SOULNOTE D-1 レビュー 試聴室訪問(前半)
SOULNOTEのD-1が気になるという事を先日書いて、いつか聴いてみたいな。と思っていたところ、思わぬ形で実現しました。
私を導いてくれたラズパイオーディオの会の会長さん(座布団1枚さん)、
突然の訪問を快諾していただいたCSR社長の中澤矩長氏、
そして10周年記念モデルの回路設計・開発責任者である加藤秀樹氏に心より感謝いたします。
<< ソウルノートの試聴室の風景 >>
音質的な評価などは、評論家先生方のほうが詳しく正確だと思いますので、私は少し違ったアプローチでレポートを書こうと思います。
同社の伝統ともいえるnon-NFB回路とは
随分昔、オーディオアンプでNFBのデメリットを訴え、NFBを廃した無帰還アンプは各社から出ていました。 例えば、DENON POA-3000Zや Pioneer M-Z1、Onkyo Integra A-927などです。
それらは、歪を低減するように動作する複雑な仕掛をして終段(電力増幅部)のみをオーバーオールNFBのループから外すものでした。 スピーカーからの逆起電力の影響を受けず過渡応答も素直になるという意味では効果は十分だったと思いますが、結局は長続きせず、終段からフィードバックする回路に戻っていきます。
そんな中、Philipsブランド時代から採用し続けている独自のnon-NFBアンプ回路とはどんなものなのでしょうか?
D-1に使っているアンプ回路の概略図を書いてもらいながら説明いただきました。 (おそらく過去のMJ無線と実験の方が詳しい回路が載っていると思われます。)
<< エミッタ接地回路! >>
回路の動作としては、非常に単純で「エミッタ接地回路」そのものです。
ただし、エミッタ側にも抵抗を入れてゲインをコントロールしています。例えば、上下に1kΩづつ入れると0dBアンプになります。いわゆる局部(電流)帰還でNFBループは存在しません。
これって細かいことを言うと歪が発生しますよね?
加藤氏いわく、スペックは無視している。 と・・・
NFBループなしで歪を抑えるテクニック?
驚きの言葉がでてきましたが、
実際のD-1のカタログ上のスペックは0.003%という負帰還なしとは思えないほど低歪ですし、少なくとも人が不快な音として認識できないくらいのレベルに歪を抑える工夫はしているはずです。
回路構成は、
増幅段 -> エミッタフォロア段 -> 増幅段 -> エミッタフォロア段
といった回路を全段バランス構成で組んでいるそうです。
増幅段の負荷にノンリニアな次段のベースを接続せず、純粋な抵抗負荷に近づけることで歪の発生を極力抑えているように思います。1段1段の増幅をとても大切にしていると感じました。カタログによると電源電圧が±43Vとやけに高いのにも秘密が隠されているのかもしれません。
また、アンプ全体としては初段側の増幅率が高い方がノイズ面で優位になるため、通常アンプでは初段ゲインを高くするのが定石です。 しかし、そこも無視して、音を聴いてゲイン配分を決めているとのことです。 では、D-1、A-1の音がノイジーかと言うと、少なくとも試聴室で聴いた限り、ホワイトノイズなど一切聴こえませんでした。
「音を聴いて決める」 という素人のノリのような雰囲気でお話しされるのですが、非常にしっかりとした技術ベースがある上で綿密な設計をされていると思います。
<< こちらが SOULNOTE D-1 >>
部品の選定プロセス
加藤氏いわく、
単純にトランジスタを交換するだけでは、何の評価にもなりません。
それぞれのトランジスタには最適な動作点があり、その動作点を見つけた上で「このトランジスタは、こういう音がする」とはじめて判断することができるという。 これはとても参考になる意見です。 現在は、以前に買い込んだ日本製のトランジスタを主に使っているとのことです。(一部で海外製TRも使用)
抵抗は、過去に散々検討した結果で1/4WのMELF。 そこから変えていないとのことでした。 このあたりが鈴木サウンドから変わっていない音の方向なのかもしれません。
安全性を確保するうえで必要な自立型の抵抗は、音の良いものが見つかって、それを使っているとのこと。 けっこう重要なノウハウな気がします。 アブノーマルテストもEMIテストもきっちり行っている点は、ガレージメーカーとは違う同社の強みですね。
回路チューニングの基準はとてもシンプル
音楽を聴いたときに、
「楽しいか」
「楽しくないか」
の2択で、チューニングは「より楽しい方」に持っていくのだそうです。
どっちつかずで迷うようなときは 「どちらもダメ」 と、ちゃぶ台返し的に根本から見直すそうです。 明確に目指す音の方向性と、強い意思がないとできない芸当だと思います。 スケジュール的に自分の首を絞める結果になりますからね。 そこまでしても音にこだわる加藤氏の情熱と執念を感じます。
この1年間で、アンプ、フォノイコライザ、そしてD/AコンバータのD-1を開発してきて、相当大変だったのでは? と聞くと 「楽しかった」 と軽く答えてくれました。
なんだか、清々しいくらいの敗北感を感じました(笑
基板アートワークも加藤氏の設計
ここは他人には絶対に任せられない大切な部分。と、生基板を見せてもらいながら説明して頂きました。 量産の生基板を見せてもらったのは、さすがに私も初めてです。
銅箔厚は70umでずっしりと重い。 電源部も左右独立したnon-NFB回路で超極太配線です。
裏面は、このようにグランド一辺倒ではなく、1cmくらいの幅でいくつかに分割されています。
<< ES9038PROが2個 >>
マスタークロックは44.1k系と48k系とで2個積んでいて、DACのすぐ傍に配置してジッターの発生を最小にしているのがわかります。
EMI(不要輻射)を抑えるために、高周波信号ラインを極力短く、そして周辺GNDインピーダンスを下げることで対処してフェライトビーズやフィルタなど後付け対策部品なしでクリアしたとのことです。この辺りの徹底具合はさすがとしか言いようがありません。
ノイズの多い電源などにフェライトビーズを入れるとノイズ低減効果があって便利ですが、入れると音が暗く沈んでしまう弊害もありますからね。 私もフェライトなどを電源ラインに入れるのは音がモヤって好きじゃありませんし、信号ラインに挿入するなんてのは最悪と思っていて加藤氏と意見がガッチリ合いました。
<< ポストアンプ部のプリントパターン >>
配置もパターンも素晴らしく綺麗で、無駄に空いたスペースがなく回路面積を最小におさえているのがわかります。 それなのに、よく見ると信号ラインが2mmくらいと太い。
加藤氏はテトリス得意ですか? とは聞いてません(笑
これ、 盗みたくても真似できないレベルです。
長くなってしまいました。 つづきはこちら。
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