A級アンプの利点・欠点
ちゃんとデメリットも把握しておかないといけません。
音質的な部分では確かに純A級アンプがよい部分があるようです。その理由を考えてみましょう。
1.クロスオーバー歪が原理的に発生しない。
2.スイッチング歪が原理的に発生しない。
この2点は擬似A級でも実現可能ですから、この際メリットとは言わないことにしましょう。
3.電源への負荷変動が少ない。
大量にアイドリング電流を流しておいて、出力が欲しい時にその電流の一部をお裾分けするように出力しています。 そういう動作のため、出力に応じて電源への負荷変動が発生するAB級や擬似A級に比べて電源への負荷変動が少ないので、電源電圧自体も出力に釣られて変動する量は少なくなりす。 純A級BTLアンプなら原理的に変動はなくなります。
(これは最後の手段としてとっておきましょう)
4.トランジスタの動作はコレクタ電流が多い方が直線性が良い。
最終段のトランジスタの事を言っているのですが、動作電流が多いほうがリニアリティが増すのはバイポーラもMOS FETも同じで、AB級より電流の多いA級アンプの方が、出力段で発生する歪は少なくなります。 NFBにより殆ど影響がなくなるほど補正されますが、元から発生しない方が良いのは確かでしょう。
(※)当然TRの種類によってコレクタ電流の限度があります。
5.出力インピーダンスが低くなる。
これも最終段のことです。 エミフォロの出力インピーダンスはhfeと動作電流、信号源抵抗で決まります。 hfeの高いトランジスタを使う、出力段を並列にするなどの手法も出力インピーダンスを下げる手法ですが、その状態でも、アイドリング電流を増やすことでさらに出力インピーダンスを下げる事ができるのです。 TRによってはコレクタ電流が増えるとhfeも増すような特性のものも多いです。
こちらもNFBにより、実測上では殆ど差が出てこないですが、複雑な波形の音楽信号を駆動する場合には帰還に頼らない低インピーダンス出力が有利だと考えています。
デメリットの方もみていきましょう。
1.発熱が多くなる。
利点の3の所でも書きましたが、大量のアイドリング電流のうち一部しか出力していません。
残りは全て熱となって放出されます。 一言でいうと無駄が多い。
ですが、ヘッドホンアンプでは電源電圧が低いので電気ストーブのようなとんでもない発熱にはなりません。
ちなみに、出力していない時が最も熱く、出力を沢山出しているときは、その分の熱量が出力先へと移っていると考えて差し支えありません。
これが、50W+50Wのアンプなら大変な熱で、ヒートシンクやら電源やらの部品でコストがかかり大変なのですが、ヘッドホンアンプとなると全く大したことはありません。
2.電源への負担が多くなる。
アイドリング電流が増えることで、通常時の負荷が増して電源の余裕度が減ります。
もともとギリギリの電源容量でしたら、アイドリングを増やすことで悪化してしまうことが考えられます。
今までHPA-12は、A1015/C1815フルディスクリートヘッドホンアンプから始まったため、許容損失の兼ね合いから、だいたいA級という実用上でクロスオーバー歪が発生しない程度のアイドリングが多めのAB級でした。
ここで最終段のトランジスタを交換して、もっとアイドリング電流を流して純A級にしてみるとどうなのかと、そう考えて実験をすることになりました。
AX-Z911を購入しなければ、こんな実験はしなかったでしょう。
結果は、もう少しお待ちください。
ちなみにZ911の純A級モードの音質は、サンスイ907よりクセが少なくてボーカル物は得意です。
プリ段やトーンコントロール段がなく、セレクタ+ボリューム+パワーアンプという単純な構成のためか音の鮮度が高いようにも思います。 音源ソースの微妙なニュアンスの違いも描き分けるような感じというのでしょうか。
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