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2017年1月21日 (土)

TIM歪とは スルーレートとの関係に迫る

高速アンプの説明で登場するTIM歪とはどんなものなのでしょうか。 

TIM歪(Transient Intermodulation distortion)とは、フィンランドの物理学者でオーディオ研究家のマッティ・オタラ氏が提唱したもので、THDが低い低歪アンプでも過渡応答が良くないアンプは音が悪いということを示したかったようです。 半導体アンプ黎明期には、応答速度の遅いアンプが多かったのかもしれません。 

 

本日は、シミュレーションを使ってTIM歪の波形を見てみましょう。 

Tim1

用意した回路はこんな感じです。 アンプのゲインは10倍にしました。

V1とV2が信号源で、V2はとりあえず0Vにして止めてあります。 LT1013AはSR=0.4V/usという計測用アンプなどに使われる高精度OPAMPです。 

Tim2

入力と出力を比較しやすいように、入力信号を10倍アンプのゲインも10倍にした波形がこれです。 

青いラインが入力を10倍にした波形。 10kHz正弦波です。 

赤いラインが出力。 スルーレート制限で三角波のようになっています。  ここまではスルーレートの説明でよくみかけるものと思います。 

こういう波形のとき、音が歪んでいる、元の波形と違っているということは感覚的にわかりますが、どのように音が悪いのか説得する力が足りません。 

 

 

Tim3

次に、V2にも信号を入れて2つの信号をmixしてみます。 

信号は、V1は2V 10kHzで、V2は0.2V 100kHzです。 

Tim4

波形はこのようになります。 入力信号は2つの信号がmixされているのがわかりますが、出力は正弦波のときと殆どおなじ三角波です。 

つまり、スルーレート制限によって、

入力にあったはずの信号が完全に消えてしまっている!

のです。 

上記の例は2トーン信号でしたが、音楽に含まれる音は10や15トーンが時々刻々と折り重なっていきますから、その中の音が条件によって消えるというのは、音質以前の問題ともいえます。 

マッティ・オタラ氏は、多量のNFBによってTHDが低いアンプでも、瞬間的な信号(トランジェントシグナル)に追従できないアンプは音質が悪いという事を述べていたようです。 当時、NFBだけに頼った低ひずみアンプの歪率競争に一石を投じたのがマッティ・オタラ氏でした。

30dB以上にも及ぶ多量NFBが悪いと言っていたとの文献もあるようですが、結論づける部分ではアンプには高速応答性が必要であるということをうったえています。 この提案(?)はオーディオ業界に広く受け入れられて、その後のアンプは、スルーレートも重視されるようになっていきました。 

オタラ氏がスゴイのは、わざわざ日本にも訪れて、日本のオーディオメーカー各社を回って自説を説いていった事です。 (1977年頃のこと) 

 

では、シミュレーションの続きです。 

オペアンプをLT1007Aに交換しました。 このOPAMPはSR=11V/usというスペックです。 

Tim5

波形は

Tim6

ご覧のとおり。 入力x10倍波形と、アンプが10倍した波形がぴたりと一致していますね。  10kHz信号も100kHz信号もばっちし増幅できていて、TIM歪が発生していないことがわかります。 

THD(Total harmonic distortion)やIMD(Intermodulation distortion)と違って、TIMは数値化できない(xxx % などの表現ができない)のでカタログスペックなど測定項目には登場しません。 もちろんオペアンプのデータシートにも登場しません。

 

 

スルーレートと増幅帯域、そして出力パワーとの関係を以下に示します。 

計算式はこちらから持ってきました。 パワーと電圧・負荷抵抗の関係は P=V^2/R です。 視覚化するためにOpenOfficeで計算しています。 

Sr1 

Sr2 

グラフの見方ですが、例えば、増幅帯域100kHz(ハイレゾを想定)で、8Ω100Wのアンプに必要なSRは、グラフから約25V/usという事が分かります。 6Ω100Wなら電圧が小さくなるので、必要なSRは少し下がって約22V/us。

CDの帯域(20kHz)であれば、8Ω100Wで約5V/us必要ということが分かりますね。

スルーレート制限を受けない=TIM歪が発生しない訳ですから、CDは、現代のアンプからすると、とても楽なスペックです。 

LPレコードは帯域が50kHzまで伸びていたのと、レコード上のゴミや傷で発生するスクラッチノイズによる瞬間的な過渡応答が求められるので、アンプには高いスペックを要求されたかもしれません。 とはいっても、MC/MMカートリッジのコイルによる帯域は100kHzを超えているとは思えないので、現在のハイレゾと同等のスペックがあれば問題ないと思います。

ご興味がありましたら、LPレコードとハイレゾ音源の方形波応答比較もご覧下さい。

 

 

ちなみに、ハイレゾ音源といえども、100kHzで0dB(最大音量)の信号が録音されているのか?  というと、その可能性は、ほぼ無いと思われます。 

 

以前、DXD録音(Fs=352kHz)のハイレゾ音源のスペクトルを見てみましたが、55kHz -95dB程度の信号までは確認できました。 それ以上の帯域はADコンバータのΔΣ変調ノイズでした。 

もし、音源に100kHz 0dBの連続信号など含まれていたら、音は聴こえないのにアンプは普通に増幅できるからスピーカーに無駄な負荷がかかり、最悪の場合ツィータが焼けるということが起こるかもしれません。 

 

 

 

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コメント

ソニー CMT-SX7 ですね
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1507/24/news096.html
聞こえない高域の大音響出力でツイータが焼ける不具合を発表しています

通りすがりさん

ハイレゾ化プログラムに不具合があったという件ですね。
失われた高域を、プログラムで推測して作り出すというのは限度がありそうですね。

そうとう大きな信号が出力されていたのかも知れません。

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