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2013年3月10日 (日)

電子工作の安全面に関して(2)

昨日のつづきです。 1. 2. 3.はこちらをご覧ください。

Safety_01

4.ヒューズ  ヒューズホルダー

電安法では、AC100~300Vで定格電流が1A以上の管ヒューズにはPSEマークがあるものを使用することを義務付けています。 

ディスクリートヘッドホンアンプHPA-12では、0.3~0.5Aくらいですので、残念ながらPSE表示があるものは存在しません。 とは言ってもヒューズ自体は安全のために作られているので同じシリーズで1Aを超えるものにPSE表示があるものは、問題ないです。 また、ULやCSA表示があるものも、安全が保証されていると考えて間違いありません。

 

  Fuse1

 定格電流が小さいものはこのサイズが多いです。
 

  Fuse2_2

ヒューズは、このようなパネル固定型ヒューズホルダーか、インライン・ヒューズホルダーを使います。 基板実装用の物もありますが、おそらく電子工作の1次側で使う事はあまりないと思います。 インライン型は、固定しにくいので、パネル固定型の方がお薦めです。

管ヒューズの大きはいくつか種類があります。 ホルダーのサイズを間違わないようにしないと使えませんので、購入する前に確認しましょう。 

ヒューズホルダーもまた、PSE対象外ですので、UL、CSAマークを基準に選びます。 

 
  Fuse3_2

ちなみに、このようなヒューズホルダー付きACインレットもあります。 便利ですね。 

回路的に、電源スイッチの前にヒューズが入っても問題ありません。

 

 

5.配線接続部の処理  絶縁距離

ここが一番厄介な所です。 電安法を読んでもさっぱり分らないと思います。 わざとじゃないかと思うほどややこしいのは以前の電取法と変わりません。 この問題は家電メーカ内でも同じで、殆どの場合は、もっと分りやすい社内基準を作って対処しています。

分りやすくすることで、設計者への負担も減り、チェックする人(品質保証部など)もチェックしやすいので、結果的にミスが減るというメリットがあります。 そういった社内基準は、電安法やUL、CSA、IECなどの各国の安全基準を上回る絶縁距離を指定することで認証検査をパスできるようにしています。
 
さて、AC電源ラインの異極間(HOT-COLD間)や、それらAC電源ラインと、シャーシや2次側との距離(1次-2次間)ですが、UL、CSAなどの安全規格の通ったACインレットやヒューズホルダを使うと、その時点で、十分な空間距離が保てるように作られています。

 

具体的には、異極間、及び1次-2次間の空間距離=絶縁距離は、2mm以上が必要です。(IEC国際規格) 少し余裕をみて3~4mm以上とすると良いでしょう。 

3mm以下になってしまう部分は、収縮チューブなどを被せて絶縁強化をはかるようにします。

Safety5_2

絶縁距離は一番距離が短くなるところをみます。 この図の右側のように、ケーブルの被服を剥いている部分が長すぎると、ケーブルを動かすと危険な状態になるので剥きシロは極力短くします。また、ケーブルは動かないようにタイラップなどで固定しておくのも良いです。

 

配線の接続方法
  
端子に穴がある場合は穴へと通し、端子へぐるぐる巻きつけた後にハンダを十分に流します。  銅線のひげや、ハンダのツノが出ないように注意が必要です。

また、その上から収縮チューブを被せて絶縁すれば完璧です。(収縮チューブは必須ではない)配線ケーブルは、不用意に動かないようにタイラップなどで固定するとなお良いでしょう。

  

Safety4

AC電源ラインで配線と配線を接続するときには、こういった絶縁被覆付き閉端接続子を使うと良いでしょう。 ホームセンターなどで売っています。 屋内配線の延長などに使用される安全性の高い接続端子です。 

専用の圧着工具が必要です。 ラジオペンチくらいで挟んでも抜けてしまいます。 ハンダつけせず銅線をよってカシメます。

 Safety6

配線材は、UL***と書いた配線を使うのが一般的です。 これはULの認証を得た難燃性 を有していて、万が一のときに配線から火が吹かないようなものです。 耐熱や電流、電圧によって使う配線の種類や太さを選択します。 耐熱105℃のUL1015、80℃のUL1007が良く使われます。 UL1672という2重絶縁105℃もヨーロッパ規格では使用されます。

 

 

番外編1  シャープエッジ  

シャープエッジとは、金属の板の端のことです。 

仕上げによってはバリなどがあり、配線材の被服が触れていると、被服が剥げて接触、ショートするので危険です。 たとえ面取りなどしていても、シャープエッジとみなします。

ACコードをシャーシに通す部分で書きましたが、他の部分でも金属シャーシの合わせ面やネジ・ビスの先端、トランスを構成する板金のエッジ部分、角の部分などにケーブルが擦れないようにする必要があります。 特に1次側のAC電源ラインは注意して配線を固定するのがよいです。

 

番外編2  ビニールテープは絶縁材として使用できるのか

結果からいうとNGです。 昔の本などでは、ビニールテープで配線を巻いて・・・ なんて書かれているものもあったようですが、耐熱の問題や難燃性、粘着力の劣化などがあり今の基準からすると残念ながらダメです。
それに、古いビニールテープをはがすとベトベトして気持ちの良いものではありませんから、使用しないようにしましょう。 (ちゃんとUL認証を得たものもあります。100円ショップ等は基本NG)

どうしても粘着テープで絶縁をしたい場合は、カプトンテープ絶縁アセテートテープを使用します。 耐熱200度以上粘着力も熱や経年劣化であまり落ちません。

カプトンテープは実際にメーカーもポータブル機器のFPCやFFC配線固定やバッテリー部絶縁などで使用しています。 値段が高いのがネックです。絶縁用アセテートテープは布製で厚みがあり、シャープエッジの保護などでも使用できます。 難燃性で電子機器の内部でも問題なく使用できます。 よくアンプのヒートシンクの鳴き止めで貼られている黒いテープがコレです。

 

 

 

===================================

電子工作の安全面に関して(1)(2)と書きましたが、いかがでしたでしょうか。

 

ちょっとつまらないお話だったと思いますが、私のサイトのヘッドホンアンプを作る場合だけという意味ではなく、電子工作一般にいえることですので、他の方が頒布している基板を使った場合や、お店で売っているキットを組み立てる際などにも留意しておくと良いでしょう。

自作したものは、電安法(PSE)の認証を得るわけではありませんが、それに準拠するくらい安全性の高いものを製作するのは難しいことではありません。 

 

   電子工作は楽しく安全なものを作りましょう。 

 

※)まったく無駄な知識ですが、電取法のときは「電取法準拠」という形が認められていました。    つまり、市販する製品も「準拠」というだけで、正式に認証検査を受けずに販売できたのです。

当時は国内メーカーの製品が殆どでしたので、紳士的に基準を守って安全性に欠けるような製品は少なかったと思います。

 

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コメント

こんにちは。
ヒューズの入れ方ですが、トランス一次側のどちら側の端子に接続しても大丈夫なのでしょうか?欧米だと、コンセントに明らかに極性があって、片側が接地されているのでヒューズの入れ方に注意が必要だと聞いたことがあるのですが。

DSさん

とても鋭い質問と思います。

日本のコンセントも、HOT、COLDはあります。 

上の図でいうと、ヒューズやスイッチがついていない方は、トランスの「0V」 巻き線の巻き始め側に接続するのが正解で、そちらがCOLDになります。 コンセントもケーブルの白い線が入っている方がCOLDです。 

が、日本のコンセントは、どちらにでも挿せるので、結果は一緒です。 
実は、コンセントの穴の長さが少しだけ違っていて、COLD側が長くなっています。 本来は、この極性を守るべきなのでしょうね。 

ただ、COLD側が分かったとしても、シャーシには落とさないでください。 アース線つきのOAタップの場合もです。 1次側はすべてフローティングにします。

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