特性かもしれません。

以前の歪カーブと比較すると、左側からナナメに直線的に落ちていく部分の高さが明らかに違います。

0.1W出力時の値は、以前だと0.008%くらいで、今回は、0.017%くらい。

この部分は歪成分ではなくノイズ成分に支配されている領域です。

ココが高くなっているということは、以前よりノイズが多くなっていることを示しています。

 

そこで、残留ノイズも計測してみました。

初期バージョンはLME49720を使っていした。今回はOPA627です。以前とは回路定数が違うので、全てMOS-FET版に搭載してのノイズ比較です。(A-wait ON)

LME49720: 18.8uV

OPA627:   20.7uV

 その他にも

MUSES 03: 27.8uV

MUSES 02: 20.5uV

MUSES 01: 32.7uV

MUSES 8820: 20.4uV

NJM5532:  20.5uV

NJM5534:  17.7uV

NJM2114:  20.4uV

LT1115:    22.1uV

OPA2134:  29.1uV

青文字は1ch入りオペアンプで、DCサーボを動かしていないため条件はよくなります。意外にもNJM5534が最もノイズが低いという結果になりました。データシートの数値は測定条件がメーカーによって違ったり、時代によっても違いますので、単純に数値比較できないことを示しているのかもしれませんね。

初期バージョンではLME49720を使って14uVという数値でしたから、MOSFET版の定数は残留ノイズが1.3倍に増えているという事が分かります。恐らくOPAMP部分のゲインを変更したからなのではないかと考えています。MOSFET版の定数の方が爽やかで軽やか。演奏の躍動感をよく表現するように感じます。

 

ちなみに、スピーカーから「サー」というノイズが聞えるのは、キレイなホワイトノイズであれば100uVを超えたあたりからですので、通常の使用において神経質になる必要はありません。

ただし歪率 という数値を出すときに、残留ノイズの影響が大きく出るということは憶えておいて損はないと思います。JEITA規格の計測方法(正式なカタログ値)で本当に歪みが低いアンプというのはノイズも低いということの証明にもなります。

 

 

実は、歪率の計測には、別の方法もあります。 THD計測です。

こちらは、信号の高調波成分のみを抽出して歪率を計測するモードです。ノイズを除外した真の歪率を知ることができます。  VP-7722Aは帯域500kHzを上限として第10高調波まで計測して表示します。

Alx03_dist02

1kHzの信号で「THD+N計測」と「THD計測」の差を表すとこのようになります。 THD計測では、ノイズに埋もれていた歪成分をはっきりと読み取ることが可能です。

カーブの様子がずいぶんと違いますね。THDではぺるけさん曰く「弓なりカーブ」を描きます。

じつは歪率カーブは以下の3つの要素で構成されています。

Dist_3 

http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja131/jaja131.pdf

THD(緑線)N(赤線)を足す弓なりカーブになるのがわかりますね。真空管アンプのように、ノイズよりもひずみ成分の方が多い場合はTHD+Nでも弓なりカーブになります。つまり、ノイズと歪の相対的な量の関係でしかありません。 カーブのカタチに惑わされず、数値に注目するのが正解です。

 

んまあ端的に言ってしまうと、ALX-03は、超低歪アンプでも超低ノイズアンプでもありませんが、MOS-FET版でさらに悪化しました(笑

それでも音楽を再生したときの音を聴いていただければ、何か感じるのではないか。と思います。

 

※ALX-03の特性として良いところは

 ダンピングファクタ :  350 (ALX-03出力部)
 スルーレート :   180 V/us
 周波数特性 :  1Hz-450kHz (+0dB, -3dB)

という具合です。 わずか10Wのアンプとしては過剰な数値です。

 

※※ アンプの歪率が1%までは人が認識できないなって言っている人もいるようですが、ある程度まともなヘッドホンやスピーカーで聴くと 0.1%の歪は多くの人は感じ取ることができると思います。 ちなみに1%歪はラジカセでゴワゴワに割れてるような音がします。

 

 

 


話題が変わりますが、最近、ちょっと気になるアンプが発表されました。

 

Diyaudio_amp

diyAudio の AMP CAMP AMP です。

スレッショルド社を立ち上げたあと独立して、現在はFIRST WATTとして活動している、ネルソン・パスさんが開発したアンプです。

500Wのハイパワーアンプが必要ですか? それよりも最初の1Wこそが最重要である。という思想の持ち主。スレッショルド社で開発していたハイパワーアンプに嫌気がさした???

 

AMP CAMP AMPもFIRST WATTのアンプと同様に、歪率とかノイズとかパワーとか、ことごとく無視した超シンプルA級アンプです。

 1W時の歪率  0.7%
 残留ノイズ  100 uV
 周波数特性  10 - 20 kHz +/- 0.1 dB
 8Ω負荷出力  8W+8W (3%)
 出力C容量  3300 uF

 

MOSFETを使いつつ、真空管のシングルアンプのような特性を持っています。でもアウトプットトランスがないので、音は違う可能性が高いです。

FIRST WATTの製品は100万円を超えることが多いので、この価格で同じ思想のアンプが手に入ると考えると、お買い得かもしれません。

こういうアンプに興味のある方はキット組立てに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

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パワーアンプ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
diyAudioのキット、価格が高め、初心者向けかと思いましたが、既に注文してしまいました。微妙でしたか...

AYOR さん

いえ、面白いアンプだと思いますよ。

ネルソン・パスさんは結構有名なアンプ設計者で、あれこれ特許をとりながら革新的なアンプを作ってきた人です。
日本の製品ですと、ナカミチのSTASISもそのひとつです。

こんばんは。

MUSES 03 + MOSFETバージョンをゴールデンウィーク中に作製しました。

とても満足のいく音で気に入りました。
昨年の夏まで使っていたDENONのPMA-S10が壊れたのをきっかけに、D級アンプを2つほど買ってみたのですが、どれも満足できるものではありませんでした。

ALX-03はS10よりも高域の広がりがきれいで透明度も高く、楽器の音の重なりを隅々まで聞き分けることができます。低音のしまり具合も適切で好みです。
これからエージングでどう変化していくのか楽しみです。

こんなに軽量で小さいのにS10を超えていると考えると時代の流れを感じます。

たかじんさん、

 製作自体は簡単そうですが.。

 なるほど、一聴してみる価値があるアンプということかと。

期待感が上がってきました。

lione さん

音の方、満足されているご様子で、嬉しい限りです。

デンオンのPMA-S10は、当時20万円くらいしたかなりの力作だと思いますので、それと比べても良い面があるというのは、とても嬉しいです。

ちなみに、時代的にはアレキサンダーさんが考案したこの回路の方がもっと古いんですよ。

AYOR さん

たしかに、非常にシンプルな回路で製作も簡単そうですね。

じつはトランジスタ数が多くて凝った回路よりも、シンプルで単純な回路の方が音(というより奏でる音楽)が明るくて楽しいということも多々ありますから、侮れないと思いますよ。

歪率や残留ノイズ、出力パワーは、なんだかんだ言って最低限のレベルをクリアしていると思うので、私もとても興味があります。

買っちゃおうかな・・・

たかじんさん

返信ありがとうございました。

ALX-03は2週間ほど経って音に深みがでてきて益々素晴らしい音になってきました。S10もUHC-MOSを採用していて気に入っていた為にMOSFET版を組んでみましたが大正解です。

エージングで低音の馬力が出てきて、JAZZやロックのライブ感、オケの臨場感が半端ないです。

歪やノイズは全く気になりません。スピーカに耳をつけてもサー音は一切聞こえません。

このあと電源をDCアダプターからトランスへとグレードアップも行っていきたいと思います。

これが自作アンプのレベルと言えるのか。
AV機器メーカーが心配に思えるほどの実力の基板です。完成製品として売っても全然売れると思います。

本当に良き基板をありがとうございました。

lione さん

こちらこそありがとうございます。
PMA-S10は残念ながら聞いたことがないのですが、同じ頃の10万円くらいのPMA-2000はショップで聴いたことがあります。

他のメーカーの20万円クラスに対抗できるほどのパンチ力と透明感が印象に残っています。

あの頃のDENONのCDプレーヤーはキラキラしすぎて好みではなかったけど、アンプは良かったです。

たかじんさん

完成度の高い基板を頒布して頂いたおかげでALX-03 MUSES03 MOS-FET版を短時間で完成できました。そして、勝手ながら他の自作パワー・アンプと比べさせて頂きました。
 A. 上條式70W トランスリニアバイアス(TLB)パワー・アンプ
 B. 黒田式45W TLBパワー・アンプ(トラ技2019年5月号、半導体は一部変更)
 C. たかじんさん 36W ALX-03 MUSES03 MOS-FET版(製作例集に載せました。)
歪率(THD+N, 1kHz):
 A. ~0.005%(10W)、高域(20kHz)での歪率悪化は1kHzの10倍以上と大きい。
 B.とC. ~0.001%(10W)
試聴の印象:
 A. 音の立ち上がりが良い。高分解能で定位も良い。大音量でも迫力はない。
 B. 元気でよく響く音。音は一体となって2台に比べて分解能は高くない。
 C. 優しく聴きやすい音。分解能は高く、再生帯域も広く感じる。
歪率の低さが何らかの音質の差につながっているとは思えませんでした。
一方で、予想以上にそれぞれの音質に差があると感じました。
 
歪率は音質にそれなりに反映されるだろうと思い込んでいた私は迷路に迷い込んだ感じです。アンプの特性を測る物差しが音出し以外にないのでは、費用と時間を費やして何をやっているのかよく分からなくなる怖さ(楽しさ?)があります。
歪率以外に、素人でも測定できて音質を反映する客観的な測定値が何かないのでしょうか?
お忙しいところ、こんな質問をして恐縮ですが、少しだけでもお教え頂けると幸いです。

skyblueさん

ご感想ありがとうございます。
上條氏のTLBアンプは回路規模が半端ないので、シミュレーションですら回路入力が大変と思います。この回路をよく作れましたね。すごいです。素晴らしいです。

氏も歪率特性を測られていますが右肩上がりの特性になっているので、おそらくオーバーオールNFBは少なめなのでしょうね。TLBにより超低歪を狙っている訳ではなく、あくまでもスイッチング歪の発生を抑えるという目的での採用なのかもしれません。

個人的には、歪率の数値が1~5W時に0.1%以下であれば、それ以外の要素の方が影響力が大きいのかなと思ったりしています。
ALX-03はアイドリング電流を可変できますので、ヒートシンクの放熱が持つならば100mA、300mA、500mAの音を聴いてみるというのもよいかと思います。電源電圧が±20V程度ならアイドリングを500mA流しても発熱は常識的な範囲で済みますので常用可能です。

測定できる数値としては、S/N比、残留ノイズ、チャンネルセパレーション、ダンピングファクタあたりです。数値化しにくいけど違いが出るものとしてC負荷応答波形(10kHz方形波)があります。

ALX-03の基板を購入し部品検討と収集を行っています。
出力トランジスタは手持ちの横型MOSFETのECW20N20とECW20P20、
ドライブ段をKSC3503とKSA1381で考えていますが、出力段がMOSFETの場合、エミッタフォロワ1段でも問題なくドライブできるでしょうか?
回路図上でC2240、A970が使われているQ10、Q11の部分をジャンパしてTTC004B/TTA004BにあたるQ12、Q13のみでMOSFETを駆動できないかというところです。

karsk さん

ご購入ありがとうございます。
3段ダーリントンを2段ダーリントンへ変更するのは可能と思います。
バイアスの電圧が変わりますので、R28の抵抗値を適時変更してください。 あとドライバにベース抵抗を入れた方が発振しにくくなると思います。 33~100Ωくらいが適切と思います。

ドライバ段のエミッタ、ベースのピンを間違えないようにお気を付けください。

時折MJなどで見かけるドライバ段すらない、励振段からの直MOSFETドライブも可能です。
完全なドライブができているか? というのはさておき、音の変化を楽しむというのもアリだと思います。

ご回答ありがとうございます。
横型のMOSFETは入力容量低いので、大電流型の縦型と比べてドライバから見た負荷としては軽いのかなと思ってました。

またビクターの40年前の資料ですが、このようなものを見つけました。オペアンプ電源ピンに入力信号信号を加えて低速オペアンプを高速化する手法です。
https://linearaudio.nl/sites/linearaudio.net/files/feedforward%20power%20supply%20for%20non-inv%20amp%20aes%2010288.pdf
図7の回路がオペアンプ電源ピンを信号として扱っているのが、ALX-03のオペアンプ電源部分と似ていると思います。
安定させるには恐らくアンプ全体で補償の追加が必要になり、私のスキルでは対応できないのでやらないと思いますが、
ALX-03に適用して性能向上する可能性はありそうでしょうか?
最近の高特性オペアンプだとむしろ性能悪化しそうな気もしています。
よろしかったらご意見お聞かせください。

karsk さん

私もあまり詳しくはありませんが、MOSFETの構造として、電流の流れる方向で「縦型と横型」。ゲート構造で「プレーナとトレンチ」。材料として「Si、SiC、GaN」などなど、色々ありますね。

データシートに縦型・横型と記載されていることは稀ですから、明確に横型MOSFETというのは見分けにくいかもしれません。
YAMAHAのB-1というアンプに採用されて有名なV-FET(縦型FET)は、現在は製造されておりませんし。単純にCissの容量から駆動のしやすさを判断するくらいでしょうか。


ビクターの資料ありがとうございます。 OPAMPの入力信号に同期させて電源電圧を振って入力の帰還容量(cob/crss)をキャンセルする手法で高速化をはかっているみたいですね。これはなかなか素晴らしいアイデアと思います。

ALX-03はOPAMPの電源端子から信号を拾って後段へと伝達する方式で、電源電圧は動きません。 ただ、出力振幅はOPAMPより格段に大きくできるため、スルーレートはOPAMPよりも伸びます。

超高特性な最新OPAMPは、応用回路での使用に耐えない(発振など)可能性がありますのでご注意ください。

コメントありがとうございます。

ALX-03はオペアンプの電源ピンに流れた電流の変化をバイアス回路以降の信号として扱っているのであまり影響なさそうですね。
ここの図4.11にもほぼ同じ意図の電源電圧を信号と同期させる回路があって、低速だが高音質なオペアンプと、電源用に高速オペアンプを組み合わせると低出力な電圧帰還パワーアンプの入力部分として面白いかもしれません。
https://www.eetimes.com/op-amps-in-small-signal-audio-design-part-2-distortion-in-bipolar-and-jfet-input-op-amps/

見落としてましたがLT1115が動くんですね。
パラメータ変えてるんですよね?
以前に、そのまま載せたらきれいなサイン波が出ました(笑)

天 婦羅夫さん

ALX-03のOPAMP周りの抵抗の定数をMOSFET版では変更しました。それだとLT1115でも発振せずに動作します。 MOSFETの増幅率の低さも関係しているかもしれません。

きれいな正弦波で発振するとちょっと嬉しくなりますね(笑)
あぁ、いい感じの発振器を作ったんだ~  って。

karsk さん

オペアンプの電源端子から信号を拾う応用回路(電流帰還アンプ)は、オーディオアンプとしてはAlexander氏が最初(特許も取得)だと思っていますが、現代では色々な方式がでていますね。

eetimesの図4.11はどちらも電源電圧を振っているのでビクター方式と一緒ですね。アレキさんの電流帰還アンプとは動作原理と目的が異なっているように思います。

ビクターのは知りませんでしたが、当時のOPAMPの性能を向上させる必殺技としてとても興味深いです。

アレキさんの特許は下記で見ることができます。 参考まで。
https://patents.google.com/patent/US5097223A/en

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