DCサーボとは
「DCサーボ」というキーワードは、オーディオアンプなどのカタログやwebサイトで良く目にすると思います。 その正体は一体なんなのでしょうか。
今日は、その中身と動作について紹介しましょう。
実は、直流モーターを使ったサーボモーター(フィードバック回路が内蔵されたモーター)にもこの名称が使われるため混乱が多いですね。 回路技術としては、「DCサーボ回路」と書いた方が良いと思います。 同様にモーターの方も「DCサーボモーター」が正式名称です。
さて、DCサーボ回路は、どういう時に使うものなのかを知っておく必要があると思います。
その名称から想像できるとおり、オーディオ信号ではなくDC(直流)に関する回路技術のひとつです。
本来、アンプ回路単独でDCオフセットやDCドリフトが少ないのが理想ですが、電流帰還アンプなど一部の回路構成では、どうしても安定しない事があります。
そういう時に、NFB回路にこのDCサーボ回路を加えて、強制的にDC漏れを抑えこむというのが目的です。
DCオフセットとは、出力にDCが出てしまうことを言います。
DCドリフトとは、DCオフセット調整機能があったとして、一旦出力DCを0Vへと調整した後に温度変化や電源電圧変動などで、出力にDCが出てしまう事を指します。 もちろん調整機能がなくDCオフセットが出ているものに対して、さらに温度変化でDCドリフトが重なってくることもあります。
このDC漏れは、ヘッドホンアンプなら±10mV程度、スピーカ用アンプなら±100mV以下くらいに抑えておきたいものです。 特に、最近の感度が高くインピーダンスの低いヘッドホンなら±3mV以下にしておかないと
音質へも影響がでる可能性があります。
さてさて、前おきが長くなってしまいましたが、DCサーボの回路の説明にはいりましょう。
上の図のように、オペアンプで構成された、アクティブフィルタの一種です。 この回路の定数ですと、0.16Hzという非常に低いカットオフ周波数となります。 つまりそれ以上の周波数成分には応答せず、直流成分だけを増幅する回路となっています。DCサーボ回路の入力は、当然、アンプの出力ノードです。 そしてサーボの出力は、回路のどこかへと接続しますが、これは回路構成により色々あります。
もっともオーソドックスなのは、信号のフィードバックしている点へと加算する方法です。
信号を反転して+側ノードへと返す方法もあります。 ちょっと難しいのは、前日紹介したアレキサンダー型電流帰還アンプのDCサーボでしょうか。

この回路は、オペアンプの電源ラインを通じて信号を後段へと伝えてるので、DCサーボ回路の出力はGNDへと捨てているように見えますね。 面白い回路です。
DCサーボ回路は反転回路で構成していて、GND基準ではなく、入力のDC成分基準にしていることろも興味深いです。
実は、この回路を応用して、もう少しシンプルなアンプを組んだ事があります。 あまりにアレキサンダー型の音質が良かったからです。
今、私がメインで使用しているパワーアンプがそれなのですが、近いうちに紹介できればと思います。
当時、スペックヲタクだった私はその回路の特性に満足したのでした。
スルーレート250V/us S/N比 127dB ・・・・
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初めまして、
ここ数日読みふけってました。
自作派の自分は、在籍中最後のアンプとなる物を製作していましたが、トラブルでデッドロック状態となり、その解決策を探す為にあっちこっちを徘徊中に、このサイトを見つけました。
漸くそのアンプも完成し、時間が出来たので一気に読ませて頂きました。
今回の話題と関連のアレキサンダー型電流帰還アンプを興味深く読んで感心していました、アナデバのアプリケーションは参考になりました。
もう作る事は無いだろうと思っていたアンプですが、また変な浮気心が湧いてきました。
この先も勝手にお邪魔をして、興味深い読み物を楽しませて頂きます。
投稿: の5 | 2013年3月20日 (水) 20時20分
はじめまして。 こんばんは。
書くときは、気ままに、テキトウに書いていますが、一気に読破しようとすると、大変かもしれませんね。
アレキサンダー氏のアンプは、出力段にIGBTを使っていて、同型は入手不可能かもしれません。
IGBT自体は現在も製造されていますが、電子ジャーとか、電車のVVFなどに使用される、でかいブロック形状の
ものばかりです。 さすがにそれではアンプは組めないと思います。
と言うことで、私はサンケンLAPTを使用してみました。 大電流MOSやIGBTより速度を速くすることが
容易ですし、発振しにくいのでオリジナルよりは作りやすいかもしれません。
オーディオアンプは、もう枯れた技術なのかもしれませんが、作る毎に新しい発見があって面白いですね。
投稿: たかじん | 2013年3月20日 (水) 22時55分
久しぶりにお邪魔します。
回路構成にもよると思いますが
DCサーボに使用するオペアンプって
スルーレート重要になってきますか?
高精度な1回路で入手しやすいのを探していて
OP177が候補になっているのですが
ちょっと遅いのかなーと思ってたり。
投稿: GRMN | 2020年5月14日 (木) 18時08分
GRMN さん
DCサーボの動きは、フィルタ定数でとても遅くするので、スルーレートはまったく気にしなくて良いです。
逆に、必要なスペックは、低オフセット、低DCドリフト、低ノイズ、低入力バイアス電流、あたりです。
ざっとスペックを見てみたのですが、OP177は完全に適していると思います。
投稿: たかじん | 2020年5月14日 (木) 23時08分
ありがとうございます。
OP177に決定しようと思います。
話は変わりますが
繊細で綺麗な音を出す
2SC2837や2SC3519のLAPTを愛用しているのですが
これらはもう40年近くも前の製品なんですね。
そこで最近のパワトラはどうなんだろうと思い
東芝のTTC5200を試してみました!
繊細さと中域のパワー感を両立していて
とてもいい感じに鳴ってくれます。
2SC3423 -> 2SC5171 -> TTC5200
が最近お気に入りの東芝3段ダーリントンです。
投稿: GRMN | 2020年5月15日 (金) 11時01分
GRMN さん
TTC5200ですか。 単に2SC5200/2SA1943の型名を振り付け直したものかと思っていました。データシートをみるとスペック的には同一ですが、各種特性カーブ違っていますね。
2SC5171/2SA1930はドライバTRとして最高位に君臨するトランジスタと思います。製造中止がとても残念です。
TTC5200/TTA1943ちょっと試してみたいです。 情報ありがとうございます。
投稿: たかじん | 2020年5月16日 (土) 09時08分
そうなんですよー
コンプリメンタリ性の改善や
低Cob化されているのが大きいですね。
さらに1943は
三重拡散からエピタキシャルになっています。
もう別物のトランジスタですよね。
投稿: GRMN | 2020年5月16日 (土) 23時59分
たかじんさま、GRMNさま
TTC5200, 2SC5200, 2SC5200N
TTA1943, 2SC1943, 2SC1943N
の3種類があるみたいですね。
生産開始の年月をみると、上記の順で新しくなっているようです。
むしろ、量産時にダウングレードされたのかなと。
Cobが一番低いのはTTA:240pF, TTC:145pFで
2SCに改版されてA:360pF, C:200pFになっているようです。
すべて、千石電商さんで買えるみたいです。
投稿: sue18jp | 2020年5月17日 (日) 22時05分
GRMN さん
なるほど。プロセスが違うと、全く別物ですね。 コンプリ特性を重視しているのはよさそうです。
sue18jp さん
情報ありがとうございます。 オリジナルの2SC5200は、30年くらいと思うのですがデータシートが新しくなっているので、途中で変更をしていたのかもしれませんね。
TTC/TTAという名称になったのは、2SA~Dという連番登録制をJISが止めたからです。
https://detail-infomation.com/transistor-model-number/
ここによると、JISの登録制の廃止は1993年だったようです。
投稿: たかじん | 2020年5月17日 (日) 23時12分
2SC5200が登場したのは1994年辺りでしょうか。
5200Nは5200のパッケージ違いという感じですね。
(TO-3PL -> TO-3PN)
元々、5200から派生したパッケージ違いで
5242や5358なんかがあったと思います。
Pc値が微妙に違うだけでスペックは全て同じなはずです。
TTC5200は新設計ですのでこれだけは別物ですね。
投稿: GRMN | 2020年5月18日 (月) 18時00分
GRMN さん
> 2SC5200が登場したのは1994年辺りでしょうか。
おそらくそのあたりだと思われます。 パッケージ違いもありますね。
2SC5200シリーズ、そこそこ高級アンプに使われていたと思います。
例えば、これとか5200Nと書いているのが見えますね。
https://www.accuphase.co.jp/cat/m-6200.pdf
色々検索してみると、オンセミ(Fairchild)でも2SC5200を出しています。これは東芝とは関係なく、互換トランジスタということだとは思います。
https://www.onsemi.jp/products/discretes-drivers/general-purpose-and-low-vcesat-transistors/2sc5200
ちょっと面白いですね。
投稿: たかじん | 2020年5月20日 (水) 23時56分