プリント基板の銅箔の抵抗値 スクエア抵抗とは
プリント基板の銅箔にも抵抗値があるのは、理解している方は多いと思います。
よく耳にする「1mm幅のパターンに1A流せる」 というのは、熱的な条件からきたもので、それ以上流すとパターンが焼損してしまう、もしくは長持ちしないという限界値(ある程度の余裕はある)なのです。
故障した電化製品や、古いアンプを分解すると、少なからず色が焦げ茶色になっているパターンを目にしたことがあるのではないでしょうか。 あれは、長い時間、電流が流れて焦げてきているからです。
基板パターンに電流を沢山流すと発熱するのは、抵抗があるためです。
では実際にはどのくらいの抵抗値になるのでしょうか。 少しだけ計算してみましょう。
プリント基板に使われている導体は、銅です。 銅はとても抵抗率が低いことで多用されますね。 超えるのは銀くらいしかありません。
銅の電気抵抗率は、 1.68x10-8 [Ωm] (20℃) <= こちらからの引用です。
使いやすい単位にすると銅箔パターンの電気抵抗は下の式で表わされます。
R = 0.0168 x L / (W x T) [mΩ]
R:パターン抵抗[mΩ]
L:パターン長[mm]
W:パターン幅[mm]
T:銅箔厚[mm]
一般的な銅箔パターンの厚さは35umです。 4層基板など高密度プリント基板は18umが標準になります。
T=35um、L=5mm、W=5mm、で計算してみると、
R = 0.0168 x 5 / (5 x 0.035 ) = 0.48 [mΩ] => 約 0.5 [mΩ]
実は、式に当てはめて計算するより、もっと簡単に計算する方法があります。
■スクエア抵抗
厚さが変わらないと、導体の幅と長さが一緒(スクエア)であれば、抵抗値は変わりません。 この抵抗をスクエア抵抗ということがあります。 (Ω/□、Ω/sq.)
1mmスクエアでも、10mmスクエアでも一緒です。 35um銅箔なら0.5 mΩ。 18um銅箔なら1.0 mΩ。
これを、頭にいれて、幅1mm、長さ50mmを計算すると、
比率は1:50なので、 50 x 0.5 mΩ = 25 mΩ となります。
幅2mm、長さ20mm なら、2:20 => 1:10 ですから
10 x 0.5 mΩ = 5.0 mΩ です。
意外と簡単ですね。
それと、数mΩ程度の抵抗は、プリントパターンですぐに発生することがわかると思います。 そのため、大きな電流をながすパワーアンプのパターンは、非常に重要です。
特に、フィードバックをどのポイントから戻すかという点においては、回路ノードとして同一でも、プリントパターンによって特性が変わってきます。 具体的にはダンピングファクターや歪率に影響がでます。
■ダンピングファクタ
過去の高級アンプでは、スピーカーターミナル部につけた出力リレーの直前からフィードバックを戻して、基板パターンやアンプ内配線の抵抗の影響を可能な限り減らすといった小技をつかっているものがありました。
さらに進んで、最終的に、スピーカー側の入力端子までフィードバックループを伸ばしていた「シグマドライブ(TRIO/KENWOOD)」や「クリーンドライブ(オーレックス/東芝)」という技術もありました。
そこまで必要だったのか? と冷静に考えると思ってしまうのですが、数値上ではダンピングファクターにダイレクトに響き、DF=1000という、とてつもない数字を出すことができました。 通常アンプと比較して1桁も数字が違うと、さすがに音にも違いを感じ取れたのではないでしょうか。
ダンピングファクター(DF) = 8Ω / 出力抵抗 です。
つまり、DFが100というアンプは、80 mΩ という低い出力抵抗値である。 といえます。 スピーカーターミナルや、内部配線の抵抗、コネクタの接触抵抗、リレーの接点抵抗をすべて含んだ値として、十分に低いです。 (リレーひとつで10~30mΩある)
一般的にDFは、100以上あれば、それ以上の効果は殆どない。 と言われています。 その根拠は知らないのですが、2wayや3wayのスピーカーシステムは、内部にネットワーク回路があって、ボイスコイルまでダイレクトに制動が効く訳ではないからだと思います。
実際、スピーカーまでの配線に、1Ωくらいの抵抗を直列に入れて、ダンピングファクターを 6~8 くらいまで意図的に落としても、制動がなく「ぼよんぼよん」の音になるかというと、全然、そんなことはありません。 スピーカーによるかもしれないですが、いくぶん優しくなって、ダイレクト感が薄れる程度です。
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あれ? これって、1点アース(スターグラウンド)? 当然、中央のスルーホールからシャーシにグラウンドを落とすのでしょうね。
トラ技9月号に掲載されたたかじんさん設計の基板パターンと随分違います?? 中央に細く伸びているのは信号用グランドでしょうか。記事では、電源グラウンドと信号グラウンドを分離することを推奨されていましたが、その後の検討で、スターグラウンドの方がベターと判断されたのでしょうか? 非常に興味深い所です。^^
投稿: kontiki | 2015年11月17日 (火) 21時13分
kontiki さん
この写真は、プロテクト基板の方です。 ±電源の中心点にGNDを集中させています。 電源GNDと信号GNDはこの点で接続されます。
お察しの通り、このポイントをシャーシへ落としても良いですし、シャーシに落とさずフローティングでも特に問題は起こりません。
ラジカセや、昔の木製ケースのオーディオ製品など、金属シャシーがなくても普通に使えるのと同じです。
投稿: たかじん | 2015年11月17日 (火) 23時03分
あ、すみません、早とちりしました。
そうしますと、これまでのリレーを使ったプロテクト回路ではなさそうですね。興味津々です。^^
たかじんさんが以前紹介されていたように、トランスの二つの巻き線をそれぞれ整流・平滑化し、最後にデカップリングCの所で合流させると、ハムが極めて有効に抑えられますね。シャーシへのアースは、初段のアースポイントで落とすのが、これまた大変有効です。HPAと違って、パワーアンプは利得が大きいので、ハム対策が大変なこと、身を持って学びました。^^;
投稿: kontiki | 2015年11月19日 (木) 22時39分
kontiki さん
スピーカー用リレーは、個人だと入手しにくいですから、仕方なくといった所です。 ですが、接点不良が原理的に起きない、接点抵抗が低いなどのメリットがありますね。
差動2段アンプの場合、PSRRが高いのでハム対策はこれといって必要ありません。
一般的には、電源の根元(一番大きなデカップリングコンデンサ)の近くをシャシーへ落とすのが良いと思います。 ボリュームノブを触ると誘導ハムを拾うようなアンプ場合は、ボリュームの近くでシャシーに落とすとハムが減りますね。
投稿: たかじん | 2015年11月20日 (金) 23時39分