エミッタフォロアは帰還回路?
エミフォロは100%帰還といわれることがありますが、どうなのでしょう。
本日は、その真相に迫れるでしょうか。
これがエミフォロことエミッタフォロア回路です。 エミッタ電圧がベース電圧に追従(フォロー)することから、このように呼ばれています。
まず、直流的に見てみますと、負荷抵抗の「R」が何Ωであっても、ベース電位に対してエミッタ電位は0.6Vほど低い値をとります。
これは、単にPN接合の順方向電圧VfがB-E間に現れているだけ、という風に見えますが、コレクタからの電流がエミッタ抵抗へ掛かっていて、B-E間電圧がPN接合電圧(約0.6V)になるまで強力に帰還がかかる。 100%の帰還がエミッタにかかっているともとれます。
次に交流的に見てみましょう。
入力信号に対して、出力信号はほぼ1倍の出力です。 出力インピーダンスは、非常に大雑把にいうと、入力抵抗の値をhfeで割った値に近い。
こちらの方は、100%帰還と捉えるのは微妙な気配です。 単にインピーダンス変換と呼ぶべきなのではないでしょうか。 エミフォロを通すことでベース側のインピーダンスがhfe分の1と低くなる。 ただそれだけ。
ちょっと面白いのは、コレクタ側に抵抗をいれてもエミッタのインピーダンスは変化しないところです。
少しだけ計算してみましょう。
hfe=150 コレクタ電流 Ic=10mA 入力抵抗 Rs= 1kΩ の場合
1 hfe
Zo = (-------) (Rs + -----) ですから
1 + hfe gm
Zo = 1/151 x(1k + 375 )= 9.1Ω です。
数式的にみてもコレクタ側の抵抗の項がないのですが、本当に影響がないのでしょうか。
試しにシミュレーションで確め算をやってみましょう。
このように負荷に9Ωを入れたり切ったりすると、エミッタ信号は半分になっていて、おおよそ9Ωの出力インピーダンスという事がうかがえます。 いわゆるON/OFF法で出力インピーダンスを計測する手法です。
9Ω抵抗をON/OFFをしているMOSFETのON抵抗は1mΩという非常に小さなものを使用したのでSWの抵抗は無視できると思います。
次に、コレクタに100Ωの抵抗を入れてみたらどうなるでしょうか。 エミッタ側インピーダンスは約9Ωなので、それに対して十分高い値 100Ωです。 さて何か変化があるでしょうか?
殆ど変わりませんね。 コレクタに100Ωが入ってもエミッタの出力インピーダンスは約9Ωのままです。
コレクタ側のインピーダンスに一切影響されないことを現しています。
帰還とは、どこからか、何かが帰ってくることを意味します。 では、帰還量は? 電流で帰還? 電圧で帰還?
エミフォロは 単にインピーダンス変換している とだけ憶えておく。
帰還がかかっている。かかっていない。と議論するより単純でよいのではないでしょうか。
物事の解釈には色々あって、とある本では、3極管のプレートの出力インピーダンスが低いのは内部的に増幅率μを喰っているからだ。 これは一種の内部帰還と考えることも出来る なんて書いてあります。
あながち間違いでもないような気もします。 確かにμが低い球はプレート出力抵抗も低い傾向がありますよね。
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こんにちは
ちょうど以前に質問させていただいた記事で、
興味深く読ませていただきました。
ありがとうございました。
それでもまだよく理解できていないので、
また図書館で本を借りてこようと思います。
最近、隣市の図書館に雑誌のラジオ技術がおいてあることもわかったので、
少しずつ借りて読んでいます。
なんと10年分おいてあるのでうれしい反面大変?です。
投稿: bitstream | 2013年1月17日 (木) 21時57分
bitstream さん お久しぶりです。
ラジオ技術のバックナンバー いいですね。 私も読みたいです。
何か面白いものを見つけましたら、また教えていただけるとうれしいです。
トランジスタの動作を完全な状態で説明するのは、結構難しいものです。
FETと違って、入出力の関係性が切れないので、完全な計算式というのは殆ど無理でしょう。
回路シミュレータも、物理現象の全てを計算している訳ではなく、影響力の大きいものから計算して
いきますし、そもそも部品の情報もモデル化する時点で、簡略化されていますからね。
それでも大体の動作を波形やDC電圧、周波数特性などを検証するには十分と思います。
上の記事で書いたように、エミフォロ時にコレクタへ抵抗を入れても出力インピーダンスは影響を受けない
としていますが、音を聴くと、実は結構違ったりします。 電源デカップリングの種類や容量が
音に現れるのは、この世界ではある意味常識ですが、計算式的には、影響がないことになってしまいます。
その辺りで、「オカルトオーディオ」と「オーディオ回路技術」の境目があやふやになり、
難しい部分でもありますが、考え方によっては面白い部分でもあるのかもしれませんね。
投稿: たかじん | 2013年1月19日 (土) 13時55分