アンプのクラス分け
A級、AB級、B級、C級アンプとありますが、出力段のバイアスの違い、アイドリング電流の違いで呼び名がことなります。 その他にもD級やG級、H級、T級など違った動作のもののありますが、リニア動作とは違った動作や仕組みなので、今回は取り上げません。
出力回路が同一で、A級、AB級、B級、C級アンプと分けることができます。
SEPP(シングル・エンド・プッシュ・プル)回路で説明します。 A級だけはプッシュプル回路ではなくても歪まずに出力することができますが、今回は違いを見るために、同一の回路とさせて頂きました。
さて、回路構成ですが、こんな感じです。
1段のプッシュプル・エミッタフォロア回路でバイアス電圧が可変できるようにしてあります。
バイアス電圧が変わるとエミッタフォロア段のvbe電圧を差し引いた、エミッタ抵抗の両端にかかる電圧が変わります。 エミッタ抵抗にかかる電圧が変わるということは、つまりアイドリング電流をコントロールできるという仕組みなのです。
まずは、C級アンプから見てみましょう。
赤い線は、NPN側のエミッタ抵抗の電流波形で、緑の線はPNP側のエミッタ抵抗の電流波形です。
波形はご覧のように、ゼロクロス時に上下どちらもカットオフしている瞬間があります。
この瞬間は出力波形も歪んでいます。
クロスオーバー歪が大量に発生しますが、電力は、最低限です。出力が必要になった時に、必要な分だけ出力しています。 アイドリングがゼロなためです。
さすがにこれではオーディオ用としては実用になりません。
次に、B級です。
ほぼアイドリングがゼロですが、ぎりぎり波形が保たれています。
まあ程度問題ですが、もう僅かにバイアス電圧が低いとクロスオーバー歪がでてきます。
続いてAB級です。
ある程度アイドリング電流を流していますが、振幅が大きくなると電流がカットオフします。
ゼロクロスする瞬間はNPN側もPNP側もどちらも電流が流れているのが分かります。
AB級は、A級にちかいものとB級にちかいものがあり、設定次第では十分滑らかに上下が繋がります。
こちらは、ぎりぎりカットオフしないA級アンプです。
電流が0mAすれすれまで落ち込んでいますが、カットオフはしていませんからA級といえます。
余裕のあるA級はこのようになります。
こちらには、出力電流も青色で追加しています。
こういう波形をみるとわかるのですが、A~AB級では、名称でスッパリと分け切れない
部分というのがあります。 結局は設計者の設定次第でアイドリング電流が決定されています。
最大出力時にもカットオフしないアンプをA級アンプと呼ぶのですが、その余裕度は
アンプによって差がある可能性があります。
純A級(ピュア クラスA)という呼び名は、擬似A級が出てきたために本来の意味のA級を
ちゃんと見分けるために作られた言葉です。 「A級」と「純A級」に違いはありません。
ということで、
A級、AB級、B級、C級アンプは回路的には同じものです。
アイドリング電流が異なるだけのもので、特別な仕掛けがある訳ではありません。
※) A級パワーアンプのアイドリング電流は20Wクラスでも1Aとか1.5Aという大量のアイドリング電流を流しています。 50Wクラスともなると、4A近い電流が必要ですので大変な熱が発生いたします。
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楽しく読ませて頂いてます。
自分は自作派として一貫してA級アンプに拘って作っています。でも最終的には聞いた結果でアイドルを決めます、確かに効率以外ではA級が勝っている事は重々判っていながらも、完全A級の音がベストか?と聞かれたら、自分の答えはNO!です。
不安定なエミフォロが嫌いで、終段もコレクターフォロワー(エミッタ接地)のプッシュプルを一貫して使っています。2段直結アンプを上下組み合わせた形になるので、この段だけでゲインが発生しますからマイナーループが掛けられて、結果的に無帰還(オーバーオールNF無しという意味での)にしています。
終段にゲインが有ると言う事は、前段のゲインは小さく出来、なおかつ、電源電圧も2段構成とする必要もなくなります。
エミッタフォロワー、100%帰還の源がエミッタの負荷と言う事は、裏返せばL成分C成分の時の帰還時は?なんて事を考えていたら怖くて使えません。こんな話を社内でしてもあまり感心を持ってもらえない事は少し寂しいです。
先だってはH級200Wアンプ(純A級200Wアンプ用の15V電源をB級アンプでスイングする)とすることで発熱は極端に抑えられました。擬似A級と言えばそうかも?でも終段は完全A級だからA級?過去のアンプを押さえて、メインシステムに昇格しました。
自作を楽しむ方々は皆、自己満足優先?と勝手に思ってますが、結果的にはそれが至福の時なんですよね。
ダラダラと長くなってすみません、この先も楽しませて頂きます。
投稿: の5 | 2013年4月 4日 (木) 21時58分
の5さん こんばんは。
そうですね。 A級は電流を喰いますから、電源が強力じゃないと、むしろ電源負荷が増えて、
音質的には悪化することも十分考えられます。
何事もほどほどにというのが良いのかもしれません。
エミフォロは発振原理がはっきりしてますから、ツボをおさえることで安定して使えます。
世の中の99%以上ののアナログアンプがエミフォロ使っていて問題が起きていないことからも問題点
の少なさはインバーテッドより勝っているのではないでしょうか。
ただ、一番多くが使っている方式が音質的にも一番ということは無いと思います。 実際に作って
音質を磨き上げて自分の好みにできるというのは自作ならではですね。
昔の高級オーディオの宣伝文句に、原音再生とか良く使われていましたが、実際にはかならず音にキャラクタ
が付いてくるものだと思っています。
つまり、いかに自分の好みのキャラクタにするかってところに自作の価値があるのではないでしょうか。
自己すら満足できないアンプだったら、聴いても楽しくないですよね。
投稿: たかじん | 2013年4月 4日 (木) 23時16分