出力段の設計(1)
それでは、今日から出力段の設計に入りましょう。
2SA1015/2SC1815は、小信号タイプのトランジスタですので出力段には向きません。
と、きっぱり言ってしまったものの、どこまで頑張れるかやってみましょう。 ヘッドホンアンプくらいなら、大丈夫な気がしています。
小信号TRはFTが高いので、いろいろ期待できますしね。
まずは、許容コレクタ損失を見てみます。 ご覧のように最大の許容損失は400mWです。 < 周囲温度が125度のときは「0mW」となって、一切消費させることができません。
このグラフをみると100mWあたり25度づつ温度が変わっているのがわかります。 グラフを逆読みすると100mW消費では、周囲温度から25度温度が上昇するということです。 周囲が25度で、100mW消費では、トランジスタの温度が50度になるということが分かります。
トランジスタの温度は故障率の観点から、上限70度くらいにしておきたいです。
ケースにいれると周囲温度は30~35度くらいになることが予想されますので、コレクタ損失は100mW以下に抑えておく必要があります。
電圧が8.9Vで、100mWといいますと、流せる電流は0.1W÷8.9V = 11.2mA となります。
つまり、トランジスタへ流せる上限は10mAとしなければいけません。
30Ωのヘッドホンを50mWまでA級動作させるとすると、アイドリング電流は直流で30mAほど必要です。最低でも3パラになります。
なかなか面白い出力段となりそうな気配がしてきました。ちなみにアイドリング電流が30mAなら60Ωのヘッドホンですと100mWまでA級となります。設計目標としては、まあまあ良い線ではないでしょうか。
トラ技など、一部でヘッドホンアンプの出力段に凝った擬似A級をつかった記事が出ていますが、ここはやっぱり本当のA級で行くべきでしょう。 スピーカーを鳴らすアンプなら熱との兼ね合いがあるので簡単にA級とすることができませんが、低電圧電源でドライブ能力もそれほど必要ないヘッドホンアンプならではの有利な点です。
純A級アンプで行きましょう。
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