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2013年2月27日 (水)

MOS FETのデータシート

Mos1

本日は、MOS FET のデータシートを見ていきましょう。

このMOS FETは、オーディオ向けで割と有名なものです。 シングルのSEPPで80~100Wクラスのパワー段に使うことが出来ます。

今までと同様に、一番上に書いてある特徴を読むと、低周波電力増幅用で高耐圧、高順方向伝達アドミタンス とあります。

JFETにくらべると遥かにgmが高いです。  とは言っても、オーディオアンプではMOS FETを増幅段に使うということはまずしません。 ソースフォロアとして出力段へと使うだけです。 

なぜかと言いますと、また後ほど書きますが、入力容量がバイポーラトランジスタに比べて非常に大きく、周波数特性を伸ばすことが出来ないからです。

 
よく MOS FETはトランジスタと比べて高速動作と言われますが、実際には微妙なところです。低速トランジスタよりは高速ですが、高速トランジスタと比較すると同等か少し遅いくらいです。

駆動回路が同じで、リニア動作させるなら一般にバイポーラの方が周波数特性は良くなります。

後述しますが、スイッチング動作させるときはMOSの方が有利になります。
 
 
さてさて、最大定格では、特に注目するような点はありません。 
電気的特性を見ていきましょう。
 
Mos2
 
 
ここで、重要な項目が出てきました。 入力容量cissです。 この2SK1529はMOSの中では入力容量が少なく、ドライブしやすいFETです。 近年の大電流MOSは、このcissが1500pFを超えることは珍しくありません。
 
同じ10Aクラスのバイポーラトランジスタの入力容量=Cob+Cibは、おおよそ200~400pF程度ですから、如何にMOS FETの入力容量が大きいかお分かりいただけるかと思います。
 
 
  では、なぜ入力容量が大きいと良くないのでしょうか。 
 

1.前段(ドライバ段)からみると最終段の入力容量はC負荷ほからなず、発振しやすくなる。 
2.大容量キャパシタをチャージしないとゲートへ電圧を伝達できないため動作が遅くなる。
3.キャパシタへのチャージ電流はピーク電流が大きい。 つまり ドライバ段の負荷が重い。
 
 
という理由があげられます。 発振を防ぎチャージ電流を低減するためにゲート抵抗を220~1kΩ程度入れることは良くあるのですが、そうすることで動作は更に遅くなります。
 
例えば、1kΩと700pFで形成されるフィルタのカットオフ周波数は、約230kHzとなります。
 
何の工夫もなくアンプを組んだ場合でも500k~1.5MHzくらいの周波数特性を得られるディスクリートアンプにおいて、この周波数は非常に低いと言わざるを得ません。
ゲート抵抗とゲート容量で形成されるポールは、深いNFBをかけようとするとき、無視できないほどの位相遅れを生じさせます。
 
ちなみにバイポーラTRでの発振止めベース抵抗はせいぜい2.2~10Ω程度。 
入力容量を400pFとしても、カットオフ周波数は約40MHzとなります。 
 
 
最後に、電気的特性の欄外に書いていますが、MOSは静電気に弱いため、取り扱いに
注意が必要です。 
 
 

ここからは、データシートに書いていない豆知識です。 MOS FETが高速と謳うのは嘘かというと、そうではありません。
  
オーディオアンプでソースフォロアで使用する場合には、一切、高速性を活かせないのですが、スイッチング電源や、モータードライブ(PWM)では、バイポーラに無いスイッチング特性の
メリットがあります。 
 
一般のバイポーラTRは、キャリアの蓄積といって、駆動電流をカットしても、即座にコレクタ電流が止まらず、少しの時間電流が流れ続けてしまう現象があります。
 
ところが、MOS FETには、このキャリアの蓄積が構造上存在しないため、ゲートへの電圧が無くなるのと同時にドレイン電流が止まります(※)。  そのため、スイッチングロスが少なく、高速スイッチングが可能です。 スイッチング電源ではこのメリットがとても役に立ちます。
 
 
そういう観点とは別に、音質が良いとされていますので、近いうちにバイポーラTRとMOS FETのリニアリティ比較(データシート上)でもしてみましょう。
 

 
また、MOS FETは入力インピーダンスが高くドライブしやすいというのは、直流のときの話で、オーディオ信号のように交流をあつかう場合や、スイッチング電源のように高速にon/offを繰返す場合には、入力容量を高速にチャージ、ディスチャージするドライブ能力が必要になります。バイポーラTRはVbe=0.6V以上でONできますが、MOS FETはVgsを6~10V程度かけないとON抵抗を低く出来ないので、駆動電圧も高くする必要があります。
 
 
 
 
 
(※)実際には、しきい電圧とゲートチャージ分だけ動作は遅れます。
 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

こんにちは

あまり自信はないのですが2点指摘させてください。

ソースフォロワではCgsは1/1+gmRLになるので
ここのカットオフ周波数はもうちょっとましになると思います。

バイポーラパワートランジスタのCbeは数百nFではありませんか?
すごくおおざっぱにだと
Cbe+Cbc=gm/(2 Pi rπ Ft)ですよね?

hen さん こんばんは。

なかなか鋭い質問ですね。
実は、上記の計算は、あくまでも入力容量とゲート抵抗・ベース抵抗のCRの時定数の計算です。

バイポーラTRのCibはなかなかデータシートに載っていないのですが、Vce電圧依存性があるのと、
一般にCobの3倍~5倍程度の値を示すことが多いです。 

面白いのは、MOSのcissは電圧が高い(100V程度)ときの値を記載することが多く、
バイポーラは電圧が低い(10V程度)ときの数値を記載することが多いです。 どちらも電圧が高い方
が入力容量は少なくなります。

おおよそ同じ程度の電流を流せるMOSとバイポーラなら、入力容量は1.5倍から2倍程度容量が違いますが、
まだ許せる範囲かもしれません。  ところが、発振止めとして入れるゲート抵抗とベース抵抗の
差は、10倍~50倍の差があり、こちらがCR時定数の決定的な差になってきます。

MOSを使ってもゲート抵抗2.2Ωや4.7Ωで発振させずに使えれば、ほぼ同等の速度で回路を組むこと
ができるのかもしれません。 

以前に書いておられたエミッタフォロワの発振のしくみのとおり
MOSはCgsが大きい分ゲート抵抗を大きくしないと発振しやすいということなのでしょうか?

やっぱりお勉強は難しい・・・
ので今度アンプを組むときは黒田徹さんの作例をコピーしようと思っています。

hen さん こんにちは。

MOS FETの発振しやすさは、ざっと3通り考えられます。

1.ドライバ段へC負荷が大きくなり発振しやすい(前段が発振)
2.MOS FETは入力インピーダンスが高く、ゲートまでの配線LとCissで純粋なLC共振回路を形成しやすい
3.大きなゲート抵抗をいれると、今度はCissとゲート抵抗で位相遅れが生じ、NFBをかけたときに位相余裕が足りなくなる
 
1ペア数千円で買ってきたMOS FETが次々と発振して破壊。。。 結構しょげますよ。
 
作例があるのでしたら、そこから大きく値を変えない方がよいと思います。 

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