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2013年10月20日 (日)

SPDIFデータ伝送の仕組みと落とし穴

SONY CDP-552ES と DAS-702ES この2台が世界初のS/PDIF 搭載機器です。
CDプレーヤー内のDACを使わず、デジタルでデータを転送し、DAC専用の機器がアナログ変換するという画期的な商品でした。 CDプレーヤーより大きな筐体を持つ単体DACは、その物量投資の凄まじさから、いかにも音質が良さそうに思えました。


Cdp552esd_das702es_


S/PDIFとは

SONY/PHILIPS Digital Interfaceで、名前の通りソニーとフィリップスが決めたインターフェースです。 その後、IECにより国際標準フォーマットとなり、幾度となく拡張をしてきました。

当時は、デジタルで接続できるオーディオ機器がCDとDACしかなかったため、単に、デジタル接続、光接続(TOSリンク)、コアキシャル(Coaxial)などと呼んでいました。

1本のRCAシールドケーブルで2chのデジタルオーディオデータを転送することができます。 光ケーブルを使ったTOSリンクも転送しているデータは一緒です。

インターフェースフォーマットの拡張は、コピーマネージメント(SCMS)や、リニアPCM以外(例えばAC-3やDTSなど)のデータを転送できるようになった点です。 1本の配線で2ch転送が基本ですが、AC-3やDTSでは5.1chや7.1chデータも転送できます。 これは圧縮されたままのデータを転送しています。

ここでは、2chのリニアPCMデータについてだけ詳しく掘り下げようと思います。
 

業務用のAES/EBU

業務用のAES3という規格もあります。 SPDIFの元になった規格で、特に信号の中身は殆ど一緒と思っても良いです。 実際DAI(デジタルオーディオインターフェース)ICは、SPDIF/ASE3両対応のものが殆どです。

 Aesebu

SPDIF と AES/EBUの違いは、端子形状や信号電圧・インピーダンスが主です。

 SPDIF  75Ω RCA同軸/光ファイバー  0.5Vpp  10mまで SCMS 
 AES3  110Ω XLR-3pin  2-7Vpp  100mまで  コピーコントロールなし

といった所です。 パソコンのSPDIF端子はSCMSが無効なものも多いようです。 コピーし放題というグレーなものですが、CDも簡単にコピーできる時代なので、もうSCMSの役目は終わっていますね。

サンプリング周波数は、22.05k、24k、32k、44.1k、48k、88.2k、96k、176.4k、192k、768kがあります。 どこまでサポートするかはDAI-ICの仕様によります。 ビット数は、最大で24bitです。 (32bitは転送できません)
TOSリンクは、PDの応答速度の制約でfs96kHzどまりの事が多いです。

  
 

データ伝送の仕組み

Dai_block

あまり、細かいことを追っても仕方がないので、仕組みに関して重要な部分だけを抜粋します。

このSPDIFは送信側がマスター受信側がスレーブになっていまして、一方通行のデータ伝送です。 

信号は1本の配線なので、同期信号もデータも一緒に混じっています。
具体的にはプリアンブル(Preamble)という同期信号(シンク用データ)を一定間隔で送り、受信側でそれを捕まえてPLLを使ってマスターと同じクロックを生成しています。

上のブロック図はDIR9001というDAIレシーバICのものですが、プリアンプルデコーダというものがPLLに繋がっているのが分かります。

実はこのPLLが厄介なのです。 受信側のPLLはマスターに追従する必要があります。 ある程度応答を速くしておかなければ、PLLロックするまでに時間がかかり曲の頭切れが発生してしまいます。 しかし、高速応答のPLLは得てしてジッターが多い。 ここにジレンマがあります。 近年では低ジッターを謳うDAIが出ていますが、水晶と比べると確実に劣ってしまいます。 



PLLが悪さ?

もう少し、詳しくいいますと、このプリアンブルは1サンプル周期に2回(L/R)の割合で出てきます。 すなわち、48kHzサンプリングでは96kHzです。 DACで使うマスタークロックを256fsとすると、128倍の周波数へと逓倍しなければならず、どうしてもジッターが多くなってしまいます。 PLLによる逓倍の比率が大きければ大きいほどジッターが増えるからです。

 

 これは、原理上避けられない事実です。

勘違いしないで欲しいのは「PLL=ジッタ悪い」ではありません。 逓倍率もからんできて、このような事態になっているのです。 PLLだって、逓倍率が4倍以下と低いものだったら、大げさに悪化することはありません。

 
 
Spdif_signal_2

実際のSPDIF波形。 パルス幅でトリガーを掛けるとプリアンブルはこのように見える。
 


簡単にまとめると

 SPDIFは、ジッター発生の要因になっている。

 

業務用インターフェースのAES/EBUもこの件に関しては全く同じで、ジッターが減る仕組みは入っていません。 配線長が10m以上の場合はXLR端子のAES/EBUにしなければならないというだけで、「業務用=音質が優れる仕組み」 は無いのです。

Das_r10

そんな訳で、DAC側をクロックのマスターにしてしまおうというのが、ツインリンクを採用したDACです。 

 

これは、D/A変換する側にマスタークロックを置いてジッターがない状態でアナログ変換するために、CD側へクロック信号を送る手段を追加したものです。 ツインリンクは2本の光ファイバーがあり、1本はCD->DAC(SPDIF)で、もう1本はDAC->CD(マスタークロック)となっています。 アキュフェーズのHS-LINKもLVDS(低電圧の差動信号)を使っていますがやっていることは殆ど同じです。

こちらは、DAC側をマスターにできるので、確実に低ジッター再生が可能です。 

SPDIFを作ったソニーですら、こういった仕組みでデータ転送によるジッターの影響を無くすインターフェースを独自に作っていたのです。 

 

SPDIFは悪?

データをコピーするという点においては、SPDIFはビットパーフェクトを達成するので、特に欠点はありません。 DACは、このSPDIF信号からマスタークロックを生成しながら再生するので音質面で不利になってしまうのです。

一部ではバッファーにデータを溜め込んだあと、ローカルの水晶によりジッターが無い状態でデータを読み出してDAコンバートするという方法(メモリバッファ式レシーバ)があり、完璧な対策案です。

また、ジッタークリーナー(PLLの一種)を用いてSPDIFレシーバーの出力からジッターを低減するなど工夫していることがあります。 1段目は高速追従PLLで、2段目がジッター低減PLLという2段PLLになり、こちらも有効な手段です。
そうはいってもローカル水晶クロックまでジッターを低減できるわけではありません。 ジッタークリーナーといえども水晶のジッターを下回るほど低ジッターにはならないからです。

 

ちなみに、SPDIF関係のインターフェースの詳細はこのあたりを読むと少し理解が進むかもしれません。  技術的な内容ではなく、背景や歴史、展開などが書いてあります。





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DAコンバータ」カテゴリの記事

コメント

なるほど・・・S/PDIFもジッター発生の要因になっている、と。

最近ではHDMIもあるんですよね。
BDプレイヤーで、HDMIからデジタル音声信号を得ようとするとHDMIデジタル入力可能なAVアンプを使うか、

HDMIスプリッターで同軸出力を得るか、

そんなところなんでしょうけれど、スプリッターを使う場合、HDCP認証が必要なので、
スプリッターの先にTVなど繋いでおかないと同軸出力も出てこないようです。

伝送方式の次にはこのような著作権保護機構が足かせになってくるのでこれも困ったものですね。

ASRCは不要と思いましたが、ベリンガーSRC2496など身近かな機材を使うことで(あくまで個人利用目的のもとで)デジタルデータをコピーフリーにするという使い方もあるのかな、と思いました。

mr_osaminさん

記事中でちょっとだけ触れましたがHDMIに採用されているデジタル音声はSPDIFです。 
特徴も欠点もそのまま引き継いでいます。

デジタル信号のコピーに関しては、公にしにくいですが、 昔、秋月電子でSCMSを
無視してコピーできるキットが売っていました。  CDからDATに一回コピーしたあと、
次に孫コピーしようとすると、コピーできないという仕組みになっているのですが、
それをキャンセルしてコピーできるようにするという機器でした。
もはや、DATやMDは存在していないも同然なので意味がないですよね。
 
HDCPは、DVDなどのコピー問題もあってより厳しくなりましたね。 

>記事中でちょっとだけ触れましたがHDMIに採用されているデジタル音声はSPDIFです。 
特徴も欠点もそのまま引き継いでいます。

話を少しコネクタ形状のほうに振ってしまったんですが、

メーカーによってデジタル出力についてはいろいろな考え方があって
http://misiasongs.blog100.fc2.com/blog-entry-41.html
使い勝手の面で困るときがありますね。

ウチのBDプレイヤーで、SACDをプレイしたときに同軸、光どちらもデジタル出力ができなくて調べたら仕様でしたw
DSDダイレクトでなく、PCM変換だから出力してくれてもいいのに・・・

mr_osamin さん

いますね~ CDをPCソフトウェアを使ってアップサンプリングするひと。
H/Wでアップサンプリングするのと、フィルタ係数が違うので音が違ってくるのですが、
I/Fの関係で4倍どまり。 音が変わるのも楽しみのひとつですよね。

SACD再生をPCMに変換するのは、メリットを半減しているような気分です。 
ただ、再生できないよりは遥かにいいですね。

DAC-IC内部でDSDを一旦PCMに変換するタイプのものもあります。 そういう場合は
外部にPCMデータを出せないですね。  DSPなどでDSD-PCM変換しているの
でしたら、SPDIFに出すのは簡単だと思うのですが、仕様といわれれば、そこでおしまいです。

たかじんさん

>SACD再生をPCMに変換するのは、メリットを半減しているような気分です。 

私はデジイコを挟むために考えた流れなので、本来ならばDSD->アナログダイレクトで聴くのが良いとは思います。

俯瞰してみると、

・DSD->アナログ変換
これはSACDの良さをそのまま使う方法

・DSD->PCM変換
デジイコを使って自分好みの音の変化を楽しむ方法

と考えるとどちらも「アリ」じゃないかと思いました。

mr_osaminさん

>と考えるとどちらも「アリ」じゃないかと思いました。
おっしゃる通りですね。 SACDの良さは、DSDフォーマットだけではなく、SACD化
するにあたって、使用する機材やアーティスト、レコーディングエンジニア達の
心構えが、全くちがうと思うのです。 
そうして出来上がった音楽は、やはり普通のCDとは一線を画すものでしょう。

そういった志は、再生時にPCMに変換したところで台無しになる訳ではないと
思いました。 96kHzあたりに変換するのでしたら、殆ど問題ないかもしれません。

はじめまして。
普段pc-audioでusb-dacを使用しております。
pcとdacの間にmc-3+というより精密なクロックを持ったddcを追加してみようと考えております。しかし、リクロックした信号をアナログにコンバートするのはdacなわけで、正直効果があるのか疑問です。
同軸でつなげるつもりなのですが、特にコンバートする際に結局dac内のクロックを使ってしまったら本当に意味はなくなってしまいますが、そこのとこはどうなっているのでしょうか?同軸でつなげた場合クロックはどっちのものを使うことになるのでしょうか?
ご存知でしたらよろしくお願いします。

まるもりさん

USB Audioではdac側のクロックを使うものがあります。

https://www.itf.co.jp/tech/usb-audio/usb-audio-transfer-type

アシンクロナス転送というものです。ここ10年の新しいUSB-DACなら大抵対応していると思います。

SPDIFは光・同軸に関係なく、送りだし側に同期させるためのPLLがDACのマスタークロックになります。

PC再生で、MUTECのMC3+USBを使用しています。
本機を経由した後はSPDIFかAES/EBUでDACへ入力するので、リクロックの効果は絶大です。
ちなみに、私の機材の場合、ケーブルのグレード等によらず、SPDIFよりAES/EBUで繋いだ方が圧倒的に音が良いです。また、USBケーブルによる音の違いも明確に出ます。リクロックされる以前のUSBケーブルの質には無頓着で良いのかとも思いましたが、違いました。ジッター以外にもデジタルオーディオの音質に影響を与える要因は、色々あるようです。
乱入しまして失礼しました。

ナッツチョコさん

なるほど。このようなクロックジェネレータがあるのですね。

ロック範囲と書いてあるので、PLL系のクロックジェネレータですかね。
メモリバッファ系のリクロック回路とか、高クロックによるD-Flipflop リクロックとは根本的に異なり、ちゃんと送信元に追従するということで、汎用性が高いものと思います。

サンプリング周波数が切り替わった時のアンロック時間など、どのくらいでしょうか?

Silicon LabsのPLL-ICを使った回路では、入力のFsが192kHzから44.1kなどに切り替わったとき、数秒間(5~10秒間)ロックせず、曲の頭切れが激しく、ときには爆音でノイズが発生すると聞いたことがあります。

ちなみに、SPDIFは送り出し側に同期する性質上、送り出し側のクロックジッターが少なければ、受け側のPLLが作り出すクロックもジッターが減ります。そういう意味では、高精度なクロックジェネレータを入れることで、他の機器からのSPDIF入力時より良くなる可能性は秘めていますね。

USB入力とSPDIF入力の両方がある機器の場合、アシンクロナスでUSB接続できるなら、そのDAC内部の発振器の品質に依存します。しっかりした発振器を積んだDACなら、PLLがマスタークロックになるSPDIF接続に負けることはないと思われます。

たかじん様
ご返信ありがとうございます。
まるもりさんが同機の導入をご検討されているとの事でしたので、思わずコメントしてしまいました。
MC-3+USBは、クロックジェネレーターでありながら、リクロック機能のあるDDCでもあるというユニークな機材です。より高精度な外部クロックでのリクロックも可能です。
確かにDACのクロックが本機内蔵クロック及び本機に受け入れた外部クロックより優秀であれば本機は必要ないということになると思います。ただ、「餅は餅屋」か、本機内蔵クロックでのリクロック効果は相当なものと感じます。
前の曲と周波数の違う曲を再生すると、ロックするまで1、2秒かかり頭切れします。私は、PCの再生ソフトの設定で最初のみ3秒間の無音再生を入れる事で対処していてまったく気になりません。
私がどうにも気になるのは、SPDIF(同軸または光)とAES/EBU(キャノンケーブル)との音の違いです。
AES/EBUの方が明らかに音像が小さく明確に定位し音場感の据わりが良くナチュラルな音が出ます。
DACを替えても同様なので機材の特性とも思えません。
伝送方式の特性?ケーブルの特性?
わからないのです。
この違いに気がついてからSPDIFに対する不信感が拭えません。
この違いの原因は、何でしょうか?

ナッツチョコさん

ちょっと勘違いしてしまいました。
MC-3+ と
MC-3+USB という別の製品があるのですね。

この二つを比較すると、MC-3+USBの方がよさそうです。 上に書いたように、アシンクロナス対応のUSB Audio機は、PCをマスターにせず、USB Audio機器のクロックをマスターにすることが出来るからです。

そこに、お金をかけたクロックジェネレータを使えるメリットは非常に大きいと思います。


同軸とバランス転送の違いは何でしょうね。
同軸や光コネクタ用の端子のために、内部でロジックICが1段噛んでいるとか、そういう細かい影響が出るのかもしれませんし、ケーブルの構造上の違いという可能性もありますね。

はじめまして。

DATをWAVデータとしてパソコンにアーカイブする方法を探る中、こちらに寄らせて頂きました。

PioneerのDAT、D-07のデジタルout
(SPDIF/Coaxial )
  ↓
オーディオインターフェイス、デジタル
in(SPDIF/Coaxial )
  ↓
Macbook pro

只オーディオインターフェイスがUSB1.0の年代物(Roland UA-5)なのです。
オーディオインターフェイスのクオリティがデジタルコピーの質に大きく影響するということはあるのでしょうか?

もしそうなら最近のオーディオインターフェイスを捜さねばと思うのですが。
ご意見、賜れれば幸いです。

まるなさん
はじめまして。記事にありますとおり、S/PDIFでのデータコピーはビットパーフェクトで行われるので問題無いです。

>Ising 様

早速のご返信、ありがとうございます☆

なるほど、
オーディオインターフェイスで出る音質の差はA/D, D/A部分であって、デジタルコピーに関してはオーディオインターフェイスのクオリティは影響無し〜なんですね。
(^ ^)

安心しました☆
突然の質問にお応え下さって感謝します。

まるなさん

Ising さんも書いていらっしゃるようにSPDIFによるデータコピーであればビットパーフェクトが保たれるので大丈夫です。

PC用のDDSドライブで直接WAVデータを吸い出すという裏技も昔、あったようですが、さすがに今となっては手に入らないと思います。
http://efu.jp.net/soft/wd/wd.html

古いDATテープは再生時にエラーが発生する可能性があるのですが、そのエラーは回避できません。 私は一度、データ吸い上げ中にテープが切れるという事故が起きました(笑
自分たちの演奏を録音したマスターテープなので、ちょっとショックでした。テープが傷む前にPCに吸い出してデーター化しておくべきでした。

たかじん さん

ありがとうございます。

私も昔「DDSドライブでWAVデータを吸い出し」はテープ倍速で処理出来る〜と聞いて、良いなあと思ったことありました。。。
^^;

DATデッキのコンディション以外にテープのコンディションでもトラブルが起きることがあるとは。。
(^_^;)

上手く行くよう祈ります☆

まるなさん

アナログのテープは傷む(のびる)と、音程がふらつくとか、転写してエコーが聞こえるとかですが、DATの場合のエラーは、ジャビジャビジャビってノイズが出たりします。

CDの8-14変換でのエラー訂正よりさらに強力なエラー訂正能力があると、当時謳われていたはずなのですけどね。

パイオニアD-07と言えば、2倍速のハイサンプリング録音ですね。いいですね。

たかじん さん
 
かつて愛用してたソニーTCD-D7やTascam DA-P1はとっくに壊れてしまってたので
残ってる大量のDATのデジタルアーカイブ作成の為、数年前このパイオニアD-07を手に入れました。

そう言えばこのパイオニア自慢のハイサンプリング録音体験したことありませんでした(!)
最近メンテナンスしてもらったばかりのD-07、せっかくなので正常に作動するうちに一度ハイサンプリングの録音をしてみようかな。。

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