SOULNOTE D-1 レビュー 試聴室訪問(後半)
複数のアッテネータ値を組み合わせて最小のリレー数により実現したもので、この抵抗値の計算は大変だったとのことです。 当然ですが、固定抵抗が使えるので一般のボリュームよりも音質的にも耐久性的に有利です。 A-1の音質に一役買っているのは間違いないと思います。 リモコンで音量調整できるのも良いですね。
<< カタログより抜粋 >>
ATTの構成については企業秘密なんだそうです。 ひとくちにATTと言ってもL-PAD型、R2Rラダー型、電圧ストリング型、重み付け抵抗分割型、定インピーダンス型など色々ありますからね。 カタログにはバランス型ということだけ書かれています。
試聴室では、2台のA-1を片チャンネルだけ使って、ツインモノ構成でドライブしていました。 BTLにするよりもこちらの方が望ましい音になったそうです。 電源の余裕度の違いによるものじゃないかとのお話です。
2台のA-1は、リモコンひとつで同時にボリューム操作できるので、まったく違和感なく使えていました。
この発想は斬新です。 もし、BTLで2台のアンプを使っているなら、そういう使い方を試してみるのも面白いですね。 目からウロコが落ちるようなワザです。
D-1のロックレンジ切り替え
話をD/Aコンバータに戻して、、、
D-1には、クロックのロックレンジ切り替えがついています。 ESS社のDACに興味を持ている人はご存知だと思います。
何のロックなのかというと下のブロック図でいうところのDPLLだと思います。
ロックレンジは、ジッターの値と深く関係しています。 ジッターが多いSPDIF入力などでは、ロックレンジが狭すぎるとロックが外れて音が途絶えてしまう可能性があります。
このブロック図で不思議なのは、SPDIF入力部にPLLがある訳ではないという部分です。 PCMやDSD入力の場合、そもそもクロック入力があるのでPLLをつかって同期する必要がないですし。 くわしくはESSが公開していないこともあって不明です。
音の方は、写真でいうところのシャープネスが変わるようなイメージが近いと感じました。 ロックが外れなければ「0」で良いんじゃないかと思います。
USB-IN はインターフェイス株式会社に
D-1はイマドキのDACなので、当然のようにPCM768kHz/DSD11.2MHzまで対応のUSBポートが付いています。 立川にあるインターフェイス社もオーディオには特別のこだわりがあって、非常に良いUSB受信部を作ってくれるし、仕様についても細かく対応してくれたとのことです。
将来的に端子形状が変わったり、もっと良い接続方法が出てきたときにも対応できるように、リアパネルはハメ込みにしてアップグレートできるようにしたそうです。 ユーザー視点で作られていますね。 ここも新生SOULNOTEの良さのひとつなのかもしれません。
このようにiPadからも鳴らすことが出来るみたいです。 といいますか、デモしてもらいました。 再生ソフトは。。。すみませんチェックし忘れました。
PCオーディオとしても使いやすいです。 無音のLinux機と接続したいですね。 USB Audio Class 2.0、DoP、ASIO対応のようです。
加藤氏の持論と実験デモ
20kHz以上が含まれたハイレゾの魅力、音圧の立ち上がり、シャーシの防振、ケーブルの太さなどなど、加藤氏が今まで経験してきたことから得た持論など、とても興味深いお話も聞けました。
実際にシャーシの上に防振するものを乗せたりする実験も楽しかったです。 試聴会でお話ししている内容とのことですので、ぜひ試聴会で体験されてみてはいかがでしょうか。
実験のあと、高音質なSDカード、高額な御影石、ブレーカーに貼る謎のパワーストーンなどを推奨したりしませんのでご安心下さい(笑
お話が楽しくて、時間があっという間に過ぎていきます。
結局のところ、オーディオ機器は ”設計する人物” そのものなのだと思います。
狙った音・目指す音が出て来るまで、親の敵を討つくらいの勢いで作り込んでいってます。 測定して、所定のスペックがでたからOKというのは、もはやオーディオではありません。
また、開発期間やコストそっちのけで、執念のチューニング作業を許してくれる会社(周囲の同僚や上司など)からの温かさが得られるかどうかも、結局は”信頼される人物”であることがキーになります。
もちろん期間やコストも守って最高の音を出せるのも”人物が持つ技術力”に依存しますね。
音の感想は
あくまでも私が感じた個人的な意見として読んでください。 また、システム全体がSOULNOTE製品、スピーカーはPMCという組み合わせでの感想になります。 さらに試聴ディスクも推奨の曲ですから、得意なものに偏っている可能性もあります。 ご了承ください。
一聴して感じたのは 「音の軽さ」 です。
低音が出ていないという意味ではなく、むしろ、物凄く低音が出ているのですがドロドロとした重さ、遅れが微塵もありません。 だからと言ってハイスピードなんて言葉もいらない。 その場に演奏者がいるような雰囲気です。
例えるなら、オーディオシステムがここにはなく 「空気」 のような存在。 ライブ会場の音そのもの。と表現していた座布団1枚さんの言葉の意味がわかりました。
帯域レンジが。 高域の伸びが。 S/Nが。 歪率が。 チャンネルセパレーションが、、、
どうのこうの。。。クドクド語るのは意味がない。
3m先に演奏者がいて、楽しく演奏している。
ただ、それだけ。
歓声や拍手が自然発生的に起きる。
自分もその場で拍手喝采を贈りたい気持ちに駆られる。。。
聴いてはいけないモノを聴いてしまったという後悔に似た何かと、ライブを聴き終えたような充実感とが交互にじわりじわりと滲み出てくる帰り道でした。
試聴ディスク:ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ・ライブ、手嶌葵、寺島レコードJAZZ、福山雅治、その他。
※ CSRの試聴室にて聴きたい場合は、同社営業部を通すことで個人でもOKとのことです。 現在、試聴機材がイベントで全国を飛びまわている関係もあって完全な予約制をとっているそうです。
※※ 今回の試聴室訪問は、ラズパイ・オーディオの会、会長さんの粋な計らいで実現した、裏ルート的なものだったことを付け加えておきます。
< 追記 >========================
オリオスペックにて開催されたD-1試聴会の模様はこちらに詳しく掲載されていました。 さすがに表現が上手です。
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素晴らしい記事をありがとうございます。
私がたかじんさんの記事内容を理解できているかどうかは疑問が残ると思いますが、soulnote の愛用者として、うらやましいです。
D-1を購入する方向で考えようと思います。 たかじんさんの Sabreberry32 を利用したネットワークプレーヤーは、Cu-Box & DDC + sd2.0 より良いですから。
どこかで、D-1を視聴したいと思っています。
投稿: n'Guin | 2017年6月 4日 (日) 21時31分
n'Guin さん
とてもラッキーな出来事でした。
Sabreberry32とsd2.0とを比較ですか。 気に入って頂けているようで大変うれしく思います。 ありがとうございます。
試聴室にSabeberry32を持っていかなかったのが心残りでした。 同じ環境で比較しないと、どのくらい違うのかを把握することができません。
D-1をどこかで試聴できればいいですね。 ご自身で聞いて判断するしかかいと思います。
実はsd2.0との比較もさせて頂きました。 ただ、sd2.0の方は、電源を入れてすぐの音でしたので正確には判断できません。 それでも、音のみずみずしさで結構な差があるように思いました。(SPDIF接続で比較)
ES9018を非同期モードでならしたような独特のESSくささを全く感じませんでした。 回路設計が上手いのか、ES9038PROのおかげなのかは不明です。 Sabreberry32はマスターモードで動かすことで、だいぶ低減しますが、それでもESS臭はわずかに残りますね。 このあたり、好みが分かれる部分だと思います。
ES9018の音があまり好きではないという人にはD-1は合うように感じます。
投稿: たかじん | 2017年6月 5日 (月) 20時42分
前半、後半に渡る詳細なレポート、有難うございます。
SOULNOTE、と言うより加藤さんは、すべてに亘って独自の拘りがあり、「俺の音を聴け!」という魂が感じられますね。近年のオーディオ機器は、ほぼ成熟しており、似たりよったりのデバイスや回路構成ですが、これだけオリジナルに拘るのは、すごいの一言です。もっとすごいのは、これだけのオリジナリティをたったの20万円足らずの低価格で供給されていることでしょうか。儲かってるのかなあ?
たかじんさんの感想も細かいことは一切無く、ただただ、その圧倒的な説得力に言葉を失ったという感じでしょうか。^^ 歪率などは、0.01%を切っていれば問題ないですよね。
今回のレポートは、D-1とA-1の組み合わせでしたが、それぞれ、他の機器と取っかえ引っかえして、単独で比較できると良かったですね。
これを超える、たかじんさんの次なるプロジェクトに期待してます。^^
投稿: kontiki | 2017年6月 5日 (月) 21時53分
kontikiさん
おっしゃる通り、自分で読み返して見ると「俺の音を・・」的な感じになっていますね。 私の文章能力が拙いせいです。
実際の加藤さんは、とても温厚で、誠実で、気さくな方で話をしやすい人でした。
試聴会がお近くでありましたら、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
製品を買わないまでも、なにか刺激をうけると思います。
歪率 0.01%以下というのは、私もそう思います。
THD 0.00003% とか、 ノイズ 0.95nV/√Hz など、極度の性能重視OPAMPが出てきていますが、数値だけに囚われてしまうと、もっと重要な部分を見落としてしまう可能性すらある。 と思います。
NJRCのMUSESシリーズなども、勇気ある行動ですね。 実際の音を聴くと納得できるけど、スペックだけみてて音を聴かないと良さが分からないです。
よくソウルノート製品のレビューで、迫力があるとかスピード感があるなど書いてあるのを見るのですが、そういう誇張・主張のようなものは感じませんでした。
拍手や歓声が、録音されたものとは思えない。 なんなのだろう。。。
投稿: たかじん | 2017年6月 5日 (月) 23時31分
こんばんは、オーシャンです
アマチュアでもリレー式Volにトライしている人がいました
http://mikenekosou.blog76.fc2.com/blog-entry-197.html
ビスパで頒布されている様です
PCが近くにあるなんて我慢出来ないそうで、判る気がします
他のスレの話題ですが、スマホ世代はCDをプレイヤーに掛ける方法が解らないそうです。カセットやレコードなら未だしも、と思っていたらこちらは、今人気なんだそうです。カセットは再販されてます
なんだかな〜
投稿: オーシャン | 2017年6月 9日 (金) 00時13分
オーシャンさん
このリレーVOLかなり特殊ですね。 前後の回路も含めてのボリュームになっています。
しかし、16型ボリュームを分解して基板に取り付けてロータリースイッチにするアイデアは逸品です。 こんな技をを思いつくとは。。。 素晴らしいです。
確かに、私も真剣に音楽を聞くときはPCの電源は落としています。 FANノイズがうるさいんですよね。
スマホ単体で音楽を聞くのは難しくないですね。 CDをプレイヤーにかけたことがあるか無いかは別として、複雑なことはないと思います。
UPnP環境を一式準備して音をだすまでの道のりはかなりハードだと思います。 少なくともネットワーク(LAN)に精通していて接続できる必要がありますし、ルーター、NAS(メディアサーバー)、UPnP機器、スマホ、アンプ、スピーカー、場合によってはPC、macなどを含めて全てを正常に使えるように設定する必要があります。
スマホ世代の多くの人が、これらのセッティングを難なくできるというのであれば、画期的かもしれません。
投稿: たかじん | 2017年6月10日 (土) 16時00分
こんにちは、オーシャンです
説明不足で申し訳ないです、PCとはコントロール回路にPIC等を使いたくなかったと言う意味です
もっともVOLUMEという事もあって、誤動作がこわいとも思えます
今のスマホ世代がupnp機材のセットを楽々こなすかどうかは判りませんが、昔友人の子供が5歳でビデオ予約をこなしたそうで、妙に感心した事を思い出しました、自分の母親は何度教えても、死ぬまで出来ませんでした
個人的には、リッピングおよびファイル管理が一番ハードルが高いと思います。そういえばiTunesがiOS11でflacに対応するとの噂がありますね
投稿: オーシャン | 2017年6月11日 (日) 17時49分
オーシャンさん
なるほど、そういうことでしたか。 ボリュームをばらして基板と組み合わせてロータリースイッチに改造するアイデアは、とても素晴らしいと思いました。
確かに、いまとなってはCD-ROMがついていないパソコンも多くなっているのでリッピングが面倒ですね。 フォーマットも何にしようかと考えてしまいます。
通常CDは320kbpsのMP3で十分かなって思います。 録音が良いディスクや、気に入っているアーティストはFLACかALACですかね。
iTunes、iOSがFLACに対応するとFLACで統一でOKになりますね。 ハイレゾ配信もFLACを買えば良いし。
投稿: たかじん | 2017年6月13日 (火) 21時49分