フルディスクリートヘッドホンアンプのNFB量は
多量NFBと書いてきましたが、世間一般のオペアンプと比べるとかなりNFB量は少ないです。
例えばNJM4558のオープンループゲインは 110dBあり、仕上がり利得を10dBとすると、100dBほど負帰還がかかることになります。
近年の高精度オペアンプであるOPA2134等ではオープンループゲインは120dBと更に10dBほど高いです。
今回のフルディスクリートヘッドホンアンプのオープンループゲインは、初段の抵抗の設定次第で多少変化はありますが、概ね65~75dB程度です。
仕上がりゲインが10dBなので、NFB量は55~65dBほどになります。
また、メーカー製のオーディオアンプのオープンループゲインも、差動2段回路や、3段構成になっているものまであり、少なくとも80~100dBくらいはありましたので、それと比べても今回のヘッドホンアンプは、少し低くめのNFB量であることが分かります。
NFB量とアンプの音質との関係は、とやかく言われることが多いのですが、一言で表現するには難しいところです。
高精度オペアンプなど多量NEB陣営側からすると、NFB量命で特性を攻めてきていますので、低NFB=低精度、低音質 という式が成り立つように表現することが多いです。
実際、DACなどで通常精度オペアンプと高精度オペアンプを交換すると、高精度オペアンプの方が良い音がすることが多いと思います。
いっぽう、non-NFB陣営は、逆起電力がNFB回路を通じて初段へと入り込む結果として、NFBが音質へ悪影響を与えると言っています。
これも一理あるとは思いますが、オーバーオールのNFB無しで、まっとうな特性を得るには、かなりの回路技術が必要となります。
オーディオは趣味の世界ですので、こういった強い思想のもと開発するアンプの個性もありだと思いますが、自作してnon-NFBで良い音をだそうとすると苦労することは間違いありません。
そして、真空管アンプなどのように僅かなNFBを掛けて、程々に特性改善をする低NFB陣営も忘れてはならない存在です。 真空管アンプの場合、出力トランスを介したNFBは、遅延があったり、ダンピングファクタも高く出来ないため、スピーカの逆起電力の影響をもろに受けてしまいます。 ですから、ちょっとした周波数特性の改善を行う程度の軽いNFB量がちょうど良いというのはうなずけます。
今回のヘッドホンアンプは、多量NFB陣営としは底辺のNFB量で、その特性は高精度オペアンプと比べるまでもありません。
個人的には、もう少しNFB量を増やして特性改善したいところではあるのですが、差動1段回路のシンプルさからくる音のストレートさも良いんじゃないかと考ています。
またコレ以上のNFBをかけるには、位相補正で少し高度なテクニックが必要になってくるとか、部品選択がシビアーになってくるなどの側面があります。
昔、フィリップスのアンプでNFB量をセレクターで可変できるものがありました。 とても珍しい機能ですので、音を聴きにいったことがあります。 そのとき感じたのは、NFB量を多くすると少し暗め音色で、NFB量を減らすと明るい音色になったと憶えています。
音源ソースや好みに応じて音色を可変できるというのは、なかなか面白いアイデアです。
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