DCアンプである意味とは
読んで字のごとくDCアンプとは直流から増幅するアンプのことです。
ただ、音楽ソースはレコード、CD、DVD、SACD、BS/CS放送、iPodなど、手に入れられるものには直流(DC)は含まれていません。 厳密にはデジタルソースでは直流も記録することは可能ですが、録音する時点で直流は有害なためカットされます。
では、アンプもDCアンプにする意味はないのでは? その疑問はある意味
正しい と思います
小出力アンプの場合、低い周波数まで増幅すると聴感上のダイナミックレンジが多く取れないという問題もあり、わざと低い周波数をカットして、歪みにくくするような手法を取ることが多いです。
じつは、30Hz以下などの通常のスピーカでも再生が困難な低音というのは、振幅電圧を食うだけで音として音波として出力させることが出来ないことが多いのです。
そんな電圧をも増幅していると、音として発生できる帯域の信号を歪ませる原因となります。
その原理は、こうです。
出力に余裕のないアンプや、出力が増えると歪が増えていくようなアンプの場合。
例えば帰還量の少ない真空管アンプや、2~5W程度の小出力アンプがそれに相当します。
ここでは10W(10%歪)のアンプがあったとします。
女性ボーカルが単独で静かに歌っている。 と仮定します。 その出力は0.02~0.03W。 赤丸の部分です。
そこにバックでベースが「べろーーん」と0.5W相当で弾き始めます。
そうすると、低く大きな振幅に重なって女性ボーカルの波形が乗ってきますので、
青丸の部分でスピーカを駆動することになります。
歪率はどちらも0.2%前後で変わらないように見えますが、実はちがっているのです。
実態は、こんな感じです。 歪率カーブで右肩下がりの部分(グラフの0.1W以下の部分)というのは、ノイズが主成分で本来の歪がマスクされて見えていない部分です。 このグラフの点線部分は、あくまでも推測の範疇ではありますが、ノイズを除いたときの歪カーブを表しています。
このグラフの歪カーブのアンプだと赤丸から青丸へと振幅が増えると一桁近く歪が増えているのが判ります。 つまり女性ボーカルの声は、ベース音にが重なってくることによって歪が増えるという現象が発生するのです。
ベース音は普通に聞こえる音ですので、カットしてしまう訳にはいきませんが、もっと低く聞こえもしない音(信号)はカットすることで、可聴帯域の音(ここでは女性ボーカル)は歪が少ないところで鳴らすことができるようになる。
そういうことです。
レコードのサブソニックフィルターがまさにその為の機能です。
極低音は百害あって一利なし。
では、DCアンプの意味は・・・
途中の説明が予想より長くなってしまったので、つづきは明日にします。
※)広義ではゲインが直流まであるアンプもDCアンプと呼ぶことがあります。
つまり入力カップリングコンデンサでDC切りしてあっても、
non-NFBアンプやNFBで DC成分を100%帰還にしていないものも
DCアンプといえます。
ただし、出力でDC切りするとDCアンプとは呼びません。
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