NJM2863 vs TPS7A4700 低ノイズ対決
巷で噂の超低ノイズレギュレータ TIのTPS7A4700と新日本無線のローノイズLDO であるNJM2863/2864を比較してみましょう。
データシートの概要(特徴)では、
TPS7A4700 : ノイズ 4.17uVRMS 電源リップル除去比 82dB(100Hz)
NJM2863/2864 : ノイズ 19uVrms 電源リップル除去比 75dB(1kHz)
と、溝をあけられている感がありますね。
ですが、
電源リップル除去のカーブデータを比較してみると、
少し見えにくいですが、こんな感じです。 青枠の方がNJRC。 バックグランド側はTIです。
1k-10kHz間では、1~3dB程度の違いしかありません。 1kHz以下では徐々に離れていきますが、それでも10dBほどの違い。
実は、測定条件が異なっています。 TIのデータはCoutに50uFという大きな容量を付けていますが、NJRCは、1uFのセラミックコンデンサのみです。 低域の差は、この出力コンデンサの容量の差が出ているのかもしれません。 100kHzを超える部分に関しては、NJRCは公表していないので不明ですが、やや不利な気配を感じ取れます。
オーディオ用として使う場合は、可聴帯域である20kHzまでの特性が重要と思われるので、このグラフを見る限り、特段に大きな差があるとは言い切れません。
よく見ると、スペックの条件も異なっていますね。 電源リップル除去の周波数は、TIが100HzでNJRCは1kHz。 両方とも1kHzで比較すると差は1dB程度と、殆ど測定誤差のような違いです。
どうやらデータシートの概要で数値をよく見せる売り方のうまさでは、TIの方に軍配があがるようです。
この2つのLDOの差は、
1.出力電流 TPS7A4700が 1A NJM2863/2864は100mA
2.出力電圧 TPS7A4700が PIN設定で可変 NJM2863/2864は固定
ということです。
用途次第ですね。 電流が少なくて済むのであれば、POLレイアウト的にはNJM2863の方がデバイス近傍に配置しやすいというメリットもあります。
■NJM2863の実力は
NJM2863を使っているIrBerryDACのアナログ電源側でノイズレベルを実測してみました。 RaspberryPiを接続した状態で、5V入力は秋月電子のSWアダプターです。
7uVrms以下(帯域80kHz)ですね。
IrBerryDACではLDOの入出力共に低ESRのコンデンサを使っているので、実使用上においてデータシートのスペックを超えています。
新日本無線は、もう少しデータシートを工夫して、良いスペックを 「概要」部 に載せるせるようにした方がよいのではないでしょうか。 NJM2863は素晴らしい実力を持っています。
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わあっこれはVP-7722Aですか?
投稿: hen | 2014年5月 5日 (月) 13時54分
たかじんさん、こんにちは
結構ローノイズなんですね。実験した数字があると使いたくなってきます。
もしかしてリファレンスに外付けでコンデンサ付けるタイプ使えば
だいたいローノイズなんじゃないかと勝手に思っていて、
最近は723とか単体で使うとどうなんだろうとか考えてます。
投稿: エリー | 2014年5月 5日 (月) 16時16分
hen さん
喰いつくところ、そこっすか? (笑
エリーさん
>もしかしてリファレンスに外付けでコンデンサ付けるタイプ使えば
>だいたいローノイズなんじゃないかと勝手に思っていて、
たぶん、そうだと思います。 オペアンプを使ってレギュレータを作っても一緒ですね。
後は使いやすさだけの問題だと思います。
1Aなど大きな電流を扱えて、ちゃんと保護も効いて安全という意味では
TPS7A4700はなかなか使いやすく優れたデバイスと思います。
ハンダ付けは、ちょっと大変でしょうけど。。。
投稿: たかじん | 2014年5月 5日 (月) 16時35分
>>もしかしてリファレンスに外付けでコンデンサ付けるタイプ使えば
>>だいたいローノイズなんじゃないかと勝手に思っていて、
>たぶん、そうだと思います。 オペアンプを使ってレギュレータを作っても一緒ですね。
アンプならループゲインが充分あれば出力雑音は誤差増幅器初段の雑音とβ回路の抵抗の熱雑音で決まることになりますが、
たかじんさんの実験でNJM2863で出力ノードのコンデンサ容量を増やすとノイズが減るという結果を見せていただいて
MHzまで負帰還をかけられるアンプとはちがうことを思い知りました…
投稿: hen | 2014年5月 6日 (火) 16時12分
henさん
リファレンス電圧を生成している部分をどれだけ低ノイズにできるか、
という部分と、NFBによりリップルを抑制するアンプ部、そして、出力側に
つけたコンデンサの容量と性能でしょうね。
おっしゃるようにアンプ自体のNFも大事だと思います。
1kHzより上の周波数ではNFB量が減ってきますので、100kHzからMHz帯の
ノイズを低減しているのは、レギュレータではなく、デバイスメーカが用意
したリファレンス基板上の「コンデンサ」の仕事なんじゃないかと思います。
TIのエバレーション基板では10uFのセラコンを5パラで実装しているようです。
基板パターンもとても広くとっています。
http://www.tij.co.jp/jp/lit/ug/slvu741a/slvu741a.pdf
POL配置にしても、高周波はデカップリングの仕事で、負荷変動に対する
応答性をよくするという部分で、デバイスの至近距離にレギュレータを
配置して遅れの少ないフィードバックをかけています。
また、配線抵抗が少ない分、電圧降下もへりますから、負荷デバイスの電源pin
での電圧精度が上がることを意味します。
MHz帯までアンプだけでノイズを低減しようとするのは、難しいかもしれませんね。
高速なフィードバックのためにC負荷を全て削除(デカップリングなし)して直ドライブ?
高域までインピーダンスを下げるのが難しいような気がします。
投稿: たかじん | 2014年5月 6日 (火) 16時59分