DCアンプである意味とは(2)
前回は、直流や極低音(10~30Hz以下)が与える悪さを説明しました。 結局、DCや極低音を増幅しない方が良いとの結果となりました。
では、どうしてDCアンプが良いとされるのでしょう。
2つ理由があると考えます。
ひとつは単純です。 DCカットのコンデンサが音質へ影響するから。
もうひとつは、位相の回転の影響です。
位相の回転は、周波数応答と密接な関係があり、カップリングコンデンサ1発という単純な1次フィルタの場合、約10倍の周波数から位相がずれ始めます。 カットオフ周波数が30Hzのフィルタなら300Hzくらいから影響が出始める。
位相が回転すると波形が変形し、その波形変形は、人が聞き分けられる変化と言われています。
そう考えると、ベース音やバスドラムなど40~50Hz程度の音を波形変形から守ろうとするとカットオフ周波数は4Hz以下にする必要があります。 ヘッドホンでは30Hzくらいでも聞こえる可能性があるので、多少の余裕を見て1~2Hz以下のカットオフ周波数にします。
カップリングコンデンサの影響は、良い部品を選択するか、取り去る以外方法はありません。 そうして究極の選択としてDCアンプが登場するわけです。
このDCアンプ化と、昨日説明した極低音の影響で歪の増加する現象は相反することですが、唯一、解決する方法があります。
察しの良い方は、すでにお気づきかもしれませんね。
そう、大出力時のアンプの歪を低く保つことです。
・出力が増えると歪が増えていくようなアンプの場合は、低音をある程度カットした方が心地よく聞ける。
・DCアンプ化するには、大出力時にも歪が増えない特性の方が望ましい。
そしてDCアンプは、低域の位相回転が一切無く、カップリングコンデンサの影響もない究極のアンプ形式であると。 そう思います。 ちなみにデジタル機器では、殆ど必ずといって良いほどDACの後にDCカットのカップリングコンデンサが入っていますから、位相回転は原理的にゼロにはなりませんが、そもそも録音された音源にもDCは含まれていないので、超低域でカットオフしても特に問題はありません。
そんな訳で、DCアンプだから音が良い、ACアンプだから音が悪いとはなりません。
メーカー製のアンプは僅かなDC漏れをも嫌ってDCを一切カットしないDCアンプは殆ど作らなくなりました。
消費者側もDC漏れに対して厳しくなったことも要因のひとつかと思います。少し残念です。
結論: DCアンプの意味は殆どない。 作ったひとのみが愉しめる自己満足の世界。 リスクを知って作るべし。
ちなみに、DCアンプのリスクとは、「DC漏れ」「DCドリフト」です。 たくさん漏れるとスピーカのコーン紙がセンターからズレたところで音がなるために、スピーカでの歪が増えてしまいます。
また、ON/OFF時のポップノイズが大きくなります。 では、どこまで許されるのかというと、色々異論はあるかもしれませんが、個人的にはスピーカ用アンプなら±100mV程度、ヘッドホンアンプなら±10mVかと考えています。
アンプ故障時のことも考えて大きなDC漏れ時はリレーで出力をカットする保護回路は必須でしょう。
ただし、リレーの接点不良は、早いと2~3年で訪れます・・・
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