アレキサンダー電流帰還アンプ ALX-03の回路定数FIXしました
なぜか時間がとりにくく、延びに延びた回路FIXがようやくできました。
今回は抵抗やトランジスタが燃えたりという事故を起こすことなく完成に至りました。
先日の回路定数から多少変更した部分がありますが、大幅には変わっていません。
さて、電流帰還アンプの特徴であるスルーレートはどのくらいなのか?
といいますと。
上の線が入力の方形波で、下がアンプの出力波形です。
スルーレートは、10%から90%までに立ち上がる時間と電圧の関係で、単位であるV/usは、1usec間にどれだけ電圧が変化できるのかという数値です。
この写真だと、17.8Vを1.29us かかっているので、13.8V/usです。
やけに遅いじゃないか?
と思いますよね。 じつは、電流帰還アンプのスルーレートは電圧帰還アンプの差動回路の電流制限によってスルーレート制限を受けるのと違って、CRの時定数とおなじく電圧に左右されるのです。 (出力電圧が大きくなっても立ち上がり時間が変わらない)
上の計測はアンプの電源に±15V電源を用いていて、出力電圧が少ないのです。
この例は、同じCR定数で入力パルスの高さを1V、2V、3Vと変えたときのシミュレーション波形です。 電圧が立ち上がるまでの時間が同じという点、スルーレートに相当する電圧の変化(角度)に注目してみると判りやすいと思います。
結局のところ、この時定数が発生する要因は、アンプの入力フィルタです。 入力フィルタを外したり、過大な入力を与えることで、本来のスルーレートがどこまで伸びているのかを垣間見ることができます。 ためしに、入力電圧を上げてみました。
この波形だと、17.8Vを106nsで立ち上がっていますね。 つまり、167.9V/usです。
電源電圧が高ければもっと大きな数値がえられると思います。
昔つくった、この回路と同じ構成の120Wアンプ(電源電圧±55V)で計測したときは、250V/usくらいの数値が得られました。
簡単に言ってしまうと、電流帰還アンプのスルーレートは、測定条件によって大きく左右されるので正確な数値を出すのが難しい。 と言うことです。 以前、使ったことがある市販している電流帰還OPAMPも、データシートには300V/usと書いてあるのに±60Vで使っていたとき150V/usにも満たない波形しか出てきませんでした。
差動アンプと電流帰還アンプのスルーレートの差は、数値の大小よりも、内部回路の電流制限により受けるスルーレートの限界があるのと、CR時定数(過渡応答)のように実質的に制限を受けない(まるでパッシブ素子の応答)という部分です。
まあ、どこまでスルーレートが必要なのかという事を考えると過剰な数値よりも、もっと大切な部分があると思います。 例えばアンプの入力フィルタは、軽い方がスペック的に周波数特性が伸びるのですが、あえて200kHzから300kHz程度で抑えるようにします。 それ以上伸ばすと、AMラジオなどの電波が入り込んでアンプ内で整流・変調されて可聴帯域へと影響を及ぼすと言われていますし、オーディオで音楽を聞くときに感動させる要素は100Hz以下の低音の量感や、ボーカル領域の質の方が遥かに影響力が大きいので無駄に高域を伸ばしても得るものはないからです。
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コメント
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「どこまでスルーレートが必要なのか」、大変興味深い考察です。勉強になりました。
「オーディオで音楽を聞くときに感動させる要素は100Hz以下の低音の量感や、ボーカル領域の質の方が遥かに影響力が大きいので無駄に高域を伸ばしても得るものはない」は、全く賛成です。低音の量感の出方を試すため、よくアルバムThe Hunterのバスドラを使いますが、ひどいアンプやスピーカーですと、パコッという音しか出ず、全然楽しめませんね。^^ 個人的見解ですが、「低音の量感」を出すのに最重要なのは、パスコンを含めた電源や回路構成と思ってます。また、「ボーカルの質」には、もちろん歪みや周波数特性も効くと思いますが、それよりもchセパレーションではないかと思ってます。chセパレーションが悪いと、センターで歌うボーカルの定位がボケて口が大きくなり、また、ボーカルが前に出てこず、やたらボリュームを大きくすることになってしまうと思います。
今回開発されたアレックス君は、自分に厳しいたかじんさんがGOを出されたわけですので、この辺がとても楽しみです。^^
投稿: kontiki | 2016年12月19日 (月) 21時22分
kontikiさん
おっしゃる通りと思います。 ある程度以上、アンプの特性があがると、電源の出来が音を左右するようになってくると感じます。
チャンネルセパレーションの数値に関しては、個人的には少々懐疑的な部分もありますね。
LPレコードでは、セパレーションは数値的に悪く、25dBくらい。 それでも定位はしっかり聴こえる。
また、スピーカーから出た音が左右分離して左右の耳に届いているわけでもない。
(右スピーカーから出た音は、左右の耳に殆どレベル差がなくとどくし、逆も同様)
チャンネルセパレーションは、連続波形(サイン波)で計測するので、ダイナミックな変化がある音楽を鳴らしているときのステレオ感とは、一致しない部分があるように感じます。
投稿: たかじん | 2016年12月23日 (金) 12時37分
kontikiさんのおっしゃったセパレーションはアンプ動作時におけるチャンネル間の影響度合いでは?
LPレコードの方が音が良いと感じる人がわりと多いのは音源セパレーションが良くないせいもあるのかな?と愚考しました。
投稿: onajinn | 2016年12月23日 (金) 22時41分
onajinn さん
なるほど、面白い考察です。 ソース自体のチャンセパとアンプのチャンセパ。
スピーカーから耳までのチャンセパは部屋やセッティングによって変わるので、スピーカーセッティングや吸音・反射板などが重要と。 いうことに結びつけられそうですね。
奥が深いです。
投稿: たかじん | 2016年12月24日 (土) 09時42分
たかじんさん、onajinnさん
レスいただき、ありがとうございます。
投稿、言葉足らずでした。chセパレーションとクロストーク、似ているようで、異なりますね。^^;
ボーカルなど、センターに定位して前に出てくることが期待される音が出てこないと、音楽が楽しめませんね。
その原因として考察したのが、「逆相」のクロストークです。たかじんさんの仰るように、レコードのchセパレーションが良くないのは構造上避けられませんが、「正相」でmixするので、ボーカルは良く定位します。onajinnさんの「音源セパレーション」という表現は、成る程という感じです。^^
アンプにおけるクロストークは、電源回路とGNDが最も影響すると思われますが、たかじんさんは、特にこの辺に気を使って基板設計されておられるので楽しみです。
たかじんさんの仰るように、スピーカセッティングや壁からの反射などは、「逆相」で影響する可能性が大です。オーティオは奥が深く、いい音の追求はやり出すとキリが無いですねえ。^^ オーディオに文字通り命を賭けた五味康祐さんの著作は、下記のHPで無料で読むことができますが、「すさまじい」の一言です。^^;
http://www.audiosharing.com/people/gomi/gomi.htm
投稿: kontiki | 2016年12月25日 (日) 09時48分
kontiki さん
チャンネルセパレーションとクロストークは、ほぼ同義ですね。
ステレオ(2ch)の機器場合はチャンネルセパレーションと呼びます。 EIAJでちゃんと定義されています。
対して、ミキサーのように沢山のチャンネルがある(R/Lではない)場合は、それぞれ、お互いの信号の漏れをクロストークと呼びます。 大抵の場合、隣り合ったチャンネル間の漏れの方が、遠いチャンネル間よりは多いですね。
どちらも位相は関係ありません。 どのような位相でも漏れは漏れです。 どこを通して伝わっても(電源でもボリュームでも配線でも、2回路入りOPAMPでも、GNDでも)漏れは漏れです。
オーディオの難しさは、セッティングやケーブルなどの影響を受ける部分ですが、そこにはオカルト的な、高額アクセサリもでてきてしまい、科学的に(電気的に)は意味不明でも音に一定の変化が現われる部分ですね。
買ったものを良いものだと思いたくなる気持ちの問題もありますが、買わずに、ショップで、あれこれ試した場合でも変化を認めざるを得ないって事もありますよね。
私の場合は、そういうものにお金を払ってもキリがないと思うので、最低限のケーブルやインシュレータなどで済ませています。
投稿: たかじん | 2016年12月25日 (日) 18時01分
たかじんさん
お初です、やんといいます。
ALX-03を部品表通りに作成したのですが
ひとつ困ったことがあります。
電源ON時はポップノイズ・レスなのですが、
電源OFF時に盛大なポップノイズ(?)が発生します。
これはこなんもんなのでしょうか?
それとも接続しているDACとの相性でしょうか?
なにかしら電源OFF時のポップノイズ(?)を減少させる
技がありましたらアドバイス戴けたらありがたいです。
投稿: やん | 2017年3月31日 (金) 10時04分
やんさん
https://nw-electric.way-nifty.com/blog/prt01.html
こちらの、VBアジャストをしてください。 電源電圧が落ち始めるとすぐにミュートするようにできます。
また、パワーアンプの電源が入ったまま、DAC電源を落として発生するポップノイズは、防ぎようがありません。 普通の音声信号と同様にアンプが増幅してスピーカーを駆動します。
投稿: たかじん | 2017年3月31日 (金) 22時47分
たかじんさん
VR調整でポップノイズ消えました。
ありがとうございます。
このVR調整は電源ONの時のためのものだと
思い込んでいました。。(^^;)
このアンプは癖もなくとても聴きやすいアンプだと感じました。
聴き疲れせず、どんどんボリュームを上げたくなるのが
難点と言えば難点でしょうか。
作って楽しく、聴いて満足のALX-03に感謝です。
投稿: やん | 2017年4月 1日 (土) 00時49分
やんさん
よかったです。 説明がわかりにくかったかもしれませんね。
おっしゃる通り、ALX-03は歪率が低いため、うるささを感じなく、気がつくとついつい音量を上げ気味になってしまいますね。
最終段のアイドリング電流の値によっても多少音質が変わります。
発熱量の関係でヒートシンクのサイズから最大電流が制限されてしまいますが、音質的に好みのポイントに調整するのもアリだと思います。
どうぞお楽しみ下さい。
投稿: たかじん | 2017年4月 1日 (土) 09時41分
たかじんさん、お世話になります。さっそくですが、ALX-03+PRT-01(プロテクター基盤)を製作してまして、どうグランド処理したらよいのか分からなくて・・・。
考えている配線順は、ボリューム(のケース)→ ALX-03基盤のGNDポイント(右基盤→左基盤)→ PRT-01のコンデンサー(C1、C2)の間のポイント → ケース接地 です。
ループができないよう一筆書きの様にって読んだことがあったので、PRT-01の先は(ケースに)繋がない方がよいでしょうか。素人質問で申し訳けないのですが、アドバイス頂けると幸いです。よろしくお願いします。
投稿: みせ | 2017年5月14日 (日) 18時44分
みせさん
PRT-01のC1,C2のセンターの1箇所をシャシーに落とすだけでOKです。(1点アース)
通常、ボリュームの金属軸と、抵抗体のGND(シグナルGND)とは接続されていないと思います。
よく分からなければ、シャシーとシグナルGNDをどこもつなげなくても大丈夫です。 木製ケースやバラック状態でもハムノイズがでたりしません。
投稿: たかじん | 2017年5月14日 (日) 18時55分
たかじんさん、ありがとうございます。早速、組み立ててみます。楽しみです。
投稿: みせ | 2017年5月14日 (日) 20時54分
みせさん
頑張ってみてください。 くれぐれも感電にはご注意下さい。
投稿: たかじん | 2017年5月14日 (日) 23時47分
たかじんさん
基板、入手しました、部品について助言してください。
2SC2837, 2SA1186についてhfe O,P,Y。部品リストではPですが
O,Yはどうですか、コンプリのセット品は高くなりますが、必要無いでしょうか、よろしくお願いします。
投稿: たに | 2019年2月28日 (木) 23時48分
たにさん
PNP、NPNで同じランクのものを使用すれば大丈夫です。3段ダーリントン構成なのでベース電流の供給能力が十分にあり、NFBも多量にかかっているという理由で、最終段のhfeの数値はわりと適当でも平気です。
そもそもPNPとNPNで電流増幅カーブが異なります。そしてテスターで(ベース電流が数マイクロアンペアの)hfeを計測しているような微小電流時のhfeを揃えても、実際に使っているときのhfeと一致しません。
どうしても揃えたい超マニア向けとしては、コレクタ電流が500mAとか1A時のhfeを計測して揃えると良いと思います。(温度によって電流増幅率が変化するので一致させるのは至難の業かもしれないです)
投稿: たかじん | 2019年3月 1日 (金) 13時22分
たかじん さん
迅速、適切な説明に感謝します。
2SC2837, 2SA1186は、Yランクを多めにネット部品店で注文しました(あきさんでP売切れの為、ネット徘徊)
MUSES03仕様でボチボチ、やりますので、何かあればお願いします。
投稿: たに | 2019年3月 1日 (金) 23時41分
たにさん
サンケンLAPTも秋月で「D」マークがついたので、今後入手しにくくなってくるかもしれませんね。
MUSES03は、01や02に比べてかなり進化したと思います。
投稿: たかじん | 2019年3月 2日 (土) 00時16分