クロスオーバー歪みとは
以前に紹介したアンプのスイッチングノイズの説明、ちょっと間違っていました。
この写真の波形は、明らかにスイッチングノイズ(スイッチング歪み)が含まれています。
スイッチングノイズとクロスオーバー歪みの違いは、黒田徹さんの「基礎トランジスタ・アンプ設計法」にちゃんと書いてありました。
すっかり忘れていましたので、ここでもう一度書いておこうと思います。
■クロスオーバー歪み
プッシュプル回路で、上下の素子の伝達特性が不適当な形をしているために発生する歪み。
周波数に関係なく発生する。
■スイッチング歪み
プッシュプル回路の上、または下の素子の電流が止る瞬間、素子の応答がスイッチングに
際して遅れるために発生するノイズ。
高い周波数で発生しやすい。 または増える。 高周波特性の良いTRでは発生が少ない。
パワーMOS FETだと、伝達特性が2乗特性のため原理的にクロスオーバー歪は生じない。 また、キャリアの蓄積もないためスイッチング歪みも発生しない。 という特徴があります。
ただ、2乗特性にさせるには大量の電流を流しておかなければならなく、A級アンプに近いAB級にしておく必要があります。 そこまで電流を流すならバイポーラでもクロスオーバー歪みやスイッチング歪みは非常に少ないので、違いはB級領域へ出た瞬間のみとなります。
そして、MOS FETはVGS電圧がバイポーラのVBEより高く必要ですから、電圧ロスが大きくなってしまい、余計に発熱が多くなってしまいます。
まあ、これといって結論はございません。
nonNFBや最終段nonNFBアンプでは、きちんとした設計が必要なのはご想像の通りです。
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公開情報,参考にさせて頂いております。
クロスオーバー歪について質問させて頂きます。
『パワーMOS FETだと、伝達特性が2乗特性のため原理的にクロスオーバー歪は生じない。』の理由を知りたいのですが,
MOSFETですとゲート閾値電圧も大きいですし,加えて2乗特性だとむしろ歪が大きくなると想像できるのですが,歪が生じないという理屈をご説明いただけますでしょうか。
以上,よろしくお願い致します。
投稿: speedman | 2014年3月12日 (水) 10時51分
speedmanさん
バイポーラだと伝達特性は指数関数です。 FETは2乗。 どちらが急峻かというと指数です。 そしてFETの2乗特性は、NチャネルもPチャネルも非常にきれいなカーブをしているのでSEPPでは滑らかにつながります。 またgmのつながりもバイポーラに比べてつながりが良いという特徴もあります。
閾値は、バイアス電圧設定次第です。 バイアス電圧が足りないとアイドリング電流がなくなって、FETでもバイポーラでもB級やC級動作となり、クロスオーバー歪が出ます。 これは種別の違いを比較する以前の話ですね。
同じアイドリング電流で、バイポーラとFET、どちらが歪が少ないかというと、恐らく殆どの場合バイポーラが有利になります。 理由はFETのgmの小ささ。と ゲート入力容量の大きさにより、アンプの高域ゲインを食ってしまうために高域歪が増える傾向があるからです。
つまり、クロスオーバー歪み、スイッチングノイズはFET有利ですが、全体的にはバイポーラ有利となります。
投稿: たかじん | 2014年3月12日 (水) 21時47分