アンプのGND配線方法ノウハウ (2)
非常に地味で、一見面白みがないGNDのお話しの2日目です。
GND配線を考える上で、理解しやすいのは、配線が全て抵抗体であると考えることだと思います。 そして、信号は一方通行ではなく、流れた電流はGND線を伝って戻ってくると考えます。
ここにプリアンプとパワーアンプの2段のアンプがあります。
プリアンプは、MCヘッドアンプで微小信号を1Vまで増幅するとします。
パワーアンプは1Vを20Vまで増幅するとします。
中間にボリュームが入ります。
電源は簡単に説明するため共通とします。
次の前提条件で考えます。
・信号は、配線を伝って流れる電流である。
・信号は、1本の電線だけでは伝わらない。 必ず流れた分のリターン電流がある。
・アンプは、入力抵抗に流れた電流で発生する電圧で信号を受け取る。
・アンプの出力は、電源から供給された電流を出力する。
・配線には抵抗がある。
・電源は、瞬間的にはアンプ近くのデカップリングコンデンサから供給される。
・シャーシは、外来ノイズを遮断するシールドである。
・シャーシは(コンセントのアース端子へ)接地されていない。
重要なのは、信号の電流は、相手に伝わって、GNDに落ちた時点で消えてなくなるのではなく、かならずGND線や電源線を伝って戻ってくるという点です。
スピーカ出力などは、例えば1Aくらいの電流が流れますが、それはスピーカのボイスコイルに流れたあと蒸発してなくなるのではなく、その1AがそのままGNDまで流れて帰ってきます。 この考え方が基本です。
上の回路図でも、ひとつ大事な要素があります。 電源は必ず、信号の大きな部分から先に配線するというところです。 微小信号側に電源の根元をもってくると、その先につづく大電力アンプが使った電流が流れ込んできて、微小な信号を汚してしまうからです。
さて、いよいよ本題に入ります。
上の前提条件で、プリアンプからパワーアンプへ信号を伝えるための電流を色をつけてみます。 同様にパワーアンプからスピーカへの信号電流も書き込みました。
上の前提条件で、プリアンプからパワーアンプへ信号を伝えるための電流を色をつけてみます。 同様にパワーアンプからスピーカへの信号電流も書き込みました。

瞬間的な電流の流れです。 電源からデカップリングへのチャージ電流は書いていません。
ゆっくりとチャージされると考えてください。
赤い方は、+側の電流供給、 青は、逆で-側へ引き戻すときの電流です。
しつこいですが、電流は、どこかへ消えて蒸発することはありません。
上の図には書き込んでいませんが、NFB抵抗を介しても微小な電流は流れています。 そして、アンプは、+端子と-端子の電圧差がが0となるように動作していますから、ぞれぞれGNDへと繋げた抵抗間のGND線に電流が流れていないのが理想です。
そういう意味では、ここは1点でGNDへ繋げるのが良いです。
(追記・・・ A点、B点 を1点でGNDラインへ繋げるのが理想的)
この抵抗間をGNDへと落とす点は、アンプにとって増幅する中心点(基準点)となります。

これは、やってはいけない典型です。
スピーカ出力の-端子が入力側GNDに繋がってしまうと、プリアンプの中心点もパワーアンプの中心点もスピーカを通って帰ってきた電流が流れて、GND電位が変動するからです。 たとえ入力部のGNDをシャーシに落としてもスピーカのリターン電流が消えることはないのですから、状況はまったく変わりません。
(追記・・・ A点、B点 を1点でGNDラインへ繋げるのが理想的)
この抵抗間をGNDへと落とす点は、アンプにとって増幅する中心点(基準点)となります。

これは、やってはいけない典型です。
スピーカ出力の-端子が入力側GNDに繋がってしまうと、プリアンプの中心点もパワーアンプの中心点もスピーカを通って帰ってきた電流が流れて、GND電位が変動するからです。 たとえ入力部のGNDをシャーシに落としてもスピーカのリターン電流が消えることはないのですから、状況はまったく変わりません。
出力のリターン電流は、上側の図のようにデカップリングの+と-の中点か、デカップリングの容量が小さいときは電源の+と-の中点に戻してあげます。
そうそう、シャーシに落とすポイントを書いていませんでした。
どこが理想でしょうか?
そうそう、シャーシに落とすポイントを書いていませんでした。
どこが理想でしょうか?
じつは、これまでの図ように、ちゃんとGND線と信号の流れが一直線で引かれているとどこをシャーシに落としても構いません。
ボリュームを触るとハムを拾ってしまうような、インピーダンスの高いボリューム回路を使っている場合は、ボリューム部分のGNDをシャーシに落とすことで、ボリュームが拾ってしまう外来ノイズを減らすシールド効果を得ることができます。
ボリュームの抵抗値もあまり高くなくノイズを拾いやすくなければ、電源の+と-の中点をシャーシに落とすのをお薦めします。 電源の中点はこの回路上、一番インピーダンスが低いので、その点をシャーシに落とすことで、最大のシールド効果を得ることが期待できるからです。
そういえば、10年ちょっと前、とあるメーカの中級クラスアンプ(10万円程度のもの)でスピーカターミナルの-端子が、そのままリアパネルに落ちていたのを見たことがあります。
音はと言いますと、それはもう、ものすごく厚いベールのかぶった音でした。
そういうことをすると、どこからスピーカ電流がまわりまわって影響するか、想像もできません。
静特性である周波数特性や歪み率に影響せず、音質へは影響があるGND配線の不思議さは、メーカのエンジニアでもなかなか理解しにくいものかもしれません。
また、真空管アンプのように電圧が高く、電流の小さい信号を長年扱ってきた熟年層の方々は、あまり気にしていない人が多いようです。 電流が少なければ影響が少ないのも事実ですから、それで問題ないのでしょう。
しかしながら、信号ラインとGNDラインを対にして配線することで、音楽の表現力に違いがでます。
特に、人間の耳が敏感なボーカルもので比較するとよく判ります。
左右でGND線を共通にするほうが良いのか、独立させる方が良いのか、そこは
難しい部分かと思います。
私は、スピーカのようにGNDリターンが独立していて、更に電源も左右独立しているので
あれば、アンプ部のGNDも独立させる方が良い。 その他、ヘッドホンのようにGND配線が共通な場合や、電源が左右で共通な場合は、アンプのGNDは1本で引く方が良いと考えています。 いかがでしょうか。
※)ミキサーやAVアンプのように複雑に絡み合うようなルートの
信号がアンプ内を縦横無尽に走っている場合は、田んぼのあぜ
道のように、あちこちでGND配線を橋渡しした方が良い結果が
得られることが多いです。 更にデジタルも絡んでくると、シャーシ
へは1点アースが最良とはなりません。 静電気対策、不要輻射
などもあるので、沢山のポイントでシャーシのシールド効果を
必要とするからです。
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