秋月電子のオペアンプDUAL-DIP化基板について
こんな感じで+電源と-電源間にデカップリングコンデンサがついています。
PMLCAP(高級なコンデンサ)が実装されていて、ちょっと嬉しい! と思うのはハヤトチリです。
少し回路を知っている人ならご想像できるとおり、ALX-03のように電源ピンも信号増幅に使うような回路の場合はNGです。
回路図にするとこんな感じですから。
電源ピンを信号増幅に使う回路は多くはないと思うのですが、全く例がない特殊な回路というほどでもないので、気をつけなけばいけません。
また、配線の引き回しも重要で、とくにフィードバックの-信号が+入力に飛び込んだりすると発振する可能性すらあります。近年のOPAMPの増幅帯域は数10MHzを軽く超えてくるので、配線間の飛び込みに十分気をつける必要があります。
オーディオ信号の増幅といっても、使うOPAMP次第でRFを意識しなければいけません。1回路入りOPAMPを使う時点で、高速で帯域が広いものを使っている可能性が高いですしね。(OPA627はGBW=15MHzと低いですが、LM7171なんかは200MHzほどあります)
ALX-03のRev.2基板では、この部分をアンプ基板上で作る際、それなりに配線に気を使いました。
余談ですが、
シングルOPAMPには、Trim端子といって信号のオフセットを調整できる回路が1-8pinにアサインされているものと1-5pinにアサインされているものがあります。
そしてTrimを+電源側で調整するものと-電源側で調整するもの(UA741など)があったりと品種によりマチマチです。
MUSES 03のようにTrimがついていないものもあります。DCオフセットの多いものには、Trimがついている方がいいなって思ったりもしますね。
ということで、この手の基板は便利なのですが、全てのケースで問題なく使えるという訳ではないことを知っておかなければいけません。
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コメント
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Hello. And Bye.
投稿: BruceRox | 2018年4月 8日 (日) 00時57分
> 少し回路を知っている人ならご想像できるとおり、
確かに 「少し回路を知っている人」 はここにコンデンサがあると電源から信号出力が取り出せないように思いますね、高域が減衰して。
でも 「回路を熟知している人」 なら問題なく電源電流から出力を取り出せることがわかります。
OPアンプの2つの入力には実質的に信号電流が流れないのでコンデンサのついた2つの電源端子と出力端子の3つに対してキルヒホッフの第1則をあてはめて考えてみましょう。
投稿: | 2018年5月20日 (日) 19時01分
残念ですが、現実世界はあまくないですね。パターンがちょっと悪くても発振してしまうくらいの変換ソケットによる2in1変換ですから。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/2017/01/alx-03-f8ba.html
こちらで撃沈されている方がいらっしゃいます。
投稿: たかじん | 2018年5月20日 (日) 22時49分
もとの話は、「OPアンプの電源端子に流れる電流を信号増幅に利用するような回路では、OPアンプの電源端子間にパスコンを入れてはいけない。」という主張だったのではないでしょうか?
これに対して、OPアンプの電源端子間にパスコンを入れても正常に電源端子から出力されますよ
ということでして、
パターンが悪ければ発振する、位相補償を見直さず他のOPアンプに差し替えれば発振する という可能性は当然その通りだと思います。
投稿: | 2018年5月21日 (月) 00時59分
話を端折り過ぎました。
おっしゃる通り、電源端子にコンデンサがぶらさがっても信号は取り出せますね。
このは回路は電源端子から取り出した信号をフィードバックしますが、OPAMPは品種により帯域が数MHzから100MHzに達するモノがあります。高域限界の領域でフィードバック信号の位相に与える影響としては、電源端子のデカップリングは十分インパクトがあるかと思います。
位相補償を大きくして対処することは可能かもしれませんが、デカップリングなしの変換基板を使えば済むことでもあり、そもそも、この基板は変換基板なしで2in1ができますよという内容を書きたかったのです。
位相補償の見直しには、ダミーロードや測定器などの環境はもちろん、最悪時、終段-ドライバ段-プリドライバ段、励振段など一式を吹っ飛ばしても復旧させる覚悟で挑む必要があり 「基板を購入された方は、ご自身で検討してください。」 と軽く言えるものでもありません。
ただし、単に秋月のソケットはNGと書かずに、どういう影響がでるのか、何に注意しなければいけないのかを説明した方が良かったですね。
ご指摘ありがとうございます。
投稿: たかじん | 2018年5月21日 (月) 17時15分
真摯なご返答、ありがとうございます。私も匿名のまま読みようによっては挑発的な書きかただったことをお詫びいたします。
実は以前OPアンプ電源端子から出力を取り出す回路を実験したことがあり、このような回路ではパスコンはNGだと思っていたので、数pFの小容量から徐々に増やしていったのですが予想に反して容量を増やしていっても全く特性に変化なく動作するするのに驚き、シミュレーションしてようやく納得できた経験があります。
*通常の正負2電源回路のパスコンのように電源端子からGNDへのパスコンはもちろんNGです。
昨年のトラ技9月号に黒田徹氏 (回路を熟知している人 だと私は思っていますが)による同様な回路の記事があり、その回路には電源端子間に0.1uFがついています。
未確認ですが、このパスコンはむしろあったほうが安定方向に向かうケースが多いのではないか? とも考えています。
投稿: | 2018年5月21日 (月) 22時12分
実際に組まれて経験されたのですね。
黒田徹氏の書籍は4~5冊ほど持っていますが、どれも内容が濃くて、とても勉強になります。 トラ技9月号は見た憶えがありますが、そこまでは気が付きませんでした。
この回路のOPAMPの電源は、トランジスタによる定電圧回路が挿入されていて見かけ上は電圧が一定になっていますね。 電圧が一定であれば、コンデンサへのチャージ、ディスチャージは行われず、何の影響も無いようにも見えます。
しかし、実際には電流を引くと、Vbeが変化して微小ながら電圧は変動していると考えられます。
私も、ちょっとシミュレーションしてみました。
結果、GNDに対してコンデンサを挿入すると高周波領域で電流の変化が吸収されて周波数特性に急峻なピークが現れます。 これはNGです。
ところが、+-間にコンデンサを挿入すると何も起きません。 よく見てみると、+側電流が増えた分、-側の電流が減っており、+側のvbeと-側のVbeとで相殺されて+-間の電圧が殆ど変化しないため、コンデンサへ電流が吸収されないようです。
おそらくですが、OPAMPの出力段がA級動作しているときに限って、このような事が起きるのだと思います。
OPAMPがAB級動作しはじめたり、アンプの出力がクリップして電源からの+-電流のバランスが崩れたとき、このコンデンサへの充放電が開始され、ちょっと危険な香りがしますね。
クリップするくらいの振幅のときは、励振段のトランジスタのVceが1v以下に減るので、トランジスタの周波数特性も極端に落ち込み、寄生発振の原因にもなることはご存知かと思いますが、それと合わせて+-間コンデンサが途端に活きだして高域を吸収するという掛け合いで、案外、寄生発振を抑え込む働きをするのかもしれません。
ちょっとおもしろいですね。
大変勉強になりました。
投稿: たかじん | 2018年5月22日 (火) 19時03分
キルヒホッフの第1則はOPアンプのように閉じた回路を一つのノードとしてとらえても成り立つので
Ivcc+Ivee+Iout=0 (OPアンプに流れ込む電流を正とする)
-(Ivcc+Ivee)=Iout
つまりOPアンプの電源電流の総和は常にOPアンプの出力電流に等しいということですよね、向きは逆ですが。
したがって、それぞれの電源電流をカレントミラーで合成してシングルエンド出力として取り出すとOPアンプの出力電流に等しいい電流のみが取り出され次段へ伝達されます。(カレントミラーの電流比が1ならば)
そしてこれは、OPアンプの電源端子間にパスコンがあったとしても(OPアンプにパスコンが内蔵された状態を一つのノードとして考えたとしても)何も変わりません。
たとえば、たかじんさんがシミュレーションで考察した事象を例にとれば、OPアンプの出力段がB級動作となるとカットオフ側の電源電流は変化しなくなり、もう一方の電源電流のみがOPアンプの出力電流と同じ変化をすることになります。その場合OPアンプの電源トランジスタのVbeは一方のみ変化することになるのでパスコンの両端電圧が変化してパスコンに充放電電流が流れることになりますが、合成したカレントミラーの出力にはこの電流は相殺されて出力されず、やはりOPアンプの出力電流に等しい電流のみがカレントミラーから出力され次段へ伝達されます。
*実際にはカレントミラーの電流比が常に一定ではない、上下のカレントミラーの電流比が必ずしも等しくないといったことは、OPアンプの動作がA級動作であっても、また電源端子のパスコンの有無にかかわらず顕在するので、また「別の問題」として分けて考えるべきことだと思います。
私がこのパスコンはあったほうがむしろ安定方向に向かう可能性が高いのではと考えるのは、OPアンプ単独の回路でもパスコンから電源端子までの配線が長いと主に配線のインダクタンス成分が影響して不安定になることはよく経験しますよね。発振に至らなくとも矩形波応答でパスコンが直近にある場合には見られないサグが出たり 特にGB積の高いOPアンプでは。これは電源電圧の変動がOPアンプの出力にも影響を及ぼしているということなので、こういったことを緩和する作用があるのではと考えるからです。対GNDではないので、どの程度効果があるかはわかりませんが…。
何度もしつこく長文失礼いたしました。
投稿: | 2018年5月23日 (水) 17時10分
おっしゃるとおり、どんな状況でもキルヒホッフの法則が成り立ちますね。電流がどこかに消えて蒸発することはないですし。
OPAMPやバッファ回路の電源ラインを信号の取り出しに使う回路構成は現代の電流帰還アンプでは定番です。そういった回路の場合、バッファ回路は殆どのケースでA級動作しているため±電源端子間に挿入されたコンデンサは充放電されず、邪魔をしないのだと思います。
このバランスが崩れるのは、出力がクリップした場合などで考えると分かりやすいかもしれません。
帰還が掛かっている場合は、普段は出力バッファ部から電流が加算されているためOPAMPの負荷はとても軽いのですが、アンプの出力がクリップしたとき、本来あるべき波形への応答に対して出力バッファからの加勢が足りなくなるのでOPAMPの出力がドバっと増えます。
また、スルーレートを超える矩形波が入力された場合も、OPAMPの負荷は出力段から加勢されるまでの間、負荷が重くなって大きな電流が流れることになります。矩形波の立ち上がりの瞬間は+電源の電流、矩形波の立ち下がりの瞬間は-電源の電流が増大します。
こういった定常時から逸脱した瞬間に+-電源端子間のコンデンサが効き始めて周波数特性や位相特性、リニアリティが変わる気持ち悪さは残りますね。ですので多くの回路ではコンデンサは入れていないのだと思います。
ただ、クリップ時に寄生発振してしまうような場合には有効だと思いますし、おっしゃる通り電源配線が伸びてしまって回路が安定しない場合にも有効な対策手段とも思います。大変興味深い対策案と思います。
> OPアンプ単独の回路でもパスコンから電源端子までの配線が長いと主に配線のインダクタンス成分が影響して不安定になることはよく経験しますよね。
これは、そもそも基板配線がイケてないケースですね。基板配線の不具合は基板で修正するのが適切ではあるのですが、生産日程が迫っていて、どうしても後付けで対策しなければならないという状況はありえますね。
上下のカレントミラーは、ゲインを1倍にしたいときは1:1ですが、ゲインを変更したいときは比率をいじったりもします。アキュフェーズはカレントミラーですらなく、エミッタ接地回路にして大きなゲインを稼いでいるようです。
投稿: たかじん | 2018年5月24日 (木) 19時07分
OPアンプのパスコンの話からは逸脱しますが、出力がクリップした場合の過剰電流には要注意です。
OPアンプの電流が急増してカレントミラーTrを飽和させ、回復時に寄生振動する以外にも、場合によっては破壊に至る危険もあります。出力クリップ時の波形は通常正弦波の上下が単にスライスされた台形状になりますが、クリップしたところで一段ガクンと低下した波形が観測されるのはカレントミラーに過剰な電流が流れている証拠で危険です。
古い黒田さんの製作記事では、OPアンプの電源TrのエミッタとOPアンプ電源端子間に抵抗を挿入し、電源TrのベースとOPアンプの電源端子間に2本の小信号Diを直列に挿入し、抵抗両端の電圧が約0.6Vになる電流が流れると自らの電流で電源電圧を引きずり降ろすことで電流制限をかけていました。
Trが飽和するまで電流制限がかからない回路は両刃の剣で、スルーレートが増大する反面このような問題も持っています。ダイアモンド差動回路を使ったサンスイのアンプも当初は励振段のTrが破壊する市場不良が多かったという話を漏れ聞いたことがあります。
投稿: | 2018年5月26日 (土) 12時57分
該当の基板で調べていてこちらを拝見しました。
初心者ですので質問させて頂きたいのですが、これの基板のみの物でmuses03のデュアル化を考えているのですが、このコンデンサというのはこの基板にとって必要なものなのでしょうか。
コンデンサを付けなくても動作しますか。
投稿: his | 2018年5月31日 (木) 00時25分
> OPアンプのパスコンの話からは逸脱しますが、出力がクリップした場合の過剰電流には要注意です。
おっしゃる通りですね。クリップ時の動作を考慮するのは市販アンプではごく普通のことす。EIAJの最大出力の規定が10%歪ですから、その時点でクリップしまくってますし。もしクリップしただけで壊れたり、故障の原因になっていたら明らかな設計不良です。 そういう意味では、±電源間コンデンサは、いやらしい存在になります。=一般には入れない。のだと思います。
ダイアモンド差動回路で問題になったのはアメリカのプロ機器用にフルパワー時の出力ショートでパワトラが吹っ飛ぶということがあったようです。
http://www.ishinolab.com/modules/doc_serial/audio_history_japan/serial001_024.html
確かに民生機器ではフルパワーショートまではやらないと思います。出力をショートして、音楽CDを流しならがボリュームを12~1時方向くらいまで上げて、過電流保護動作で「リレー跳ねを繰り返す」状況を10分間くらい持てば問題なしと判断してました。こういうテストはドキドキしますよね。でも品質保証部のひとは容赦なくやってくれます(笑
イシノラボさんも書いていますが、電流制限回路を入れると明らかに音質が悪くなります。
ですので、その音質低下を容認するか否かは製品の方向性付けに依存します。業務用機では音質よりも信頼性をとるのが普通ですが、サンスイは頑なに搭載しなかったみたいで、結果的にプロ機を断念したと書いてます。音質を犠牲にした製品を世に出したくないという強い意思を感じます。 こういう姿勢はかっこいいですね。
投稿: たかじん | 2018年5月31日 (木) 08時16分
his さん
±電源間コンデンサは入れないでください。改造して回路定数をいじる技術をもっていなければ、部品表/回路図の通りにしてください。
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/2017/12/alx-03-x-muse-3.html
>> パスコンから電源端子までの配線が長いと主に配線のインダクタンス成分が影響して不安定になることはよく経験しますよね。
と書かれていらっしゃるので、名無しさんは基板や実装のスキルが足りていない可能性があります。ある程度以上の人であれば、こういうイケてない事を「よく経験」はしません。一度経験されたら、次から気をつけるのが普通です。
ちなみに、MUSES03はオフセットのバラツキが大きいので、DCサーボ側に使うのは適切ではありません。 DCサーボにはNJM5534をオススメいたします。
信号増幅側にMUSES03を使うと、とても繊細、かつ鮮やかな音がしますので、ぜひ試してみてください。
投稿: たかじん | 2018年5月31日 (木) 08時26分
少し前のことになりますが、ラジオ技術の5月号で黒田徹先生の連載でこのタイプのアンプ回路のシミュレーションを記事にされていました。
もしかするとたかじんさんに触発されたのかもしれませんね。
投稿: ダンベルカール | 2018年7月 1日 (日) 09時41分
ダンベルカールさん
オペアンプを電源電圧以上の環境で使う場合、フローティングっぽくすることは昔から教科書的なものに載っていますね。
電流出力のポートとして電源端子を使い、次段へと信号を伝達している方法は、あまり見かけないとは思うのですが、私も世の中の回路全てを見て歩いているわけではないので、断言できません。 黒田氏が見てくださっているなら大変光栄と思います。
投稿: たかじん | 2018年7月 1日 (日) 15時21分