トランジスタの熱結合
初段のトランジスタは熱結合した方が良いのか、しなくても良いのか。
写真のトランジスタは東芝のJFETの2SJ75というものですが、中身は2SJ74の特性の揃ったものをアルミのケースに押し込んだだけのものです。
同一サブストレート上で熱結合されている2SK389のようなものよりは、熱伝達に遅延が発生しますがゆっくりした時間でみると一応は熱が伝わりますので効果はちゃんとあります。
こういった熱結合トランジスタが入手困難な現在は、DCアンプは作れないのかというとそんなことはありません。
1mVもずれないというのは難しいですが、多少のDC漏れを許すのであれば、負荷抵抗を均等にしてトランジスタの動作条件を同じにしてあげるとDCドリフトは僅かです。
ボンドでトランジスタをくっつけるという手段もあります。 それにより多少の熱結合が発生し、よりDC漏れが少なくなります。
上の写真も似たようなものです。 アルミケースでより温度が等しくなるというだけで、2つのトランジスタの動作条件を均等にしてあげないといけないのは一緒です。
このアルミケース、昔、会社に転がっていたな。。。 と懐かしく思います。
ちなみに、今このケース自体は入手はできませんが、キッチン用アルミテープを5mm幅程度に切って、2つのトランジスタの外周をぐるぐると巻くように貼り付けるだけで同等の効果を得ることが出来ます。
銅テープなら更に良い熱結合となるでしょう。
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追記です。
アルミテープ巻き。 5~6周ほどテープを巻きつけます。 この写真は3周程度。
結局のところ、同一サブストレートと同等の熱結合は無理ですが、アルミケース並の熱結合は可能で、トランジスタの動作条件を等しくすることでDCアンプは問題なく動作させることができます。
熱結合しないよりは幾分マシになります。
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こんばんは。
接着剤を硬化させるときはしっかり圧着する事が重要かと思います。
空気が入り込むとそれだけで熱伝導率が極端に落ちるので。
接着剤は熱伝導接着剤を使うとなお良いかもしれませんね。
千石には2剤混合タイプが500円ほどで置かれていたと記憶しております。
14W/m・Kという特性のいいやつもありますが、導電性なのでショートしないように繊細な作業が求められます。
投稿: 名無し | 2012年9月25日 (火) 19時30分
こんばんは
そうですね。 ちょっと説明がたりなかったかもしれません。
今回の記事では初段の差動トランジスタの熱結合についてなのですが、TR内部の金属部(サブストレート)
とその周りの樹脂部では熱伝導率がかなり違っています。 具体的な数値は持ち合わせていないのですが、
wikiによりますと、サブストレート(Si) 168 W/m・K に対してエポキシ樹脂 0.21 W/m・K です。
つまり、デュアルトランジスタのように同一サブストレート上で熱結合されたものと、いちど樹脂を介した
熱結合では根本的に意味がことなっているということも書きたかったのですが、説明がたりませんでした。
ということで、いちど樹脂を介するような熱結合では、デュアルトランジスタと同等にはなり得ないです
から、そこは割り切ってゆったりとした時間の中で同等の環境温度になるという意味でアルミテープで
ぐるぐる巻きにするという風に書きました。 2SJ75もその類です。
樹脂の熱伝導率が悪いのに、その樹脂間だけ高熱伝導の材料を挟んでも内部の金属同士がくっついた
ような状態は作り出せません。
空気が入って熱伝導の妨げになる件は、まったくその通りだと思います。 慎重に接着しなければ
接着した意味がありません。
それにしても、あの水銀のような熱伝導グリス(?)はちょっとヤバイですよね。 あらゆる意味でとんでもない商品だと思います。
ivyBridgeの殻割り記事をみてそう思いました。
投稿: たかじん | 2012年9月25日 (火) 20時41分
そうそう。 書き忘れましたが、トランジスタの印字面だけを接着したのと、アルミテープで外周ぐるっと
巻きつかせたのでは、アルミテープの方が両トランジスタの環境温度が近くなると思います。
アルミの熱伝導率は 236 W/m・K だそうです。
投稿: たかじん | 2012年9月25日 (火) 20時54分