出力段の調整
ここまでは初段のチューニングを中心に行なってきました。
わりと良くまとまった感があるので、これで完成にしようとも思いましたが出力段の抵抗の調整などを説明していませんでしたので少し書こうと思います。
インバーテッドダーリントンのゲインを決めている最終段ベース-エミッタ間の抵抗値ですが、この抵抗でどれだけ電流をブーストするかが決定されます。 ただ、許容コレクタ損失の関係からA1015/C1815はあまり電流が流せないので、ぎりぎりの電流にせざるを得ません。
そういう条件でドライバ段と最終段の電流バランスから33Ω程度となりました。
この抵抗値でアイドリング電流はドライバ段が約7mAx3、終段が約12mAとなっています。
これ以上、終段電流をあげることができません。 が、下げることは可能です。
ざっくりと実験のために0Ωにしてみました。
これは、終段TRによる電流ブーストがないことを意味していて、エミフォロ1段の3パラ回路と同じです。
音質はといいますと、予想通りドライブ能力にかけるダラーンと、低域の解像度が足りないトーンですが、なぜか悪くはない印象です。 まあ、この音質の変化はインバーテッドダーリントンがちゃんと仕事をしていたという証でもあります。
次に33Ωに33Ωをパラって約16Ωにして聴いてみました。
ちゃんとリニアに効果がでているんですね。 0Ωと33Ωの中間的な音質です。
もとの33Ωに戻して、もう一度聴いてみます。
なんだか、0Ωの時のゆったりサウンドの方にも良い部分もあって、微妙な気分になってきました。
インバーテッドの局部帰還で見かけ上、低インピーダンス出力にして、さらにリニアリティもアップしているので、歪み感がなくストレートで低域の解像度は増します。 ただ、わずかに高域に独特のクセというか引っかかるようなものが出てくるのです。
念のため、もう一度オシロで波形を確認してみましたが寄生発振などは起きていません。
速度の違う帰還が2重にループしているので、なにかお互いに影響しあって悪さをしているのかもしれません。
多重ループの帰還は、DCサーボ回路など、帯域が全く異なるときには問題が起きませんが、今回のように両方ともわりと高速な帰還回路で2重になっているとお互いに干渉する可能性はあります。
いまひとつ原因が不明ですが、これは、まだ実験を続行しなければならないことを意味しています。
ちなみにユニバーサル基板はだんだんボロボロになってきています(笑
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すこし考えてみましたが
確かにインバーテッドダーリントン出力段は補償やら周波数特性がどうなるかやら難しそうですね
後段BC間には補償Cが必要かもしれませんね
投稿: bitstream | 2012年9月 8日 (土) 23時17分
bitstream さん こんばんは
インバーテッド回路を使った近年のアンプは、終段non-NFBタイプが多いように思います。
つまりインバーテッドダーリントンをメインNFBループの中に入れていないんですね。
そのあたりが、何かヒントになっているようにも思います。
後段のB-C間にコンデンサを入れて高域を落とすと、オーバーオールNFBの2ndポール(恐らく
1~5MHz)と重なってしまい、位相の回転が早くなってきて更に厄介になることが予想されます。
上では高域と書きましたが正確には可聴帯域のトップエンドではなく、もうちょっと下の数kHzあたり、
女性ボーカルの高音あたりに妙な引っかかりが感じるんです。 「さ行」などの子音で10kHzくらいまで
行くとそれほど気になるわけではないのが不思議です。
本文の方には書きませんでしたが、どうやら通常のエミフォロに比べるとノイズの発生も多いようで、
ここが原因でS/N比が上げられない様子でもあります。
まだまだ私も修行がたりないようで、 インバーテッドって難しいです。
投稿: たかじん | 2012年9月 8日 (土) 23時45分
こんばんは
グローバルループの2ndポールの問題に関してですが
インバーテッドダーリントンを2段アンプと見ると
セオリーどおり2段目BC間で補償しても、2段目コレクタが出力ですから
スピーカー端子にCがあるとコレクタ側のポールが下がってきそうですね。
安定性をきっちりとるとインバーテッドダーリントン出力段としての周波数特性はさらに悪くなるので
これではたしかにループに入れるのは難しそうです。
じゃあエミッタフォロワを設けよう…ってこれでは泥縄というか本末転倒ですね。
投稿: bitstream | 2012年9月 9日 (日) 22時07分
こんばんは。
そうですね。 2段目に位相補償を入れることが多いのは、そこが最大の増幅度をもつためで、
ミラー効果が大きく取れるからです。 ついでにVce電圧依存性が大きくクセのある歪みを発生させる
原因ともなるCobの影響を小さくする目的もあります。
例えばCobが2pFから5pFまで動いてその都度、利得帯域幅が変化するより、位相補償で33pFを
加えて35pFから38pFの帯域変化で収まる方がよいとされています。
インバーテッドの後段にエミフォロを入れているのは今のONKYO方式ですね。 それはそれで
良いんじゃないでしょうか。 今回はこれ以上複雑になるのは避けたいと思っていますので採用は
難しいですが。
いづれにしても、HPAではトータルのゲインが低いため、どうしてもオーバーオールの帰還量が
多くなって安定性が取りにくいのは確かです。 仕上がりゲインが26dBとかあるパワーアンプなら
もう少し対処のしようがあるのかもしれません。
投稿: たかじん | 2012年9月 9日 (日) 22時36分