スルーレートとは
詳しくはwikipediaでも読んで頂くとして、スルーレートにまつわるエトセトラでも書こうと思います。
スルーレートに注目が集まったのは、差動アンプに鋭い立ち上がり信号が入力された時に初段の差動回路の電流が片側だけになって、増幅回路として動作しなくなる瞬間がある。
それが、音質悪化へ非常に大きく影響する。 と フィンランドのオーディオ研究者マッティ・オタラ氏が1970年代に発表して業界で話題になったことが発端らしいです。
このひずみをトランジェント・インターモジュレーション・ディストーション(TIM歪)といいます。
結局、差動回路の片側電流集中を避ける(=TIM歪を小さくする)ためには、スルーレートが高い必要があるということで、その後、高スルーレートアンプが開花していくことになりました。

スルーレートに制限された音声信号よりも、帯域制限を受けた信号の方が音の劣化が少ないとされ、真空管のアウトプットトランスで帯域制限されている方がTRアンプより音が良いんじゃないかって話につながったようです。 TRアンプもSR制限の前に入力フィルタで高域をカットしてしまった方が音質的に優れると言われています。 とはいいつつ、SACD程度のソースが持つ帯域では、普通に組んだアンプの方が遥かに高速なので、体感して確かめるのは困難かもしれません。
実際、A1015/C1815フルディスクリートHPAもアンプ自体の帯域は600~1000kHz程度はあって、それじゃあAM放送などの電波まで増幅しちゃうので入力フィルタで100kHzくらいに制限するようなことをしています。
正弦波の周波数(f)、振幅(Vp)とスルーレートの間には以下の関係があります。
正弦波 : v(t)= Vp・sin(2πft)
微 分 : dv(t)/dt = 2πf・Vp・cos(2πft)
最大変化率 : dv(t)/dt max = 2π・f・Vp
このfをMHzにするとスルーレート[V/usec]に対応する数値になります。
ようするに正弦波(sin波)の最大傾斜を計算で求めているだけで、sin(x)の微分はcos(x)とい公式が分かっていれば表現できることです。
とか言いつつ、私も何十年ぶりに微分を計算してみました。 エクセルでですが・・・

接線の角度が高い部分というのは t = 0ですから、上の最大変化率という式でcosの項目が消えているのは間違いではありません。
周波数が高く、出力の振幅が大きいと高いスルーレートが必要になってきます。
さてさて、ヘッドホンアンプに必要なスルーレートはいかほどでしょうか。
ちょっと長くなってきたので本題は明日。
« ACアンプのNFB回路 | トップページ | ヘッドホンアンプに必要なスルーレート »
「電子回路」カテゴリの記事
- 2023年 生産中のコンプリメンタリで使用可能なパワーMOSFETとドライバ段(2023.03.03)
- バランス入出力のアンプ部を実験してみることに(2023.02.24)
- MUSES03を久しぶりに検索してみたらニセモノが沢山(2023.01.21)
- やっと方針が決まった 完全バランス回路(2023.01.08)
- MUSES05とMUSES03のスペック比較(2022.12.31)
コメント