J-FETとバイポーラのゲインの差はいかほど
バイポーラトランジスタに比べてJ-FETはゲインが低いと言われます。
その差は、一体、どのくらいなのでしょうか。
せっかくですから、ちょっと計算してみましょう。
まずは、2SK30ATMから。
ドレイン電流-順方向伝達アドミタンス特性を見ます。
ドレイン電流は、1.6mAくらいで見てみましょう。 すると、順方向伝達アドミタンスは約1.8mSくらいです。
FETのソース接地のゲイン計算は非常に簡単です。 負荷抵抗RL=2kΩだとすると
gain = gm x RL = 1.8m x 2k = 3.6倍
たったこれだけの計算で求めることができました。 簡単ですね。
次に、バイポーラトランジスタの計算をしてみましょう。
式は gain = (rπ/(Rs + rπ))gm x RL で表されます。
ここで gm = 40 x IC = 40 x 1.6m =64 mS
また rπ = hfe/gm = 100/64mS = 1560 ですので、
上の式に代入します。 Rsはとりあえず1kΩとします。
gain = (1560/ (1k+1560)) 64mS x 2k = 50倍
となりました。 ずいぶんとゲインが違うのが分かります。
バイポーラをJ-FETに交換すると、この分だけNFB量が減ってしまうということです。
ちなみにJ-FETの方を2SK170で計算しますと Id=1.6mAのとき gmは 約18mS
gain = gm x RL = 18m x 2k = 36倍
となり、バイポーラの半分以上のゲインが得られることが分かります。
簡単にいいますと、バイポーラトランジスタはとてもゲインが高い。
gmの高いJ-FETを使うと、バイポーラに近いゲインが得られる。 ということです。
注意点としては、高gmのJ-FETは、ciss入力容量がバイポーラの10倍くらいある
ので、高域が伸びないとか、ポールが下がって発振しやすいとか、そういう面も
あるということを忘れずに。
« 初段2SK30ATMで定数の最適化 | トップページ | ハム退治 と DCヘッドホンアンプの完成 »
「ヘッドホンアンプ」カテゴリの記事
- 3.5mm 4極コネクタの怪(2020.09.02)
- ヘッドホンの鳴らしにくさ選手権(2020.08.16)
- 新ヘッドホンアンプHPA-1000用の電源基板について(2020.04.19)
- HPA-1000の歪率を計測(2020.04.12)
- HPA-1000の動作電流と感想(2020.04.09)
「電子回路」カテゴリの記事
- 2023年 生産中のコンプリメンタリで使用可能なパワーMOSFETとドライバ段(2023.03.03)
- バランス入出力のアンプ部を実験してみることに(2023.02.24)
- MUSES03を久しぶりに検索してみたらニセモノが沢山(2023.01.21)
- やっと方針が決まった 完全バランス回路(2023.01.08)
- MUSES05とMUSES03のスペック比較(2022.12.31)
コメント