BTL バランス駆動の利点
電源電圧が同じ場合、パワーが沢山(理論上4倍)取れるというのは以前に書いた通りですが、スルーレートも大きく向上し、その値は2倍になります。 速度の遅いアンプを並のアンプに仕立て上げるにはうってつけです。 もともと速度の速いアンプにとっては無駄なスペックUPにすぎません。
バランス転送としては、コモンモードノイズの影響が少ないというのは挙げられますが、パワーアンプやヘッドホンアンプの出力では、そもそもそんなにノイズが影響するほどインピーダンスが高かったり、ケーブルが長いということは考えられないのでメリットとしてあげるほどではありません。
(※物理現象としてインピーダンスが高いとノイズが乗りやすい特性があります)
ヘッドホンやスピーカケーブルを100mとか引くなら、何か別の案を考えたほうが良いでしょう。
学校やビルなどの構内放送スピーカでは、トランスを介して配線を引いています。
そうすることで、数kmに及ぶ配線長と、数百個もの並列駆動をすることができます。
そうすることで、数kmに及ぶ配線長と、数百個もの並列駆動をすることができます。
つぎに、GNDに大電流が流れないというのは大きなメリットのひとつです。
GND配線がおかしいときにはBTLで大きく音質が向上すると思われます。 正しくGND(と電源)が配線されていれば、さほど違いはないハズですが、やはり、大電流と微小信号が同居するアンプではメリットになる傾向が強いと思います。
GND配線がおかしいときにはBTLで大きく音質が向上すると思われます。 正しくGND(と電源)が配線されていれば、さほど違いはないハズですが、やはり、大電流と微小信号が同居するアンプではメリットになる傾向が強いと思います。
そして、電源ノイズの漏れが+-出力に均等に出てきてキャンセルされるので原理的にPSRR(電源電圧除去比)は大きくなります。
車載向けなどの片電源のアンプでは最大限メリットを享受できると思います。
ただし、そういう電源からのノイズは減りますが、増幅部から発生するホワイトノイズなどは2つのアンプ分が加算されるので電圧にして1.4倍、電力にして2.8倍大きくなります。
BTLアンプの多くはノイズが減ると記載していますが、ここは注意が必要です。
ただし、そういう電源からのノイズは減りますが、増幅部から発生するホワイトノイズなどは2つのアンプ分が加算されるので電圧にして1.4倍、電力にして2.8倍大きくなります。
BTLアンプの多くはノイズが減ると記載していますが、ここは注意が必要です。
電源由来のノイズや外来ノイズは減るけど、アンプ自体で発生するノイズは増えるのデス!
歪が増えてしまうというのは、一見わかりにくいかもしれません。 実はBTLは片側のアンプからみて負荷抵抗が半分になります。 8Ωのスピーカーが4Ω。 6Ωのスピーカーが3Ωにと。
したがって出力電流が増えてパワーが沢山でるのですが、出力段の非直線成分がより多くでてきてしまうため歪が増えてしまうのデス!!
BTLを構成するアンプは大きく2パターンありますが、それはまたの機会にしましょう。
商品説明の謳い文句だけをみて良さそうだなって思って、いざ自作すると痛い目にあいます。
追記 =============================
バランス出力にするとS/N比は良くなります。 出力が4倍でノイズが2.8倍ですからその分です。
ただし、最終出力(スピーカやヘッドホン)を4倍で聞く訳ではありません。
ただし、最終出力(スピーカやヘッドホン)を4倍で聞く訳ではありません。
同じ音量で聞く限りノイズが多く聞こえてしまうという仕組みです。
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サンスイ倒産のニュースを聞いて、ダイヤモンド差動回路を思い出してググったらこちらにたどりつきました。はじめまして。
BTLいいですよね。むかし自作派だったころ試してその豊かな低音に惚れてました。おっしゃるメリットのほかに、A級でBTLを構成すると電源を流れる消費電流から楽音成分が消えるというメリットがあったと思います。そうすると電源のインピーダンスが問題にならずに…ヨタ話でした。
失礼しました。
投稿: 今井 | 2014年7月17日 (木) 22時00分
今井さん
おっしゃる通りです。 お詳しいですね。
A級BTLでは、電源がとてつもなく大きな安定性を持っているのと
同じになります。
サンスイは残念でしたね。 数年前に民事再生法の適用というニュース
があったので、その時点で倒産したのかと思っていましたら、まだ完全には
倒産していなかったようです。
1980年代のアンプ技術の高さには驚きます。 もちろんサンスイの回路も素晴らしく
音も独特の艶やかさがあって、本当にいいアンプでした。
投稿: たかじん | 2014年7月17日 (木) 22時38分
お返事ありがとうございました。
サンスイは本当に寂しいという感じです。
ただ当時でさえ、ディスクリートでアンプを作りつづけるというのは、「アンプ屋」の矜持であったかもしれませんが、高校生であった私にとっても危うい道に見えていました。
それでもいまだにたかじんさんのように、その特徴をつかんでくれている人がいることに、当時の設計屋さんたちも感謝しているだろうと思います。
またつれづれにブログを読ませていただきます。
よろしくお願いします。
投稿: 今井 | 2014年7月19日 (土) 08時28分
今井さん
2000年をちょっと過ぎたあたりから、サンスイ自身でオーディオ機器の製造販売をやめてしまって、ブランドネーム売りのような感じだったと思います。
おっしゃる通り、アンプは各社の威信をかけてディスクリートで設計していたように思います。 そして、そういう競争があったからこそ素晴らしい回路が生まれたと思います。
ですが、バブルがはじけたくらいから、回路の名称だけを派手にした余計な回路が色々でてきて、賢明なオーディオFANの方々は、そういうものに辟易していたかもしれませんね。
ダイアモンド差動、Xバランスアンプは、私的には本当に素晴らしい回路だったと思います。
投稿: たかじん | 2014年7月19日 (土) 17時57分