入力バイアス電流
ディスクリートアンプでもオペアンプでも同じですが、入力端子には僅かな電流がながれます。
それを入力バイアス電流といいます。 バイポーラ入力の場合は、ベース電流であることがすぐにわかると思います。
NJM4558Dの等価回路です。 いきなりこの回路では少し難しいかもしれませんが入力部だけを見ます。
±のINPUTは差動回路で構成され、PNPトランジスタが使われているのがわかると思います。 この場合、入力バイアス電流は入力端子から吐き出す側へと流れます。
オペアンプの種類によってPNPだったりNPNだったりしますので、そこだけは把握する必要があります。
話をNJM4558Dに戻して、入力端子に10kΩがついていたとすると、データシートより、typ. 25nAのバイアス電流が 10kΩに流れるので
V = I x R = 25nA x 10kΩ = 0.25mV となります。
※) typ. とは、標準の値という意味です。
こんな反転回路の場合、+入力端子はそのままGNDですから、0V。
-入力端子は、その端子からのバイアス電流がR1に流れ、電流が流れるとそこに電圧を発生させてしまいます。 さらに出力端子にはゲイン倍されたオフセット電圧が現れることになります。
0.25mV x 10倍 = 2.5mV ※ 実際にはR2からの電流も流れこむのでもっと大きな値になります。
ただし、このバイアス電流、回路をみてお分かりの通り初段のベース電流です。 そしてベース電流はhFEに依存し、hFEは製造上のバラつきが大きいことで有名です。
すなわち、オフセット電圧は計算してもおおまかな値しか出てこない。 ということになります。 NJM4558Dのデータシートでもtyp. 25nA max 500nAです。
minに関しては空欄となっていて記載すらありません。
例えば、maxの500nAで計算すると、
5mV x 10倍 = 50mV という値になってしまいます。
つまり細かい計算は無意味なことを意味しています。
ただ、オペアンプの様に同一サブストレート上で近くに配置されたTR同士の特性は良く似ていることから、+入力端子と-入力端子ではさほどバイアス電流に違いはありません。
ということで、+入力端子と-入力端子からみた抵抗値を揃えておくことで、出力オフセット電圧を最小限に抑えることが可能です。
入力バイアス電流が極端に小さいFET入力ですと、バイアス電流は数pAオーダーとなりますので、+入力端子と-入力端子からみた抵抗値が違っていても出力にオフセットは僅かしか出てこないという特徴があります。
ちなみにDCドリフトといって、動作中の温度によって出力オフセットが上がったり下がったりもしますし、入力オフセット電圧という、もともとオペアンプが持つオフセット電圧もあります。
出力にオフセット出さないようにするには、回路の工夫もさることながらオペアンプ自体の選定を慎重に行わなければなりません。
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