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« 907の躍動感 音楽が弾む感覚は異常 | トップページ | 第4弾 907対抗セッティング HPA-12 »

2013年2月 7日 (木)

ダイアモンド差動回路とは

上下対称差動回路(1)で書いたように、トランジスタやFETは、上下でデバイス特性が違うため理想的な対称動作をしてくれません。
 

ところが、後段のドライブは非常に望ましいメリットもあることを上下対称差動回路(2)で書きました。  欠点を解消してメリットを活かしいているのが、ダイアモンド差動回路です。

上下対称差動のさらに前段として片側差動回路を追加すると下記のような回路になります。

 
Differential6 

 

この時点で、対称差動のデメリットを解消してメリットだけが活かされる回路となります。
 

ところが、サンスイのダイアモンド差動は、さらに一歩進んで、2段目の対称差動から定電流回路を省き、上下の差動回路のエミッタ同士を抵抗を介してつないでいます。

 

回路はこんな感じです。 (いつもならが抵抗値などはテキトウです)


Differential7

 

 

差動回路に定電流回路があると、片側へ電流が集中したときに、そこで電流制限がかかるのですが、ダイアモンド差動は、一切電流制限がかかりません。

 

後段のトランジスタをスルーレート制限もなしに強制的にドライブし続けます。

そのことが出力ショートなどから守らないとならないプロ用機器では逆に仇となってしまったらしいです。(トランジスタやベース抵抗などを焼き切ってしまう)

 

 

CMRR(コモン・モード・リジェクション・レシオ)は初段の差動回路で、きっちりとした定電流回路が組まれていれば必要にして十分な値とすることができるため、2段目も定電流にする必要はありません。

 

回路構成は初段の負荷にバイアス回路が増えるものの、定電流回路がなくなり全体としてはさほど複雑化してはいません。

 
 
上下対称差動でも定電流回路を省くと似たように電流制限がかからなくなるのですが、CMRRは大きくとれず、歪が大きくなります。 更にJFETを使った上下対称差動はその特性からIDSSを少し超えた辺りで電流制限がかかります。  一見、似ているように思われるかもしれませんが、根本的に上下対称差動とダイアモンド差動とは違うものです。

 

ひとつ懸念事項をあげるとすると、ダイアモンド差動部の動作電圧が+側へシフトしているので上下のトランジスタのコレクタ損失が異なるという点です。 左右で発熱量が違う訳ではありませんからあまり気にしなくてもよいとも思います。

 

音質的なことは、サンスイがダイアモンド差動を生み出してから会社が無くなるまでの間、この回路を使い続けたことを考えると、どうこういういう必要はないでしょう。

ただ、私がサンスイFANのひとりだということは内緒です。

 

※)3段増幅回路となるため、実用にするには高度な位相補償の技術が必要となります。

また、ここでは分りやすく説明するためにカスコード回路などを省いています。 
販売していた製品では結構複雑な事をやっていますので回路規模はかなりのものになります。

 

 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

ふと思ったことを質問してもよろしいでしょうか。


サンスイのXバランスというのは、図で言うと二段目の左側にもエミッタコモンを付けただけでしょうか。

後は電流増幅段が2回路分ある、という。

若輩者さん

その通りです。 NFBはタスキがけにします。 
入力側から見ると、反転アンプが2つあるような感じです。 つまり信号ラインへ直列に抵抗が入ります。

Xバランスではない、ダイアモンド差動回路は、非反転回路で組まれていて、信号ラインに余計な抵抗は挿入されません。 それぞれにメリットデメリットがあると思いますが、山水はXバランスを最終的に選んでいます。 

ネット検索で907や607のサービスマニュアルを探すと本当の回路図を発見できると思います。 

たかじんさん

>その通りです。
あの通りでしたか。良かったです。

>つまり信号ラインへ直列に抵抗が入ります。
た、確かに・・・。


D607の修理をした時に思ったのは、ともかくそこかしこにカスコードを追加しているな、ということです。
上下対称差動でカスコードを付けると、それだけで4石追加ですし・・・。

ただ、仮にXバランスにしても、エミッタコモンの2石と、終段のバイアス調整用1石の他は、電圧増幅部に追加はないのですよね。
確かに、電流増幅段が2つになる分、三段ダーリントンで6石増えますが、それでも計9石。元の数(カスコード込みで17石)を考えれば、思ったほど回路規模が大きくならない気がします。

ファイナルのお値段の高いTrの数が倍になるのは、きついものがあるかもしれませんが・・・。


何にしても、ダイヤモンド差動回路をユニバーサル基板で自作するのは、複雑で冒険すぎました・・・。
上手く動いてくれません。

若輩者さん

なんと、ダイアモンド差動をユニバーサルで組んだのですか!
すごいです。 リアル挑戦者っすね!!!

アンプ回路のプロが何年も時間をかけて検討してきた結果、Xバランス回路が誕生しています。 3段増幅+3段ダーリントンを発振せずに組むのは至難の業と思います。
 
例えがアレですが、料理のレシピだけみて、普通の人が作っても料亭の味にならないのと一緒で、回路図だけあっても、あの音は出ない。 それどころか完成すらしない。

果敢にも挑戦された若輩者さんに、拍手をおくりたいです。

密かに、ダイアモンド差動ヘッドホンアンプなんてものを考えて、ノートに回路図を書いていました。 ただ、そんな回路をまともに動作させるには根気が必要だと思い断念していました。


たかじんさん


とりあえず、実験的に電源電圧±18Vで、モノラルだけ製作してみましたが、電圧増幅部用の定電圧回路から煙が出ました。トランジスタが見事に焼けていました。

原因はアンプ部分ではなく、定電圧回路でした。
(とは言え、別の安定化電源を使っても、満足に動作しませんでした。
可能な限り最短の配線を工夫し、帯域は犠牲にした安全設計のはずでしたが、それでもまともには動かなかった。)

そして私は、定電圧回路すら満足に設計出来ないことに絶望したのです。これでは、ダイヤモンド差動回路なんて、まともに設計出来るはずがありませんし、その先にも行けません。


いつか、まともに動作させてみせます。

若輩者さん

電源回路もフィードバックありなら、アンプと似たような難しさとノウハウが必要と思います。 電圧増幅段と、電力増幅段を別々にすると、またそれで、うまく動作させるのにノウハウが必要だったりしますので、多方面の技術力が求められますね。

>いつか、まともに動作させてみせます。
さすがです。 その心意気が気に入りました。 失敗してもめげない素質がないとアナログ回路をマスターできないのかも知れません。

回路シミュレータではTRが燃えてくれないので、緊張感がないですよね。 いっそのこと、TRや抵抗が燃えるくらいの設定値を入れると、回路ファイルが壊れるくらいの仕様がいいのかも(笑

バグではありません。 仕様です。 と。 

たじんさんこんにちは。

サンスイのパワーアンプ回路について調べていたらたかじんさんのこのページを見つけまして、万能基板で初段にDualFET:uPA71A、ダイアモンド段・3段目に2SA970/2SC2240、終段に2SK134/2sJ49
を使って回路を組んでみたら、無事動作してすばらしい音質で驚きました。
しかしこの回路のままだとダイアモンド部の下側に電源電圧が集中して2SA970の耐圧・発熱が気になります。
そこで下側のトランジスタをパワータイプに変えようと思うのですがこのダイアモンド部はコンプリメンタリである必要がありますか?

長文失礼いたしました。

suzuki さん

こちらに載せている回路図はあくまでも概要を示すもので、抵抗値は適切ではありません。
ダイアモンド差動のエミッタ抵抗はそれぞれ独立した抵抗を入れて4本のセンターを
接続した方が良いです。
また電流値はそのエミッタ抵抗で設定できますから、熱いようでしたら
少し大きい抵抗値にしてあげると発熱が減ります。
個人的にはコンプリメンタリ・トランジスタを使っている方が良いかと思います。

ご返信頂き誠にありがとうございます。ご教示頂いたとおりに回路を変更したところ今までのトランジスタでも発熱が問題ない範囲に収めることができました。
しかし改めて回路を考えてみたら、ダイアモンド差動の上下で電圧が違ってしまう問題は初段にフォールデッドカスコードを用いて出力電位をGNDレベルにすれば解決できるのですね。フォールデッドはいまいち電流設定が上手くいかないのですが、頑張ってみようと思います。

suzuki さん

フォールデッドカスコードは、設定が難しいのと、ダイアモンド差動回路はすでに3段増幅なので、さらにもう一段追加するのは全くおススメできません。

それよりも初段のコレクタ(ドレイン)電位を下げるように設定して上下の電圧差を減らすほうが良いと思います。 上下で電圧がちがうのはこの回路の特徴でもあります。

はじめまして。
このダイアモンド差動回路は電流制限がかからないとよく解説されていますが、疑問があります。
二段目がカットオフしない条件では、共通バイアス抵抗に流れる電流はほぼ一定で、差動と同じ動作になるはずです。
「電流制限がかからない」動作になるのは、二段目の上下のどちらかがカットオフして回路図上で斜めに電流が流れるタイミングだけではないでしょうか。
電圧増幅段でカットオフしていたら特性にも音にも悪いですから、sansuiは次段を十分ドライブできるだけのアイドリング電流を流してカットオフさせなかったと思うのですが、どうでしょうか(それなら差動でやっても良い)。
この回路を用いたのは、4出力得られるのがBTLにする上で都合がよかったからだと踏んでいるのですが・・・

はやたかさん

おっしゃる通りです。
サンスイは初段にたっぷり電流を流しており、最終段のパワートランジスタが破壊するまでは全く制限なく電流を流しきれる設計になっています。

差動回路の下側は定電流回路になっていますので、そこで電流の制限はあることはありますが、それよりも先にパワートランジスタが逝ってしまうようです。(実際には過電流検出回路が働いてリレーを切る)

ご想像のとおり、2段目は片側に電流が寄ったところでも、さらに増幅を続けることができるのが特徴ですね。初段の電流の高さと2段目のこの回路のおかげでスルーレートを非常に高くできるというのがダイアモンド差動の最大の狙いです。インサイドスルーレートは600V/usに達していたという話もあります。

ちなみに終段をバランス出力にしていなくてもダイアモンド差動だったモデルがあります。
AU-D907、AU-D907F、AU-D907Gあたりです。その後、発展してバランス出力になっていきます。

http://www.ishinolab.com/modules/doc_serial/audio_history_japan/serial001_015.html
このあたりを読むと面白いかもしれません。

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