beyerdynamic DT 990 PRO レビュー
このブログのサブタイトルには 「ヘッドホン+オーディオ回路」 と書いてあるのに年に1度くらいしかヘッドホンのレビューをしていません。
今日は、久しぶりのレビュー記事です。
おそらく、ヘッドホンが好きなひとは誰もが知っていると思われるbeyerdynamic のDT 990 PROです。
ショップによく置いてあるので、試聴された人も多いと思います。
正規代理店のTEACのサイトによると
形式:オープン型
周波数特性:5~35,000Hz
感度:96dB
インピーダンス:250Ω
コード:カールケーブル、3m(引き伸ばし時)
プラグ:3.5mm(ミニ)、6.5mm(標準)アダプター付属
質量:250g(ケーブル、コネクターを含まず)
とあります。
概観で特徴的なのは、カールコードです。 スタジオユースで有名なソニーMDR-CD900もカールコードでしたね。(現行のCD900STはストレートケーブルに変更されてます。)
スタジオでは、ケーブルがからまず、ちょっと移動したいなんてときには便利だとは思いますが、普段、自宅で聴くときには重たいし、無駄に配線長が長くなるので何とも言えませんね。
また、250Ωというインピーダンスもbeyerdynamicのヘッドホンには多く採用されています。 600Ωほど使いにくくもなく丁度良いのだと思います。
実は、この手の古い設計のヘッドホンのケーブルは3線式でGNDが共通になっています。
ヘッドホンのインピーダンスが高いほど、流れる電流が少ないため共通GNDに流れる電流も少なくなり共通インピーダンスの影響が少ないのです。 つまり3線式ケーブルなら、高インピーダンスの方が左右のセパレーションが悪化しない訳です。
ざっとシミュレーションしてみると、共通GNDの等価抵抗が0.5Ωとして、
ヘッドホンインピーダンス:600Ω時 セパレーション約61.6dB
ヘッドホンインピーダンス:250Ω時 セパレーション約54.0dB
ヘッドホンインピーダンス:32Ω時 セパレーション約36.4dB
となります。
まあ、サクっとリケーブルしてしまえば、それで済む話ではあるんですが、純正のままの特徴を活かしておきたい気持ちもありますね。(細径の4線ケーブルもあまり売っていないですし。)
作りは、最低限のパーツで組み上げられて装飾は一切ありません。 質実剛健という感じがします。
このヒンジ(?)部分が、多少θ軸方向に回転するため、耳へフィットするようになっています。 全体的には、ゼンハイザーHD598と比べると安っぽさを感じてしまいますね。
イヤーパットは、軟らかく通気性もあり心地が良いです。 長時間かけていても蒸れるような心配もありません。 重さはちょっと重く感じます。
肝心の音はといいますと。。。
ヘッドホンアンプの出来を包み隠さず、あらわにするヘッドホンといえます。
僅かでも高域に突き刺さるような音がでるアンプだと、かなりキツめな音が出ます。 OPAMP一発のアンプや歪の多いアンプで聴いた場合は厳しい評価になると思います。
今回は、Sabreberry32ダイレクト、HPA-12フルディスクリートヘッドホンアンプ、ALX-03電流帰還アンプとで鳴らしてみました。
<<パワーアンプをヘッドホンに接続する冶具>>
どのアンプで鳴らしても、6~7kHzから10kHzにかけての鋭さがあって、DT 990 PROのひとつの特徴になっていると思います。
同様にオープン型であるHD598はゆったりしつつ開放的なのですが、かなり性格が異なります。 いわゆるモニター調で、余韻が少なくタイトです。 録音されている中にパチっというようなノイズ混入や、波形クリップなどをハッキリと聞えさせる怖さがあります。
アタック音がかなり明瞭。 空間は少し広めで頭外定位っぽさはオープン型の特徴といえるかもしれません。 低音は量はあるのですが、どろーんとした音ではなくスパっと切れのある低音で好感が持てます。 ボーカル領域(150~600Hz)あたりには、もう少し色っぽさと滑らかさが欲しい所です。
それでも、ボーカルものが不得意かというとそうでもありません。
過度の音圧上げで、ごちゃごちゃになった曲はダメなのですが、余裕のある音圧で録音されたボーカルはとてもきれいです。 例えば、マライア・キャリーなどは、非常によく合います。
HD598は、音量を上げると、どんどん音が団子になって分解されなくなって行くのに対し、DT 990 PROは、へこたれずに大音量でも鳴らしきります。 ただし、ここでもアンプに依存します。
Sabreberry32ダイレクトで鳴らすと、キメ細かい音の雰囲気、高域のキレなどが素晴らしいのですが、ボリューム最大まで音量を上げると、ちょっとつらくなってきます。
HPA-12(純A級バージョン)では、さすがに大音量でもビクともしません。 いくぶんマイルド傾向になりますが、わりとリスニング向きな音で楽しく聴けます。
パワーアンプであるALX-03は、電源の懐の深さで超低音の安定感が抜群です。 歪感の少なさは特筆物かもしれません。しかし聴き比べるとHPA-12の方が繊細な音が聴けるようです。
もっと高級なヘッドホンだと、ヘッドホン自身がきれいに聴こえさせることがあって、案外そつなく鳴ってしまうのですが、アンプ(や録音)の粗探しには、このDT 990 PROがぴったりです。
測定器的な意味合いで、このヘッドホンはかなり活躍(期待)できそうです。
原音再生以上にソースの粗を見つけ出すのが得意です。
webを検索すると「サ行が突き刺さる」というのを見かけますが、おそらく駆動しているアンプに依存する部分が大きい(聴く曲にもよる)のではないかと感じました。
T-Square and Friendsのアルバム T COMES back の勇者は、このヘッドホンを持っていたら、ぜひ大音量で聴いてもらいたい曲です。 変態的な極低音を腹の底から感じることができるでしょう。
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コメント
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ドライバーのインピーダンス、片側信号線の共用、セパレーション対策、と深いですねぇ。
そこまでの考察は追いつかないですね。
投稿: 天 麩羅夫 | 2017年11月28日 (火) 12時54分
天 麩羅夫さん
新しい設計のヘッドホンは、端子が3posであっても配線が4線式になっていることが多いと思います。 共用している部分が長ければ長いほど左右の音が混じります。
ただ、それを気にするかどうかは別問題です。
普通にスピーカーから音を鳴らすと、右スピーカーは右耳のみ。 左スピーカーは左耳のみに入ってくる訳ではないですからね。
クロスフィード(crossfeed)という左右間の音をまぜる回路すらありますし。
https://ka724ka.wordpress.com/2011/11/13/headphone-xfeed/
投稿: たかじん | 2017年11月29日 (水) 12時44分