電子ボリューム考察(1)
現在の高級アンプでは、デジタル制御のアナログ電子ボリュームの採用が多いですが、どのような特長があるのでしょうか。 ちょっと調べてみましょう。
まずは、アキュフェーズのAAVA
電流加算型のDACにちかいイメージです。 それをディスクリートで組んでいるので大変な回路規模となっています。
そういえば、どこかのAVアンプでDAC-ICをボリュームに使って5.1chのギャングエラーを少なくする手法をずいぶんと早い時代にやっていたと思うのですが、メーカーも型名も憶えていません。 パイオニアかデンオンあたりだったような・・・
つぎはLUXMANのLECUA
こちらは、パッシブのアッテネータを前後のスイッチで切り替える、いわゆるLパッド型アッテネータです。 電子ボリュームと言うより、電子制御式アッテネータですね。 回路もシンプルで抵抗素子が良ければ音にもクセが乗りにくそうです。
両社ともスイッチにはアナログスイッチというデバイスを使用しているのですが、これが少々クセ者で、実はON抵抗がさほど低くないというのと、スイッチを通る信号の振幅電圧が高くなると歪んでしまうというデメリットがあります。
ただし、電圧を振幅させずに電流だけを通すような使い方をするとその影響は最小限に抑えることが出来ますので、アキュフェーズの使い方のほうが理に適っていると言えます。
またアキュフェーズの方がアナログスイッチを1段しか通らないです。
昔、JRCのアナログスイッチ式セレクタを使用したのですが、これを通した音は躍動感がなくなり、のっぺりとしていて、それ以降、どうもアナログスイッチが好きになれないでいます。
多分、もっと音の良いアナログスイッチがあるのだと思います。
つづいて、CECのDIGM
これは、詳細やブロック図がないので推測の域を脱しないのですが、説明は下記ようになっています。
バイポーラ・トランジスタで構成されるA級スイッチを用いて、金属フィルム抵抗を切り替えることによりアンプのゲインをデジタル制御する。ボリュームは1dBずつ66段階に調節できる。
上の2社と違って、アンプのゲインを変更している。 アナログスイッチではなくバイポーラトランジスタを使用している。 ミュートトランジスタあたりでしょうか。 ベース電流をアンプに吸い込んでもらうことで発生するオフセットを対処しているように思います。
極めつけは金属フィルム抵抗という超高級な抵抗体。
アンプのゲインを変更してボリュームをコントロールする手法は、かつてのテクニクスがセパレートアンプのプリでやっていて凄いなと思ったことがあります。
アンプの入力部で信号を絞ってしまうより、実使用上のS/Nやダイナミックレンジが稼げるからです。
ちなみに、市販ボリュームICである、WM8816、MAS6116、MUSES72320、PGA231x でも同様に、バッファアンプのゲインも同時にコントロールして、信号を減衰させているときのS/Nを良くするように工夫しています。 ただ、ゲインを変更するということはユニティゲインでも十分に安定な位相補正容量が必要ということで、バッファアンプが外付けになるボリュームICでは、少し気をつけなければなりません。
マランツなどでは、この市販ボリュームICを使用しているようです。
最後に、cdsフォトカプラを使った可変抵抗ボリューム
http://www.tortugaaudio.com/features/saying-yes-to-light-dependent-resistors/
英語ですが、こちらに説明が書かれています。
簡単にいいますと、cdsの抵抗値の変化を使ってボリュームを制御している。
アナログスイッチもトランジスタも使用しない。接点もない。 というシンプルなボリュームです。 LEDの光の強さでコントロールしています。
cdsはその名の通りカドミウムを使用していて、RoHS指令に引っかかるために製造しているメーカーは近年でものすごく減りました。 また、リニアに制御しようとするとバラツキがとても大きいため苦労するはずです。 そして、cdsのような抵抗体に音楽信号を通して良い音がするのかどうか、聴いた事がないので何とも言えません。
高精度の金属皮膜抵抗や、その他オーディオ用の抵抗、無誘導性抵抗などを使って、極力音を劣化させないようにしている人達からすると、少々疑問が残るところではあるように思います。
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こんにちは
bitstreamというハンドルで何度かコメントさせていただいた者です。
別の名前も持っていたのでhenという名前に統一しました。
改めてよろしくおねがいします。
>アンプのゲインを変更してボリュームをコントロールする手法は、かつてのテクニクスがセパレート
>アンプのプリでやっていて凄いなと思ったことがあります。
これは、プリメインのほうが効果的ですよね。
http://www.audio-heritage.jp/TECHNICS/amp/su-vx800.html
じつはこれを所有しているのですが、めちゃくちゃ凝ったアンプです。
フォトカプラのボリュームはlightspeed attenuatorとして海外のdiyerの間で流行ったらしいですね。
投稿: hen | 2013年2月18日 (月) 20時59分
henさん こんにちは。
さすがお詳しいですね。 この頃のパナのプリメインはノーマークでした。MA10だったでしょうか、
DACが付いたモデルが印象的で、デザインも格好よくすごいと思っていましたが、VX800もカタログを
みるとスゴイですね。 OFCトランスなんて、今じゃ特注しても作ってもらえなさそうです。
仰るとおり、プリメインとして可変ゲインアンプ+0dBパワーアンプだと、セパレートよりずっと有利ですね。
cdsカプラは、確かに海外での評判があったので知りました。
材料の有毒性の観点やバラつきの大きさからメーカ製アンプに搭載は難しいですが、これだけ話題に
なったということは、それなりにメリットがあるからだと思います。
秋月電子にて安価に入手可能ですから、実験して聴いてみるというのも良いかもしれませんね。
投稿: たかじん | 2013年2月19日 (火) 12時23分
こんにちは
cdsはほんとにばらつきがすごいですよね。
ちょっとした実験であればバラつきを調整して使えるでしょうが、実用的にするには相当数買って選別しないと厳しそうですね。
cdsのは一時期考えましたが、余ったのを使い切る自信がなくてやめました。
アナログスイッチはICのは使ったこと無いのでよく分からないのですが、躍動感がなくなるのですか。
アッテネーターはまだ作ってませんが、ICのアナログスイッチを使ってみようか迷っていたので、参考になりました。
投稿: john doe | 2013年2月19日 (火) 23時27分
john doeさん こんにちは。
アキュフェーズやラックスが使っているくらいだから、音に悪影響を与えにくいアナログスイッチがあるとは思います。
私が使ったものはいまひとつでしたね。 ミニコンポや低価格の2chアンプ、AVアンプの中級機
くらいまで、リモコンで入力セレクタを切り替えられるのは、殆どアナログスイッチが採用されていました。
安価で便利なのですが、音への影響は相当ありました。 N2密閉リレーは高いので10万円以下の
アンプへは採用が少なかったと思います。
cdsボリュームは、ギャングエラーをどう抑えこむか、そこが悩みどころですね。 ギャングエラーを無視しても
音が良いのであれば、メリットはあるのかもしれません。
投稿: たかじん | 2013年2月20日 (水) 08時25分