Zobelフィルタの謎
アンプの出力についているCR直列回路。
俗にZobelフィルタと呼ばれていますが、これは一体何のためについているのでしょう。
Webで調べると諸説出てきて、どれが本当なのかわかりにくいです。
ここで、ちゃんとした役割を説明してみようと思います。
こちらはM社のアンプ。
こちらはS社。
M社
0.1u + 0.1u と 4.7Ω ですから、1 / (0.05u x 4.7 x 2 x pi)= 670kHz
S社
0.022u と 8.2Ω ですから、1 / (0.022u x 8.2 x 2 x pi)= 880kHz
O社
22Ω//22Ωと0.047u ですから、1 / (0.047u x 11 x 2 x pi)= 310kHz
T社
0.068u + 0.068uと10Ω ですから、1 / (0.034u x 10 x 2 x pi)= 470kHz
と、どこのメーカーのアンプもカットオフ周波数は数百kHzになっているのがわかります。
ちなみに、コンデンサを直列に2つ接続しているのは耐圧を稼いでいるためと思います。
こうすることで安価な50V耐圧品を使用することができます。
また最終段のトランジスタのfTが高い場合はコイルの手前に入れないと効果がありません。
このフィルタにどういう意味があるのかといいますと、超高域(数MHz)発振や超高域ピークを防ぐ効果があるのです。
こまかい原理はさておき、SEPP(シングル・エンド・プッシュ・プル)回路では、超高域で発振する要素があり、このCR回路が超高域に対して負荷を与え安定させる役目をするのです。
この単純なCR直列回路は、多方面で使用され名称が違っていたりします。 例えばDCモータや、スイッチなどの切り替えノイズを吸収するときには「スナバ回路」 と呼ばれます。
Dクラスアンプの出力段に入れる回路はこのスナバ回路の役目でしょう。
また、スピーカーのインピーダンス補正として、スピーカ内のネットワーク回路に内蔵される事もあります。 その場合は、高域でインピーダンスが上がっていくのを防ぐようにCR直列回路を入れますので、そのカットオフ周波数は数kHzから10数kHz程度の周波数です。
違いがお解かりいただけましたでしょうか?
アナログアンプの出力段にCR直列回路は、発振止めの役目。
カットオフ周波数は300kHz~1000kHzという超高域になっています。
スピーカの高域インピーダンス補正のカットオフ周波数は1kHz~20kHz
スピーカに依存するのでスピーカに内蔵されるのが特徴。 高級なスピーカにしか内蔵されていないのが現状。
Dクラスアンプのノイズ吸収スナバ回路のカットオフ周波数は少なくとも20kHz以上ですが、アンプのスイッチング周波数に依存します。 1MHz以上に設定していることもあります。
場合によっては、スピーカの高域インピーダンス補正として入れてあることもありますが、繋がるスピーカにより特性が違うため、完全な形にはなりません。
どれも同じCR直列回路で、アンプの出力段に挿入されることから、区別がつきにくいですが、こういった知識があれば迷うことはないですね。
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