フルデジタルアンプの落とし穴
いまどき、フルデジタルの方が良さそう! っと考えるのは実は短絡的すぎます。
フルデジタルアンプとは、入力から出力まで全てデジタルのアンプのことを指しています。
デジタルの入力:SPDIF、I2S、その他シリアルデータ
デジタルの出力:PWM、PDMなど
フルデジタルアンプとは、入力から出力まで全てデジタルのアンプのことを指しています。
デジタルの入力:SPDIF、I2S、その他シリアルデータ
デジタルの出力:PWM、PDMなど
デジタルボリュームとアナログボリュームでも書きましたが、やはり分解能が減ってしまうのが懸念されます。


アンプは、フルパワーで鳴らすことはまずありません。
通常、6帖から10帖くらいのご家庭で音楽を程よく、近所迷惑にならない程度で聞いているときには、聞く音量やスピーカの能率に左右されますが、ピーク時に0.5W~5W程度です。90dB/W/m以上の高能率なスピーカでは、1Wを超えるような音量というと、かなり近所迷惑な音量と思います。
ではでは、ピーク出力1Wで聞くとき、100Wのフルデジタルアンプのアッテネータではどのくらいの減衰量が必要か計算してみましょう。
スピーカのインピーダンスを8Ωで計算すると、1Wでは2.83V 100Wでは28.3Vです。
電圧にして1/10。 減衰量はたったの-20dBです。 bit数にすると3.4bit程度の分解能低下。 出力が20bitくらいの分解能があれば問題無さそうな数値です。
ただ、疑問があります。
本当に-20dBの減衰量で普段聞いている音量なのでしょうか?
本当に-20dBの減衰量で普段聞いている音量なのでしょうか?
ちょっと古いプリメインアンプなどを使用している方は、ボリュームの周囲に減衰量が書いてあるのをご存知だと思います。 一部の高級なアンプではデジタル表示で減衰量が表示するものもありますね。
私の手元にあるアンプのボリュームは9時方向で-42dBと書いてあります。
9時方向まで上げると、メチャメチャな大音量です。
ちなみに-20dBと書いてある方向は11時半・・・
普段、聴く音量での減衰量は-60dB~-70dBくらい。
ちなみに-20dBと書いてある方向は11時半・・・
普段、聴く音量での減衰量は-60dB~-70dBくらい。
つまり、何を言いたいのかといいますと、恐らく100Wのデジタルアンプを1Wで鳴らしている時のデジタルアッテネータの減衰量は-20dBではなく、もっと大きい。 おそらく-40~-50dBほどであろうと推測しています。
何故なのでしょう?
実は、入力信号が0dB つまり最大音量で、初めてアンプが最大出力となる仕様だと入力信号が小さい時に大きな音をだすことができず、実用上で問題になります。
では、どこまで小さい音をサポートするかという話になってきます。
ちょっと前のアンプの入力レベルは150mVでフルパワーが出せるようにしていました。CD等のデジタル機器の基準 2.0Vと比較すると約22.5dBほど違います。
ちょっと前のアンプの入力レベルは150mVでフルパワーが出せるようにしていました。CD等のデジタル機器の基準 2.0Vと比較すると約22.5dBほど違います。
-20dBくらいの信号までフルパワーで出力できるようにすると、先の1W出力時のデジタルアッテネータ値は-40dBとなります。 同様に-30dBならアッテネータ値は-50dBです。
デジタル領域で音を減衰させると、分解能はどんどん減り、ディテールが失われていきます。 いかにアナログアンプに近づけるのかというのが、フルデジタルアンプの当面の目標ですが、いまだ追いつけていないのが大方の見方でしょう。 アナログ入力デジタルアンプのお話は、またの機会にできればと思いますが、50dBもデジタルアッテネータで情報欠落させたフルデジタルアンプよりはずっとマシです。

※)最近ではデジタルアッテネータの前に可変のプリスケーラ(1倍、2倍、4倍)を実装し、ボリューム位置に応じて連動させることで分解能不足になることを ある程度防ぐ仕組みを使っているようです。
6~7年ほど前に、使おうとしたアポジー社のフルデジタルアンプICは、LowBoost機能が ありましたが、この仕様がひどく、デジタルアッテネータの前段に入っていました。 何が起こるかといいますと、LowBoostをONすると、ボリュームを絞っていながらにして低音がクリップして歪んでしまう。 小さい音なのにクリップするんです。 商品化する前に、 そのくらいの不具合が発生することは判りそうなものなのですが・・・
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お世話になってます、たかじんさま m(_ _)m
ただいま別世界から帰還中です
以前から気になっていることをお聞きしたいと思い書き込んでいます
PGA2311で電子ボリュームを自作して使っていますがPGA2311のスペックシートを読んでもビット落ちに関しての記述が見つけられません
やはりビット落ちしているのでしょうか?
ぜひ教えてください
投稿: TAKI | 2013年2月 4日 (月) 09時36分
TAKI さんこんにちは。
PGA2311は、アナログボリュームです。 コントロールはデジタル制御となっているので勘違いしやすい
かもしれません。 したがって分解能低下の心配はありません。
しかも、このICにはボリュームの後にオペアンプが入っていて低インピーダンスで
出力されるため、後段のアンプを強力に駆動します。 簡単に言えばワンチップ・プリアンプ
という感じでしょうか。 専門用語でギャングエラーといいますが、左右の音量のバラつきが
少なく、データシートをみる限りチャンネルセパレーションも130dBと優れています。
オペアンプの特性もまずまずのようですので評判がよいのもうなづけます。
投稿: たかじん | 2013年2月 4日 (月) 12時29分
たかじんさん、ありがとうございます
長年の疑問が解消しました
PGA2311って電子コントロールのアナログボリュームと理解すれば良いのですね
自作したのはバランス出力とアンバランスを切替て使いたかったのと意図的に左右音量を変えて実験したかったからです
音的には私には十分です
今度は構造が簡単そうなL-PAD型アッテネーターを自作してみようと思っています
投稿: TAKI | 2013年2月 4日 (月) 13時44分
ボリューム周りは、結構、音に影響する部分で奥が深いですね。
私も、音質評価のときには40型のボリュームをつかいます。 普段は安価な16型ですが、
最低ラインですね。 特に音漏れがあるわけでもないのに空間の広さとかに違いがでるのが面白いです。
アッテネータ、いいですね。 東京光音電波の自作アッテネータは値段が高くて断念しました。
3000円くらいなら買うのに・・・
投稿: たかじん | 2013年2月 4日 (月) 21時38分
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
質問なのですが、アッテネーターを作る時、50Ω等にしてしまってバッファを入れてみたらどうだろうかと思ったのですが、どう思いますか?
高抵抗をわざわざ入手するのは手間ですし、高抵抗だと良質なものを使わないと音質が悪くなるイメージがあるので。
投稿: john doe | 2013年2月 7日 (木) 23時15分
john doe さん はじめまして。
ボリュームやアッテネータの抵抗値は、入力側の機器の負荷となります。 CDプレーヤやipodなどです。
ヘッドホン出力機器では、30Ωや50Ωの負荷に耐えるだけの出力をもっていますが、通常のCDプレーヤ
などの機器は、600Ω程度が最低負荷となり、それより低い抵抗だと、歪が増えてきてしまうので、あまり
低い抵抗で受けるのは得策ではありません。
ノイズという観点からは抵抗値が低い方が有利なのですが、出力側機器の負荷として考えると数kΩ以上の抵抗値で受けてあげる方が音質的には優れていることが多いです。
1kΩ、5kΩ、10kΩ、20kΩ、50kΩ、100kΩのボリュームで聴き比べててみると、どの抵抗値が
一番良いのかわかるのですが・・・ 結局は送り出し側の機器に左右されます。
無難なのは10k~50kあたりです。 送り出し機器が真空管アンプなら100kか250kです。
http://teac.jp/product/ha-501/ TEACのヘッドホンアンプですが、こちらでは、まずオペアンプで信号を
受けてから、ボリュームを通して音量調整しています。 そうすることで入力機器に左右されずに同じ
条件で鳴らすことができます。
投稿: たかじん | 2013年2月 8日 (金) 08時08分
たかじん、ありがとうございます。
製品でもあったのですね。
せっかくなので、ダイヤモンドバッファでもつけて実験もしてみようとおもいます。
無線関係ではよく見られる減衰比を加算していくタイプ?にしてみます。
オーディオでは接点が増えるせいか見たことが無いですが・・・
投稿: john doe | 2013年2月 9日 (土) 10時32分
こんにちは。
そうですね。高周波ではSWRの影響もあって、インピーダンスマッチングをとらないと最終段デバイスに余計な負荷をかけますし、電力効率(伝達効率)がよくありません。
ただ、オーディオのように0.1%にも満たない歪を考慮する必要はないため、同じ理論を適用するには、若干の
難があります。
http://www.san-ei-denpa.com/jyucyuu/019/indexi.html
接点切り替えしていくアッテネータは、こんな感じですね。 高価なため、あまり使われません。
ダイヤモンドバッファは、NFBループの中にいれて、非直線成分を補正しながら使うとよいと思います。
裸特性は、さほど良くないためです。 完全な熱結合をしないとDC安定度もいまいちです。
BUF634やHA-5002のようなモノリシックなダイヤモンドバッファなら、結構いいかもしれません。
投稿: たかじん | 2013年2月 9日 (土) 14時23分
たびたびのアドバイス、ありがとうございます。
私の言ったアッテネーターは、1db・2db・3db・5db・10db・20db×2といったアッテネーターを用意し、トグルスイッチで組み合わせるものです。
これなら61dbまで1dbステップの可変とでき、誤差は多少出ますが、少部品・汎用部品で作れるのではないかという考えです。
さすがに5dbステップだと雑ですし、2dbステップでは部品数があまり減らないので。
ロータリースイッチで作れば理想的でしょうが、接点数が多いとロータリースイッチ自体が高価ですので・・・
投稿: john doe | 2013年2月 9日 (土) 19時07分
なるほど。 面白いアイデアですね。 R-2Rラダー型、その応用のラッスクLECUAにも似ていますが、
実際に運用しているのはあまり見かけたことがありません。 マークレビンソンくらい?
秋月で売っている100円くらいのリレーを使ってマイコンから制御するというのもアリかもしれません。
5bitで32段階調整。 6bitで64段階。
カーステあたりは40段階くらいのボリュームで普通ですから、十分実用な音量調整ができそうです。
完成した折には、ぜひご感想をお聞かせください。
私も、ボリューム/アッテネータは何がよいのか模索中です。 安くて、実用的で、音が良いもの。
何がいいんだろう???
投稿: たかじん | 2013年2月 9日 (土) 21時36分
電子ボリュームの頒布開始おめでとうございます。
今更ですが、ステップアッテネーターについての一応の報告です。
使用しての第一印想は、想像していたよりは使いやすいです。
予想を裏切って、爆音になる操作ミスも起こりにくいです。どれを先に動かせばいいか直感で分かります。
音質はスイッチも抵抗も安物を使いすぎのせいかイマイチでしたが、音が残念な抵抗の残念な音は出ました。
本当に酷い音になる方式ならもっと酷い音が出るはずなので、良い部品を使って出直しまてみます。
良い部品を買ってもたいした金額にならないのが恐らく最大のメリットですので。
大した金額にはならないのだから最初から良い部品を使えばよかったのですが・・・
投稿: jhon doe | 2013年7月19日 (金) 03時25分
jhon doeさん こんにちは
ありがとうございます。 思えば、この記事を書いたあたりからボリュームを
模索して、結局電子ボリュームにたどり着いたという感じです。 もう半年近く
なるんですね。
ステップアッテネータも完成したようで、何よりです。
使い勝手を検証できたということは、あとは部品の選定だけですね。
抵抗は、あれこれ音質にこだわった製品がありますが、スイッチとして
音質が良いというは、あまりレビューされていないかもしれません。
その辺りが決め手になってくる可能性もありますね。
投稿: たかじん | 2013年7月19日 (金) 07時04分